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ミステリの祭典

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ジーヴズの事件簿 才気縦横の巻
執事ジーヴズ

作家 P・G・ウッドハウス
出版日2011年05月
平均点5.83点
書評数6人

No.6 6点 クリスティ再読
(2022/09/01 15:41登録)
軽くて面白いものが読みたいよ~という評者の希望をかなえる作品のひとつ。これも「新青年」の人気作家として親しまれてきたけど、戦後は忘れ去られたのが数年前にカシコキあたりで話題に出て今更に再ヒットするとは思ってもいなかった....

本書は、ジーヴス物の2つ目の短編集「比類なきジーヴス」を二分冊した前半プラス、ジーヴスが雇われる経緯を描いた「ジーヴズの初仕事」とジーヴス側から描いた異色作の「バーティ君の変心」を収録した本。追加分は3つめの短編集「それゆけ、ジーヴス」からの収録(だけど最初の短編集「My Man Jeeves」はリライトされて「それゆけ、ジーヴス」に収録されたこともあって重要性がないようだ)

能天気な若さまのバーティ君が陥ったトラブルから、いつの間にやらバーティ君を救い出すジーヴスの活躍を描く連作。でもね、オシャレに凝りすぎて下品になりがちなファッションで、バーティ君は趣味が保守的なジーヴスの気を悪くさせるとかが定番。このジーヴスのツンデレっぷりが読みどころで、バーティ君に冷たくしていても、陰でジーヴスが策謀して「ジーヴスどうしよう?」とバーティ君が泣きつく頃には、もうすでに事件が解決している、という辣腕ぷり。このジーヴスの意外な腹黒さが素敵。

いやこういうの読むと、世間知らずの若さまが良いように執事に操られて..とロージーの「召使」とかクレッシングの「料理人」とか、ダークサイドの執事モノもついつい連想しちゃうあたりがナイス。だから例えばよしながふみの「執事の分際」とかBLの執事モノとも、実のところそうそう遠いセカイでもない。

No.5 7点 斎藤警部
(2018/01/23 12:14登録)
日常の謎でも日常のサスペンスでもなく、日常の問題解決を肴に英国ユーモアの精粋をじんわりと見せ付けるストーリーズ。軽快なる大古典。日常と言っても昔日英国の貴族、ではない有閑階級のそれではあるが、この浮世離れ感もまた心地良からずや。ユーモアミステリとは違うけれど、わざとミステリっぽく言うなら、ハウダニットと思いきやのホワットダニット、ってとこですか。

むかし検索エンジンの名前としても使われた「智識持ちの象徴」である、執事、ではない使用人のジーヴズ。コンピューターが当時より遥かに発展した今なら物語の中の彼の様にむしろ「問題解決能力の象徴」としてある種のAIシステムの名前に適しちゃってたりなんかしちゃったりなんかするのではなかろうか。。

ジーヴズの初仕事/ジーヴズの春/ロヴィルの怪事件/ジーヴズとグロソップ一家/ジーヴズと駆け出し俳優/同志ビンゴ/バーティ君の変心
(文春文庫)  

ビートルズの大ライヴァルにストーンズ、ビーチ・ボーイズ、モータウン一派がいたように、ホームズの大ライヴァルにはルパン、ブラウン神父、そしてジーヴズがいます。

No.4 6点
(2013/08/30 10:01登録)
主人公のバーティ・ウースターに仕える執事・ジーヴズは、安楽椅子探偵ならぬ、影の司令官のような存在だ。バーティにも読者にも見えない彼の策謀によって、お気楽なご主人さまはたすけられる。
バーティの判断ミスや暴走を食い止めるために荒療治もする。バーティはおどらされ、翻弄させられるが、最終的にはジーヴスにたすけられることになる。
といった流れがほとんどで、計7編からなる。かなり古い作品だが、古さはまったく感じられなかった。

『ジーヴズとグロソップ一家』がちょっとドタバタしたところがあり、お笑いの程度が高い。バーティは大失態をしでかしたかにみえるが、じつは・・・。
『バーティ君の変心』は、ジーヴズ視点で、バーティのあわてぶりが楽しめる逸品。

全編、大爆笑とはいかないが、くすぐったいような笑いを誘ってくれる。とぼけたユーモアとでもいうのだろうか。
国内の執事お笑い物の『謎解きはディナーのあとで』よりもミステリー性は低めだが、お笑いの質でいえば、個人的には本作のほうが好み。
そのキャラで物語を盛り上げてくれる、バーティの親友・ビンゴやアガサ伯母も笑いの種としてなくてはならぬ存在だ。

No.3 5点 mini
(2011/11/09 09:56登録)
『ジーヴズ、発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は”ユーモア・ミステリ遊歩、クレイグ・ライス/ウッドハウス/カミ”だ、便乗企画である私的遊歩なんだが、締め括りの第7弾は特集にも名前が載ってるウッドハウスにしようと思うんだ』

『御意、今回のユーモアミステリー便乗企画も暫く続きました故、当サイト閲覧者の方々もそろそろ飽きてこられた頃かと存じます』

『そうだな、この辺でおひらきとしよう、ところで文春文庫から執事ジーヴズシリーズの短篇集が2巻出たようだな』

『これは元々は文春のハードカバー版「ジーヴズの事件簿」を2巻に分けて文庫化したものでして、内容はほぼ同じと存じます』

『そのハードカバー版は過去に”このミス”にもランキングしたんだったな』

『左様でございます、ですから文庫版のも初心者にとって安心して読める内容かと存じます』

『おぉ、それは良かった、なにしろジーヴズを雇い入れる事とあいなった顛末も描かれておるのだったな』

『シリーズ第1作でございますな、初めてこのシリーズに接する読者にも入門としてお薦め出来るものと存じます』

『思うのだがもうちょっと捻って我輩をもう少々だな、賢く描いた異色作も有ると良いのだがな』

『それは無理な注文かと存じます』

No.2 5点 E-BANKER
(2011/08/27 19:50登録)
スーパー執事・ジーブズが活躍する作品集。
サブタイトルは「才智縦横の巻」。
①「ジーブズの初仕事」=スーパー執事・ジーブズの登場。最初から能力全開。
②「ジーブズの春」=主人公・バーティの親友・ビンゴ=リトルが登場。リトルが好きになった女性をめぐって、バーティとジーブズが活躍(?)する。
③「ロヴィルの怪事件」=怪事件というほどではない。バーティが恐れるアガサ叔母をめぐって事件が発生。
④「ジーブズとグロソップ一家」=またまたリトルが妙な女性を好きになって、2人が一肌脱ぐという展開に・・・
⑤「ジーブズと駆け出し俳優」=今回の舞台はロンドンではなく、NY。アガサ叔母からお達しを受け、預かった男性をめぐって事件発生。
⑥「同志ビンゴ」=今回のビンゴ=リトルの行動も意味不明(!) 懲りない奴だねぇ・・・
⑦「バーティ君の変心」=有名人と勘違いされたバーティが、なぜか女学校の教壇に立つハメに・・・
以上7編。
ミステリーというよりは、まぁイギリス版「ユーモア小説集」というべきでしょう。
ただ、正直、舶来のユーモアはよく分からん(!)
読みやすいのが唯一の救いでしょうか。
(ジーブズよりも、ビンゴ=リトルのキャラがかなり面白くて印象に残る・・・)

No.1 6点 kanamori
(2011/08/25 18:20登録)
ちょっとオツムのゆるい御主人が持ち込む厄介事を、機智に富む策略でそつなく解決していく嫌味なほど優秀な執事ジーヴズ。

ミステリの範疇には入らないユーモア連作短編集ですが、各編の絶妙な伏線とどんでん返しはミステリに通じるものがあります。
叔母のアガサや友人のビンゴなど、脇役陣も個性豊かで面白く、古典とは思えないユーモア・センスがある。
最後に収録された「バーティ君の変心」のみジーヴズの一人称で語られており、手の内を垣間見れる異色作。

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