眠れぬイヴのために |
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作家 | ジェフリー・ディーヴァー |
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出版日 | 1996年05月 |
平均点 | 4.80点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 5点 | E-BANKER | |
(2025/01/13 14:09登録) リンカーン・ライム登場前の「初期」ディーヴァー作品。 これまで同シリーズをできるだけ発表順に、丁寧に読み継いできたんだけど、ここで少し時を巻き戻して過去作へ・・・ 1998年の発表。 ~記録的な嵐が近づく夜。精神病院を出た死体運搬車に積まれた死体袋を破って、筋肉隆々の巨漢が這い出た。彼の名は「マイケル・ルーベック」・・・俗にインディアン・リープ事件と呼ばれる凄惨な殺人事件の犯人だった。ルーベックは、裁判で自分に対して不利な証言をした女教師リズに復讐の鉄槌を下すため、脱走を企てたのだが・・・~ なるほど・・・ 他の方のご意見と重なる部分はあるけれど、「ワンパンチ足りない」というのが最もフィットした感想。 「リンカーン・ライム」シリーズのクオリティや、そのジェットコースター=疾走感の強いミステリーに慣れてしまったせいかもしれない。 本作でも、ラストにはサプライズ感のあるドンデン返しが用意されてはいる。 ただ、長い長い物語を読まされてきたわけだから、これくらいのサプライズはまあ当然あるよなあー、という程度にとどまる。 そこは、もう、作者ですから、どうしてもハードルは結構高く設定されてしまう。そこはやむなしだ。 ストーリーは、複数の登場人物たちの視点をとおして、かわるがわる語られ、徐々に進んでいく。(実際はほぼ一日だけのお話だったわけだ・・・) 順番に語られるなか、読者は徐々に作者の術中にはまり、真相とは別の方向に導かれていく。そこはまあ当然。 問題なのは、事件のきっかけ、或いは大元になっている「インディアン・リープ事件」。 この事件の詳細がなかなか明確にならず、読者はモヤモヤ感を持ったまま終盤へ突入していく。おそらく、ここに仕掛けがあるのだろうという予想をしながら、真実が詳らかにされるのは、もう本当にラストの直前。 ここにきて、ようやく事件の全貌が明らかとなる。 まぁ長いよね。引っ張りすぎだろう。 壮大な真実が出てくるのを期待しすぎていると、ちょっと拍子抜けのような気にはなるかも。 そこは、まあ、まだまだベストセラー作家になる前の作品ということで・・・ やっぱり、全体としては、分量と面白さがアンバランス、ということにはなる。 |
No.4 | 6点 | SU | |
(2023/04/19 22:04登録) 脱走犯の逃走と追撃のスリル。病院内を含めて、それぞれの人間の愛憎がじわりじわりと解き明かされていくプロセスは、よどみなく活写されて息詰まる迫力が緊迫感をはらませて伝えられてくる。目まぐるしい場面の転換も効果的で、少ない登場人物でありながら、翳りのある実態をあぶり出す手腕は力強く冴えている。 |
No.3 | 4点 | Tetchy | |
(2011/03/10 21:35登録) ディーヴァー自身が作者人生の転機となった作品と述べたことで期待値を高くして望んだが、その出来栄えは凡百のミステリと変わらず、寧ろそれまでのディーヴァーの作品の中にもっと光るものがあったように感じた。 追う者と追われる者という設定から往年のクーンツ作品を思い出した。『邪教集団トワイライトの襲撃』、『ウォッチャーズ』など彼の傑作はこの手の作品が多い。 従って本書もその出来栄えを期待したが、それらと比べるといささか劣るというのが正直な感想。その先入観だけでなく、本書は随所に「クーンツらしさ」というのがそこここに見られる。 敵役であるマイケル・ルーベックの造形。巨躯で怪力を誇り、精神分裂症にもかかわらず、機転で追っ手を撒くしたたかさを持っている。 またルーベックを追う者のうち、元警官のトレントン・ヘックは犬を飼っており、このエイミールという犬に絶大なる信頼を持っている。この犬が物語のアクセントになっているのもクーンツ色を感じる。そう、まるでクーンツが著した『ベストセラー小説の書き方』をテキストにして書いたような錯覚を受けた。 |
No.2 | 3点 | あびびび | |
(2010/12/27 15:10登録) 精神病棟から抜け出した暴力的患者が、自分に対して不利な証言をした人間の家に刻一刻と近づく過程を綴ったサイコ的な物語。 最後にお約束のどんでん返しはあるが、一夜のことなのに長すぎる。途中がすごく退屈だった。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/12/24 18:36登録) 殺人容疑の男が精神病院を脱出し、裁判で不利な証言をした女教師の自宅を目指して逃走する、サイコ風のサスペンス。 この初期ディーヴァー作品は、ジェットコースターとはいかず、ドンデンはラストのみ。いわば”一発ネタ”で短編ででも書けるようなアイデアなので、この分量は少々きつかった。 文庫の内容紹介文にも問題あり。内容紹介でネタバレをよく目にしますが、このような読者を誤誘導する事実と違うアンフェアな記述はめずらしい。なお、本書はタイトル・内容ともクリスマス・イヴとは全く関係ありません、念のため(笑)。 |
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