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ミステリの祭典

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四月の橋
那珂邦彦シリーズ

作家 小島正樹
出版日2010年09月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 5点 E-BANKER
(2024/07/05 13:40登録)
「詰め込みすぎミステリー」の第一人者である作者(個人的に勝手にジャンルを作ってますが・・・)。
初期の「那珂邦彦」シリーズなのだが、探偵役は相棒で弁護士の川路が務めている本作。
なぜか未読だったため、今頃になって読了。2010年の発表。

~探偵役は鹿児島弁の抜けない弁護士・川路弘太郎。リバーカヤックが趣味のせいか、川では死体に出会い、河口で発見された死体の殺害犯として逮捕された容疑者の弁護を引き受ける。知り合いの女性弁護士の父親だったからだ。前作で見事な推理の冴えを披露したカヤック仲間、那珂邦彦の頭脳も借り、家族の秘密や昔のいじめ事件・・・と複雑な謎を解き、水上の大団円を迎える。日本版『川は静かに流れ』の傑作!~

紹介文では「鹿児島弁が抜けない」とあるが、作中では自分のことを「ワシ」というくらいで、他は普通に標準語をしゃべっている(前作もノベルズ版では鹿児島弁が強かったようだが、不評を受けて文庫版ではほぼ標準語になっていた)。「川では死体に出会い」とあるが、確かに冒頭の場面で死体と遭遇するのだが、那珂が鋭い推理力を有していることを示すのみで、後の本筋とは殆ど絡んでこない。
などなど、「こんな紹介文書くなよ!」って言いたくなってしまった。

で、話を本筋に戻すのだが、残念ながら、実に残念ながら、本作に「詰め込みすぎミステリー」の要素は皆無。
「詰め込みすぎ」を期待した読者にとっては、肩透かしのような作品になってしまう。
「日本版『川は静かに流れ』」とあるが、残念ながら私は未読のため、それが正しいのかどうかは不明。なんだけど、ひとつの家族が織り成す物語は、まるで川の流れのように、まっすぐではなく、蛇行したり急に水量が多くなったり、人智を超えた偶然にさらされながら進んでいくことになる。
商売を成功させ裕福な暮らしをしているはずの父親、頭脳も美貌にも恵まれ何不自由なく育ったふたりの姉妹。そんな、何の不満もないはずの一家が、どうしようもない不運と抗しがたい流れにさらされていく・・・のだ。

ただ、「ちょっと食い足りないなあー」というのが正直な感想かな。
作者特有のリアリティのかけらもなく、偶然の連続に支えられた大掛かりなトリックを期待している向きにとっては、あまりにも地味すぎた。
確かにたまにはこういうテイストの作品ももちろん良いのだが、作者に期待しているのはあくまでも「詰め込みすぎ」なのだ、ということを再認識した。
誰が何と言おうとも、評論家が辛辣な評価を下そうとも、いつまでも「詰め込みすぎて」欲しい! 読者とは勝手なものです。でも本音だからしようがないでしょう!
(リバーカヤックの蘊蓄は確かに多すぎ! でも面白そうだ)

No.4 5点 nukkam
(2024/05/21 04:45登録)
(ネタバレなしです) 2010年発表の那珂邦彦シリーズ第2作の本格派推理小説ですが、シリーズ前作の「武家屋敷の殺人」(2009年)とは随分と作風が変わった印象を受けました。派手な謎は全くなく、人間ドラマ要素を重視していて異色作と感じる読者も多いと思います。後半になって何人かの人物のキャラクターががらりと変わるような仕掛けがあったのが印象的でした。那珂邦彦の登場場面が非常に少なく主人公の弁護士・川路弘太郎のアドバイザー的な役割に留まっていて、やはり人間ドラマ重視型である海老原浩一シリーズの「怨み籠の密室」(2021年)と比べると名探偵役としては物足りなさを感じます。地味ながらも終盤での川を舞台にした演出がなかなか劇的です。

No.3 6点 虫暮部
(2013/09/11 15:31登録)
諸々の事柄の噛み合わせ方が若干わざとらしい気はするが、結末のシーンにはカタルシスが感じられた。

No.2 6点 kanamori
(2010/10/28 18:45登録)
これまでのようなトリック重視の作品を期待すると肩透かしと感じるかもしれませんが、シリーズ前作と比べて主人公の川路や先輩女性弁護士など、登場人物の造形が巧くなっています。作者の趣味を押し付けるようなリバーカヤック・ネタも今回は物語と有機的に絡んでおり許容の範囲内でしょう。
真相にミステリとしてのカタルシスを感じませんでしたが、ラストの多摩川のシーンが印象に残る及第作です。

No.1 7点 makomako
(2010/10/03 09:50登録)
「武家屋敷」ではトリックの詰め込みすぎと登場人物の魅力不足が気になったが、本作品ではそういった点が大幅に改善されている。探偵も例の「っす」とは言わなくなったし、先輩弁護師の泉さんはとても魅力的に描かれている。トリックも無理がないため「武家屋敷」のように解法事典を読んでいるようなつまらなさは皆無となった。そのかわり推理小説としては小粒でややひねりが足りない気もする(読者とはかようにわがままで贅沢なものです)。
 相変わらずあまりメジャーとは言いがたいリバーカヤックに対するお話がはじめのほうに長々と語られている。今回は川にちなんだお話であるのだが、カヤックの色々なテクニックのお話は薀蓄というよりはおたく気味である。
 それにしても短期間に人物描写がうまくなったのはすごいではないか。次回を期待しよう。

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