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ミステリの祭典

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オー!ファーザー

作家 伊坂幸太郎
出版日2010年03月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 5点 SU
(2023/07/04 18:37登録)
主人公である由紀夫には父親が四人いて、一つ屋根の下に暮らしている。四人の父はそれぞれ漢字一文字の名を与えられ、「理想の父親」を四つの要素に分解したようなキャラクターを付されている。
そんな由紀夫が、とある事件に巻き込まれ父たちに救い出されるのがメインプロット。伊坂作品というと「伏線とその回収の妙」が代名詞で、本書でも帯に謳われている。伏線がきれいに回収されすぎるのも嘘くさいものだが、作り物であることを志向している本作品において、ご都合的でさえある展開はむしろ主題を補強するように働く。
主題とは「家族愛」だ。それも、スーパーな息子がスーパーな父親をかけがえのない家族として、再認識する物語である。目も当てられないことになりかねないそんな物語に爽快な説得力を持たせているのは、抽象化された構造にほかならない。
濃密な読後感といったものは確かにないが、得難い現代のおとぎ話を味わえる。

No.3 6点 ぷちレコード
(2021/03/13 22:08登録)
主人公の由紀夫には父親が4人いる。誰が遺伝子上の父親かは分からないまま、4人とも可愛がってくれている。父親の個性はバラバラ。それぞれの人生哲学を教えこまれた結果、由紀夫は喧嘩の攻撃の仕方や、女性へのアプローチの仕方など、さまざまな教訓を頭に刻み込んでいく。
にぎやかに楽しく話は進み、やがて由紀夫は絶体絶命のピンチに。そこから鮮やかに伏線を回収しながらトラブル打開に向かっていくさまは実に爽快。

No.2 6点 E-BANKER
(2014/10/01 21:34登録)
2006年に河北新報をはじめとするいくつかの地方紙に新聞連載された作品。
出版年では「ゴールデンスランバー」よりも後になってしまったが、作者自らが自身の第一期の最終作品と呼ぶのが本作。

~父親が四人いる!? 高校生の由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。個性あふれる父親×4に囲まれ、息子が遭遇するのは事件、事件、事件・・・。知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。多声的な会話、思想、行動がひとつの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語があまたの眼前に姿を現す。伊坂ワールド第一期を締めくくる長編小説~

これは・・・ズルイなぁー
もう伊坂の得意技がこれでもかというほど散りばめられている作品。
まずは父親が四人という設定からして面白い。
しかもひとりひとりのキャラ付けが秀逸。そして、まとめ役となる息子・由紀夫もこれまた伊坂作品にはお馴染みのキャラだ。
いつもどおり、それぞれが軽そうでいて、どこか教示的で胸に響くことばを持っている。
「こんな奴いるわけない!」という存在なのに、最後には何だか隣にでもいるみたいに親近感が湧いてくる・・・
これこそが伊坂ワールドのマジックというやつだろう。
(読者はいつも「伊坂ワールド」というテーマパークに招待されているのだ)

序盤から一見関連性のない事件が複数発生する展開もいつもどおり。
そして、最後にはそれらの伏線が見事に収束されていく豪腕ぶりもいつもどおり。
特に今回の見せ場は実に映像向き! こりゃすぐ映画化されるわけだ。
ということで、初期作品が好きな読者ならばまず安心してお勧めできる作品となっている。

ただなぁ・・・さすがに二番煎じというかマンネリ感は正直ある。
そんな訳で、作者も「ゴールデンスランバー」以降、ちょっと方向性を変えることになったんだろう。
評点としても手放しで高得点は付けにくい。

No.1 6点 ボンボン
(2014/09/08 23:24登録)
楽しかった。
こんなふうに親に育てられたかったなあ。こんなに立派に育ちたかったなあ。でも、現実の家族ってこんなに素敵じゃないよなあ。だからこそ、この小説は楽しいんだなあ。
設定そのものが謎っぽい魅力たっぷりなので、そちらにばかり気を取られ、事件のほうは、なんだか散漫な感じに。最後の謎解きが、二時間ドラマのように説明で終わるのが残念。たっぷり散りばめられた伏線が、結構バレバレだった。
でも、キャラもセリフも、やっぱり面白い。伊坂幸太郎の得意技を寄せ集めたような作品。

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