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ミステリの祭典

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粘膜蜥蜴
粘膜シリーズ

作家 飴村行
出版日2009年08月
平均点6.80点
書評数5人

No.5 7点 八二一
(2022/09/24 20:09登録)
露悪趣味に辟易しつつも、軍国ワールドと密林の冒険譚に仕掛けられた伏線が昇華する愛の衝撃に呆然。
広義のミステリの境界線上の一歩外側を歩みながら、愛をテーマとし、その対象が明かされる瞬間がミステリとして素晴らしい。

No.4 6点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2022/07/01 13:53登録)
舞台は第二次世界大戦前夜の日本。物語は、町に一つしかない病院の院長にして、莫大な資産を武器に軍や中央の政治家との間に太いパイプを持つ絶対的権力者・月ノ森大蔵の一人息子・雪麻呂が同級生の真樹夫と大吉を自宅に連れ帰ってくる場面から幕をあける。
気持ち悪い巨大生物が現れるはわ、爬虫人の秘密が明かされ、それが見事に第一章の雪麻呂たちの物語につながっていくわ、読み応え満点の秘境小説にして冒険小説になっている。惜しむらくは、ラスト。せっかくここまで常軌を逸した展開だったのに、因果応報という予定調和に着地してしまったところ。

No.3 7点 touko
(2011/04/02 16:37登録)
図書館で借りたので、粘膜人間→粘膜兄弟→本作の順番で読んでしまいました。
一番人気の本作は、発行から1年半たった今でも予約待ちが続いています。

一作目ほどの破天荒なイマジネーションの奔流は感じなかったのですが、こんなエログロな内容なのに、ミステリではお馴染みの、あるトリックのおかげで、あっと驚く感動エンディング(?)になってしまう……その落差がすごくて感心しつつ笑えます。

No.2 7点 kanamori
(2010/10/15 18:35登録)
エログロ・ホラーという評判もあって若干及び腰ぎみに読み始めましたが、滅法面白いジャンルミックス小説でした。
たしかに、地下の死体処理場のシーンとか退いてしまう描写もありますが、主人公の大病院の御曹司・雪麻呂少年の比類ないエゴ、爬虫人・富蔵のとぼけた造形、東南アジア某国での秘境冒険譚など思わず引き込まれ、リーダビリティは抜群。鬼畜系のエピソードが博愛の物語になってしまうというエンディングも予想外でした。

No.1 7点 メルカトル
(2010/06/23 23:45登録)
第63回日本推理作家協会賞受賞作。
ホラーでもない、ミステリでもない、SFでもない、ファンタジーでもない、それらのエッセンスをそれぞれ良いとこ取りしたような作品。
あらゆるジャンルを超越した、現代の奇書と呼んでも差し支えないであろう。
舞台は第一章と第三章が、戦時下の大病院。
主人公はその病院の御曹司で国民学校初等科に通う、雪麻呂。
彼を巡るさまざまな惨劇と、従姉妹に対する愛、失踪した母親への思いなどが読みやすい文体で描かれる。
第二章は雪麻呂の友人、真樹夫の兄で青年将校の美樹夫が主役を務める。
敵地ナムールで軍部の要人をある村に無事送り届ける為、ジャングルを巨大な虫どもと戦いながら踏破する物語。
とにかく全編に亘って、残酷描写をところどころに散りばめながら、様々なジャンルの要素をぶち込んだごった煮的な作品である。

また、へルビノと呼ばれる爬虫人(頭が蜥蜴で首から下が人間)の存在が要所で重要なポイントとなってくる。
ただ、ミステリとはとても呼べない本作が日本推理作家協会賞を受賞した理由は私には理解できない。
面白く、興味深い作品には違いないが。

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