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ミステリの祭典

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ラガド 煉獄の教室

作家 両角長彦
出版日2010年02月
平均点5.20点
書評数5人

No.5 6点 猫サーカス
(2021/09/30 18:45登録)
第13回日本ミステリー文学大賞新人賞の受賞作。地下講堂で警察官らによる事件の取り調べが密かに行われた。ある中学校の教室がそこに「再現」され、ゼッケンをつけた生徒役が席に並ぶ。これは教室で起きた無差別殺傷事件の「再現」だった。酒に酔った中年男が侵入し、生徒を刺殺したのだ。だが単純に思えた事件も、検証を重ねる過程で全く別の様相を見せ始め、二転三転していった。各ページの余白にクラス全員の配置と行動が分かるように図で示されている。まるでボードゲームのようだが、その見せ方が極めて斬新で分かりやすい。さらに事件の背後に隠された大胆な謎とその真相をラストで明確に見せる効果を果たしている。

No.4 7点 人並由真
(2021/09/05 06:15登録)
(ネタバレなし)
 文庫版で読了。

 400ページ近い、やや厚めの長編かと思いきや、そのうちかなりのページが教室内の図版で占められている(上下分割込みで、のべ90枚以上)。
 ポストゲートの『十二人の評決』とかキッチンの『伯母の死』みたいなビジュアル要素に依存するギミックをはるかに拡大したような趣向で、コレだけでもミステリ史に残るであろう。

 後半まで仮説の提示を繰り返す展開はなかなかハイテンションだったが、一方で登場人物の造形はそろって大雑把。主人公格の一人・甲田の内弁慶ならぬマスコミ弁慶ぶりなど、面白そうなのにもっと掘り下げてほしかった。伸彦のダメ男ぶりとかもあまりにマンガチックで、いくらイクスキューズされていても、どうにも了解しがたい。
 あと、本当の黒幕の正体についてはリアリティがないとかどうとか言っても意味がない種類のものだけど、もうちょっと読者の説得のしようはあったよね? とも思う。

 でもって肝心のラストが舌っ足らずで中途半端という皆様の見解はまったくもってごもっともですが、個人的にはたぶんこの作品、元版の数年前に完結したばかりの某オリジナルテレビアニメに、インスパイアされているような気がします(その作品の名前は、文庫版巻末に掲載の作者と綾辻先生の対談にはまったく出てきませんが)。
 まあ当方の妄想かもしれんけれど、黒幕の「(中略)」の正体が<その手のもの>だとしたら、個人的には結構いろいろと腑に落ちる。
 
 いびつな作品だとは思うけれど、このパワフルなダイナミズムは買います。
 2年4組の生徒にひとりひとり固有名詞をつけるといった、ムダなことはしないで、大半の男子女子をナンバリング分類するだけという割り切った叙述も読み手のストレスをかなり軽くしてくれた配慮だと思う(作者がネーミングが面倒だっただけかもしれんが)。

 作者がアダルトウルフガイの中で『人狼戦線』が一番好きみたいなことにも気をよくして、0.5点オマケ。

No.3 4点 名探偵ジャパン
(2019/01/31 20:31登録)
「いったい、どこに着地するつもりなのだろう……?」と興味を持ってページをめくっていたら、どこにも着地せずに、はるかかなたまで飛び去って見えなくなってしまった。そんな感じでした。……何を読まされたんだろう(笑)。

読んでいる最中は、それなりに楽しませてもらっていたので、5点(まぁ楽しめた)にするか迷ったのですが、やっぱり、仮にも「ミステリー」と名のつく賞の受賞作としてはどうだろう? という思いが勝ってしまったため、この採点となりました。

No.2 4点 メルカトル
(2017/12/13 21:45登録)
第十三回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

ある中学校の教室に男が侵入し、全生徒が見守る中、女子生徒を殺傷する。その男は、同じクラスの自殺した女子生徒の父親だった。それを警察が犯人を帯同させ再現するという導入部はなかなかに興味を惹かれるものでした。

しかし、全編を通していったい何がしたかったのかさっぱり分かりません。よってジャンル分けもその他にするしかないという感じです。
とにかく何もかも足りないところだらけで、まあ評価に値しない作品となってしまいますね。個性が足りない、文章のキレもいまひとつ、プロットもこなれていない、全体的に荒削り、謎の数々がそのまま説明されず残ってしまっているなど、数え上げればキリがありません。最も気に入らないのは面白みがないってことです。
これが「新感覚」と言えばそうなのかもしれませんが、やたら教室内の生徒の動きを表現した図解が挿入されており、正直ウザいです。唯一目新しさと言えばこれくらいでしょうか。読後感もカタルシスを得られるには程遠く、モヤモヤした気分しか残りません。
読み進めながら、そのうち何らかのサプライズが訪れるだろうなどと期待した自分がバカでした。デビュー作ということを差し引いても、褒められたものではないとの結論に達しました。

No.1 5点 虫暮部
(2011/03/23 15:00登録)
 面白かったし筆力があるのはわかるが、「最後まで書ききる」というところから逃げてしまっている気がする。もう少しきっちり結末を締めてあればなぁと思う。

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