騙し絵 ボブ・スローマン |
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作家 | マルセル・F・ラントーム |
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出版日 | 2009年10月 |
平均点 | 5.80点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 6点 | E-BANKER | |
(2025/06/14 14:30登録) 作者は僅か三作のミステリを遺しただけ、とのこと。 本作は、なんと戦時中の捕虜収容所の中で書き上げたというのだから恐れ入ります。 1946年の発表。 ~アリーヌ・ブイヤンジュが祖父から贈られた253カラットのダイヤモンド「ケープタウンの星」。彼女の結婚披露宴の日に、パリの屋敷でこのダイヤを披露することになった。世界六か国の保険会社はこの宝石のために各社一名、警備要員として警官を派遣。ところが、六名の警官の厳重な警備にもかかわらず、ダイヤは偽物にすり替えられてしまう。誰が?どうやって? 謎に立ち向かうのは、アマチュア探偵ボブ・スローマン~ いやいや、これは思わぬ掘り出し物だった。 あまり期待してなかったせいもあるけれど、まさか「読者への挑戦」までも挿入したミステリとは・・・ さらに、巻頭には、本作でメインの事件・謎となる「ダイヤ消失事件」の舞台となる屋敷の平面図までも示されている。 (これは本格好きの心をくすぐるよね) これが単なるコケ脅しかと思いきや、まさかの(平面図の中に)大掛かりなトリックのヒントが隠されていようとは・・・ ただ、このトリック。かなりの無理筋というか、悪く言えば「適当」なトリックではある。 フランス人らしく、おおらかでラフ、と表現すればいいかもしれないが、いくらなんでも、まずまずの大人数がアノ場所にいて、〇〇でそういうことを行っていたら、さすがに察するというか、少なくとも「変だな」とは感じるだろっ!って思う。 まあ、そんなこと言うのは野暮なのかもしれんが・・・ 残りの殺人事件と誘拐事件、飛行船(?)消失事件については、完全に付け足し程度。特記することは別段ない。 後は、他の方も触れているとおり、筆致の軽妙さが光る。時代性を考えれば、これは特筆ものかもしれない。 結局褒めているのか、貶しているのかはっきりしない書評となってしまいました。 でも、冒頭でも触れているとおり、「予想外の掘り出し物」という感想は変わらず。一読の価値はあると思う。 |
No.4 | 4点 | 青い車 | |
(2016/11/14 17:37登録) 図書館で作者情報などの予備知識いっさいなしで借りました。やたら大がかりで破天荒なトリックが登場しますが、個人的にはあまりハマらず。ただ、これだけ昔にこんな突き抜けて大袈裟なミステリーが存在したことが面白い発見でした。いわゆるバカミスの雛型とでも言うべきでしょうか。 |
No.3 | 6点 | kanamori | |
(2010/06/16 21:21登録) 厳重監視下の室内からの宝石の盗難がメイントリックの不可能犯罪もの本格?ミステリ。 いかにもフランス本格らしい大らかで豪快なトリックは無茶だけど面白い。多国籍警察官という発想もすばらしい。細かいことを言わずに笑って楽しむ作品。 後半の冒険サスペンス風の展開も、アルセーヌ・ルパンを輩出させたお国のミステリらしくてなかなかいいですね。 |
No.2 | 7点 | シーマスター | |
(2010/05/19 23:49登録) 6人の多国籍警察官による厳重監視の中で253カラットのダイヤモンドが偽物と入れ替わる、というアン信じらブルな不可能犯罪。 正直「警察が徹底的に現場検証したけど全く異状なし」というのは少々アンフェアな気もするが、この大胆なイリュージョンの前にはその程度の・・・には目を瞑ってもいいだろう。 その他にも全くカスな二件の「消失」があったり、思いつきみたいな話がコッテリ盛られたりしながらも、消化しやすい古き良き風味のフレンチ・ミステリーといった感じの作品だと思うが如何だろうか。 メイントリックもさることながら文調も軽妙で、大いに才能を感じさせる作者ではあるが、本作を含めて大戦中に捕虜収容所で書いた三作が戦後のフランスでは全く評判にならなかったことに失望して筆を折ってしまった、というのだから惜しまれることこの上ない。 |
No.1 | 6点 | nukkam | |
(2009/11/05 09:18登録) (ネタバレなしです) フランスのマルセル・F・ラントーム(1902-1988)はミステリー黄金時代の巨匠の作品を読破していただけでなく、第二次大戦中に捕虜収容所の中でボブ・スローマンを探偵役にした3冊の本格派推理小説を書き上げたという筋金入りのミステリー・マニアでした。その3冊は戦後にめでたく出版されたのですがフランスでは評価されなかったらしく2度とミステリーを書かなかったのは本当に残念です。1946年発表のシリーズ第2作にあたる本書は戦時色を全く描写しないで謎解きの楽しさのみを追及した本格派推理小説で、「読者への挑戦状」まで付いています。メインの謎は盗難事件(殺人もありますが付随的な扱い)ですが劇的な展開を見せるので退屈しませんでした。トリックは意外と複雑で、これは読者が完全に見破るのは難しいと思いますが。最終章のボブの感想は結構味わい深く、強い余韻を残します。 |