古代天皇の秘密 神津恭介シリーズ |
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作家 | 高木彬光 |
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出版日 | 1986年09月 |
平均点 | 4.80点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 4点 | クリスティ再読 | |
(2025/07/04 11:02登録) 本作は作者の脳梗塞からの復帰後の作品になる。邪馬台国の位置についての議論に終始した「邪馬台国の秘密」の続編の格好を取って、邪馬台国の成立やらその後について、記紀などの記述・地名などから古代天皇の事績について考証していく内容である。 おそらく病床の作者は記紀や古代史の本を読みふけっていたんだろうなあ...そんなことをうかがわせる。交通事故で右大腿部と右手首骨折、身動きが不自由になった神津恭介に、脳梗塞の自分を重ねたくもなろう。本作では神津も定年退職(当時は国立大教授職の定年は60歳)していて、半白の髪の60代半ばの紳士。思えば神津も年をとったものだ。 印象は何というか、とりとめがない。しっかりしたテーマがないんだよね。「邪馬台国」での邪馬台国宇佐説を基盤に、その祭神である神功皇后と応神天皇による大和侵攻の背景がまあ、大まかな中心軸と言えるだろうか。いわゆる「神武東征」はその反映だとして史実性を拒絶する。文庫300ページほどの長さで、朝鮮半島からの渡来人やら熊襲・隼人の正体、物部氏・大伴氏の由来、果ては蝦夷にまで話が及ぶ...本当に駆け足で羅列されるだけ。難解な内容を大量に早口でまくしたてられているかのよう。病床で「勉強しすぎた」なあ。どんな読者でもこの情報量を処理しきれない。推理がまっとうかどうかももはや検証不能。 なので小説的な内容は希薄。本書で「成吉思汗」に登場した大麻鎮子は一時神津と恋仲になりそうだったが交通事故死したことが告げられている。 意外かもしれないが、評者一時面白がって関裕二を読んでいたことがある。内容は証明不可能だし、少しも真には受けなかったのだが、紹介される古代史の場面に印象的な「美しさ」があって、そんなロマンと情念を興趣深く思って読んでいたんだ。歴史をエンタメにしようとするのが「歴史推理」なのだが、本作ではこの「エンタメ化」に完全に失敗しているとしか言いようがない。 |
No.4 | 4点 | ボナンザ | |
(2020/11/21 19:32登録) 邪馬台国が長さの割にあっさりしすぎた感があったのに対し、本作はあちこちテーマが散らばって、しかも大した検証もなしに研三が恭介にひれ伏すので独りよがりに感じられる。 |
No.3 | 5点 | seiryuu | |
(2011/01/12 23:22登録) ベットディテクティブ第3弾。 「成吉思汗の秘密」で教授のアシスタントをしていた女性が事故死していて残念だった。 今回はテーマが多すぎてラストにまとめきれていなかった気がしました。 ラストはナガスネヒコじゃなくて、三宅女史もいることだし アメノヒボコ関係で〆たら面白かったのに。 今回は「成吉思汗の秘密」のように話に一体感が感じられず、読後感はイマイチでした。 |
No.2 | 5点 | 江守森江 | |
(2010/12/23 11:58登録) 東京タワーも誕生日、真っ先に思いつく乱歩「黒蜥蜴」は以前書評している。 ならば、今日は天皇誕生日。 「日本人ならクリスマスより先ずは天皇陛下でしょ!」って、昭和天皇みたいに誕生日当日に競馬の天皇賞(春)があったワケでなし、平成天皇は年末の傍迷惑な時期に生まれたせいか、国民は祝日の有り難みすら感じずクリスマス〜有馬記念〜正月に流され忘れ去る。 さて本作だが安楽椅子歴史推理の第三弾でネタ切れなのか古代天皇の謎なんてイマイチ興味の薄い題材になってしまっている。 日本史のお勉強じゃないんだし小説なのだから魅力的なお題と面白さも追求してほしかった。 推理する側の人物も神津恭介でない方が良かったかもしれない。 ※余談 本日、競艇の賞金王決定戦が開催されるが、公営ギャンブルで天皇賞があるのが競馬だけで、年に春秋二回もあるのは依怙贔屓過ぎる。 |
No.1 | 6点 | 測量ボ-イ | |
(2009/09/10 20:07登録) 「成吉思汗」「邪馬台国」に続く、氏の歴史シリ-ズ第3弾 ですが、シリ-ズ中一番内容が高度で難しかったです。この 本の内容を十分理解するには、もう少し古代史の勉強をして おく必要があるかも。 贅沢いえば、本来難しい事をもう少し易しく書いてもらえ ると有難かったです。 |