本命 競馬シリーズ |
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作家 | ディック・フランシス |
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出版日 | 1968年01月 |
平均点 | 6.80点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 7点 | 雪 | |
(2018/12/13 21:45登録) 濃霧を突いて疾走する馬群。本命馬アドミラルは二番手との差を十馬身以上に広げ、騎手ビル・デイビッドソンは九十七回目の勝利を目前にしていた。だが、完璧な跳躍を見せた次の瞬間、ビルの体はまっさかさまに落ち、アドミラルの馬体がそれに続いた――。 馬上から愕然としてその光景を見つめるアマチュア騎手アラン・ヨーク。落下に不自然さを感じた彼は現場を調べ、柵の上辺にまきついた針金を発見する。だが理事への報告を終え調査が行われる僅かの間に、証拠は全て持ち去られていた。 彼はビルの仇を討つため、本格的に事件の謎を追う決意を固めるが・・・。 1962年発表。ディック・フランシスの処女作で、記念すべき競馬シリーズ第一作でもあります。本格ミステリ成分と冒険小説要素がバランス良く配分されていますが、レベル的にはさほどのものではありません。フランシス作品を特徴付ける各要素、どん底からの再生、主人公に対する凶暴な悪役、サディスティックな暴力描写、それらを突き付けられても決して揺るがぬ鉄の意志などは、まだ不十分なままです。 ただその分清々しさがあるのが魅力ですね。アドミラル号はビルの死後、妻のシーラからアランに譲られるのですが、ラスト近く主人公を追う敵集団との追跡戦でトップ障害馬の実力を存分に見せてくれます。黒幕の正体が割れたあとのレースシーン、〆の爽やかなエンディング等も後続作品ではなかなか見られません。 個人的に一番好きなのはフランシス要素の濃い次作「度胸」ですが、処女作の潔さに惹かれる方もいらっしゃるでしょう。7点といった所ですかね。 |
No.4 | 6点 | 斎藤警部 | |
(2018/04/29 21:41登録) 第12章ラストシーンのヘンリイ(ガイシャの息子)には泣けた。 黒幕が挙がっておしまいかと思いきや、むしろその手下級暴露で二重底の謎がやっと解決というヒネリある構成。 その手下の方、たしかに強烈に意外な犯人だったが、まさか犯人ではないと思い込ませる技倆は大したものだが、、ちょっとイヤだったな、そいつが真犯ってのは。。。。 でもラストショットの友情発揮は良かったよ。明るい冒険ミステリをありがとう。オールドソウルファンとしてはL.C.クックを思い出す名前の会社が妙に心に残る。 |
No.3 | 8点 | E-BANKER | |
(2013/10/23 22:44登録) 1962年発表。大作家D.フランシスの競馬シリーズ第一作目が本作。 原題“Dead Cert”(=死の不正?)。フランシスも後回しにしていた作家なのだが・・・ ~濃霧をついて蹄鉄がぶつかりあう鋭い音が響く。遥か前方を走る一頭の鞍上では、騎手のビルが最後の障害を跳ぶべく馬の態勢を立て直していた。本命馬アドミラル号はその力強い後半体の筋肉を盛り上げ、緊張し跳んだ。完璧な跳躍。鳥のごとく宙に浮き次の瞬間落ちた。そしてビルは死んだ・・・。これは事故なのか? ビルの親友アラン・ヨークはその疑いに抗しきれず、ただひとり事件の謎を追う。迫真のシリーズ第一弾!~ これは面白い。 本格ミステリーとしても、サスペンスとしてもやはり一級品だ。 さすが読み継がれてるシリーズというのも頷ける・・・(ちょっと褒めすぎか?) 紹介文のとおり、事件は不審な落馬死亡事故から始まり、徐々に競馬サークルに蔓延っている八百長事件へと発展していく。 こう書くと、この手のミステリーにはありがちなストーリーだし、本作においても骨格となるプロットは実に単純なもの。 中盤あたりからいかにも怪しげな人物が登場するので、ミステリーファンなら「多分こいつが黒幕か?」というアタリがつけられるに違いない。 でも、本作のスゴさはそこではない。 読者が主人公ヨークと一体になり読み進められるリーダビリティの質、ミステリーとしての要素がうまい具合に配置されているバランスこそが本作の良さだと思った。 ラストに待ち受ける主人公の大ピンチと更なるドンデン返しもよく効いている。(予定調和気味ではあるけど・・・) 他の方の書評を見ると、本作はフランシスらしくない作品とのことであるので、逆にますます次作以降に興味が湧いてきた。 せっかく後回しにしていたシリーズなので、じっくり時間をかけ楽しむこととしたい。 (巻末解説に日本と英国の競馬の相違点がまとめられていて参考になる。やっぱり、馬が生活に密着に関係していた国と胴元がいかに集金するかから始まった国とは違うということだろうな・・・) |
No.2 | 7点 | 空 | |
(2012/06/26 23:13登録) いかにもディック・フランシスらしい作品を求めるのであれば、確かに本作はふさわしくないでしょう。まず主人公が最初から警察と連絡を取りながら事件の裏を追っていくという点が、後続作品と違います。また現在までに読んだ7冊の中では、ホームズとかチェスタトンといった過去の探偵・作家名を引き合いに出しているのも本作だけです。それだけに、主人公の推理は時にクイーンをも思わせるほど論理的なところがあります。そう言えば、綴りはわかりませんし姓ですが、エラリイという名前の人物も登場します。語り口にもユーモアがあったりして、爽やかな雰囲気が感じられます。 しかし、フランシスの出発点はここだという意味では、本作をまず手に取るのもいいのではないでしょうか。最後まで謎解き的な興味も、サスペンスやアクションも続く秀作です。犯人側の人物の行動で1ヶ所、これはさすがにあり得ないというところはありますが。 |
No.1 | 6点 | mini | |
(2010/04/22 09:49登録) 明後日発売の早川ミステリマガジン6月号の特集は”ディック・フランシスの弔祭” パーカーに続いての追悼特集ってわけね フランシスのデビュー第1作が「本命」である しかし「本命」はフランシス入門にはあまり適していない いやもちろん出来は良いし個人的には大好きな作なのだが、後続の作品とは微妙に雰囲気が違い、これを最初に読んでもフランシスの特徴が伝わり難い ”不屈の精神”という作者の永遠のテーマも後の作品ほどまだはっきりとは打ち出されていない その代わり後の作品からはやや控えめになる清々とした高貴な雰囲気が全開で、読んだ中では最も格調がある ちょっと貴族趣味的な雰囲気は好き嫌いが分かれるかも知れないが、渋い枯れた味とは全く反対の、青春小説のような瑞々しい香気は作者の中では異色だろう 異色と言えば、フランシスは犯人の正体などはバレバレでそういう面を重視した作品はあまり多く無いが、「本命」は真相を終盤まで隠すなど珍しく謎解き興味が強い |