症例A |
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作家 | 多島斗志之 |
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出版日 | 2000年11月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 7人 |
No.7 | 8点 | じきる | |
(2020/08/24 21:50登録) 精神医学の深い掘り下げと、それをストーリーに絡ませる筆力に脱帽。 |
No.6 | 5点 | レッドキング | |
(2019/02/09 21:07登録) 20世紀前半に、ミステリが隆盛したのとフロイトが流行したのは軌を一にしているという説を聴いたことがある。 現代の心理学界でフロイト流精神分析が「異端」ということは知っている。ましてや精神医学においてはなおの事だろう。そりゃあ鬱病を患って精神科行った際に、幼少期トラウマの物語作らされても意味ないし、抗鬱剤飲んだ方が手っ取り早いし。ミステリにおいても、二重人格多重人格ネタは双子ネタレベルに幼稚感がするが、ミステリの「真相解明」と無自覚だった自己の「心の解明」って、いまもなお魅力的なテーマなんだな、困ったことに。 |
No.5 | 6点 | メルカトル | |
(2018/08/30 22:26登録) 精神医療に対する傾倒と情熱は、その夥しい参考文献を見るまでもなく十分に伝わってきます。作者はこの作品を執筆する前にさぞかし勉強されたことと思います。それは実際にカウンセラーの仕事をしている解説者の談からも分かります。 物語としては、ある精神病院と博物館のパートが交互に描かれていますが、正直後者はサイドストーリーであり余分だと個人的には感じます。それを思い切って省いてもう少しスリムにしたほうが、構成としてはすっきりして良かったのではないかと思わないでもありません。 この長い長い、実に丹念に描かれた作品の事実上のクライマックスは、なんと言っても岐戸医師の登場する件で、このシーンは特に引き込まれます。 ここで姿を現す症例は俄かに信じがたいものがあります(実際、映画や小説にはよく出てくるものの、本当に病気として存在しているのかどうか半信半疑な部分がおおいにある)が、それを実にリアルで本当かもしれないと思わせる筆力は流石です。 ミステリではないと思いますが、真正面から精神分裂病や臨床心理学、解離性同一性障害などと向き合う作者の真摯な姿勢は素晴らしいと思います。 |
No.4 | 7点 | ボンボン | |
(2017/05/13 17:24登録) 作者は、精神医学について、随分勉強されたのだろう。何のために治療するのか、目指すべきところはどこなのか、その真髄にまで迫っている。 面白いのが、精神医学の話だけで十分いけるのに、これまた唐突にディープな博物館の学芸員の世界を持ってきて、もう一筋の物語として伴走させるところ。この全く関係ない二つの専門世界でそれぞれ謎を追っていくと、当然その二つは繋がってくるのだが、それがなかなかに突拍子もなくて、言ってしまえばこの話の組み合わせである必然性が全く無い。そこが不思議な面白味になっている。 |
No.3 | 6点 | yoshi | |
(2010/02/27 22:31登録) 精神医学に詳しくなれた。だが終わり方が消化不良。 |
No.2 | 9点 | 結奈 | |
(2009/05/19 15:47登録) 精神疾患を扱ったお話で、かなり丁寧に書かれています。言い換えればその部分が多いという事にもなるので、興味がない方にはあまりお勧めはできませんが、 個人的には(興味ある分野なので)楽しめましたし、ミステリー要素もあり、かなり満足する事ができました。 |
No.1 | 8点 | こう | |
(2008/07/24 02:05登録) 厳密にはミステリとはいえないかもしれませんが非常に気に入っている作品です。 いわゆる精神疾患を扱ったものですがサイコサスペンスではなく境界性人格障害、解離性同一性障害をテーマにした作品です。 精神科医を主人公として担当患者の少女の診察を通じて診断してゆく苦悩、また同僚の女性臨床心理士との交流が丁寧に描かれています。 安易に多重人格患者を犯人とするサイコパス物とは一線を画す骨太な作品です。500ページ以上と長いですしこれらの病気の説明が描かれている部分が長いので全く興味がない方には向かないかもしれません。 美術館員のある人物の追跡のストーリーがありこれがメインストーリーにつながり、また真相がわかるきっかけなども巧いと思いますが、全くサイドストーリーがなくても十分通用する作品だと思います。 多島斗志之は毎回テーマが全く違いますがどれも作品の構成が丁寧で読み物として面白いものが多いです。殺人事件を扱っているものはそれほど多くはありませんが主人公がなんらかの謎を追跡してゆく物が多くこの作品も含めどれもお薦めです。 |