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ミステリの祭典

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夜想

作家 貫井徳郎
出版日2007年05月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 8点 ごんた
(2014/11/10 22:48登録)
この作品はミステリではありませんので普通の文芸作品としての評価になりますが、とても感動的な傑作です。
妻子を失って絶望に打ちひしがれた男の、超能力美少女との出会い、宗教っぽい団体の立ち上げ、教祖を失ってからの絶望と混乱など波乱万丈の物語が描かれます。
読んでる途中は善意の団体が徐々に悪い宗教団体に堕ちて行くダークな話になるのかなぁと予想しましたが、最後はハートフルな結末になっていて救われます。
そしてこの作品の一番の見どころは何と言ってもヒロイン天美遙の人間的魅力。最初から最後まで終始一貫して、裏表のない聖母のような人物として描かれており、ハッピーエンドを願ってやまない気持ちになります。

No.3 7点 ウィン
(2010/09/25 12:30登録)
宗教団体の形成をテーマに書かれた本書。
宗教とは言っても、ホニャララ真理教みたいに明らかにインチキじゃねぇか、という宗教団体とは違う。
そもそも、宗教団体と呼ばれることを教祖的存在である者が嫌い、崇められるのも拒む。あくまで一人の女性として悩める人の相談役でありたいのだという意思を貫くのである。
その女性はものに触ることにより、そこから何らかの意思を汲み取ることができるという能力があり、その点でも、インチキなことをして「教祖様は浮遊できる」などといった某宗教団体とは違うのである。
宗教団体と言えば嫌なイメージしか沸かないのだが、本書ではあまり嫌悪感を抱かなかった。しかし、教祖のような存在である女性を取り巻く人々に、団体が有名になるにつれて少しずつ、団体として更に高みを目指すという、いわゆる出世欲のようなものが出てくるあたりはなかなかリアル。
こうして宗教団体は出来上がっていくのだなあ、と思った。
結局、ことは上手く運ぶものの、主人公たちが救われた印象はいまいち感じられず、俺の心は暗いまま終わった。
素晴らしい出来である本書だが、少々中だるみした印象があるので、マイナス一点。
ただ、ミステリとは言えない作品なのであしからず。

No.2 6点 シーマスター
(2009/12/15 22:58登録)
本作はミステリではありません。(ソレっぽい部分もあるにはあるが)

超常能力も出てきますが端的に言えば「ある新興宗教ができる過程」と纏めてしまえるかもしれない。
もしその宗教が現実にあるとしたら、本作はこのままその布教小説になりうるでしょう。

【余談】かなり以前にある宗教、〇〇〇会(伏字にする意味ありませんね)刊行の小説を読んだことがあります。(もちろん買ったりなどしていません、貰いものです・・多分会員の方から)・・その内容を思いっきり概略すると・・・
悲運に見舞われ続け、堕落し荒んだ生活に身を浸す主人公が敬虔な信者に出会い、紆余曲折の末ついには心を開かれ、その道に生きていく・・・
というベタな話だけど、読み物として結構面白い上、途中「闇が深ければ深いほど夜明けは近い」みたいな件(くだり)に至ったときには少し感動してしまったものですよ。【余談終わり】 

本作は(他の作品からも窺われるように)宗教に関して中立のスタンスでありながらも強い関心を抱いている作者が、その意義を掘り下げて宗教の枠を超えた救済論を考察した書であると同時に、「絶望的な悲しみを背負った人々」に向けた作者なりの優しい眼差しとささやかなメッセージが込められた作品だとも思います。

No.1 5点 いけお
(2009/05/16 01:36登録)
らしさはあるが雰囲気だけで緻密さに欠けるという印象でいまいち夢中になれなかった。
トリックというかラストの部分も伏線がなく、どうにでもできる感じなので完成度の点で疑問。

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