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ミステリの祭典

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探偵小説のためのエチュード「水剋火」
探偵小説シリーズ/全面改稿・改題文庫版『陰陽少女』

作家 古野まほろ
出版日2008年04月
平均点6.20点
書評数5人

No.5 6点 メルカトル
(2021/01/01 22:19登録)
私は人殺しだから―。過去の過ちのため帝都から逃げるように転校した水里あかね。彼女を待っていたのは、南国・実予の陽光と、謎めいた美少女・小諸るいかだった。周囲の温かい歓迎に心癒されたかに見えたあかねの目の前で、不可解な爆発&転落事故が。超絶推理で犯人を解明し、陰陽の力で事件に潜む怨霊の姿を暴き出す小諸。論理と因果と美を兼ね備えた最強の陰陽師探偵登場。
『BOOK』データベースより。

前半は青春小説で、事件らしい事件は起こりません。丁度半分まで来た後半やっと高校生落下事件がおこり、終盤ページ的に大丈夫かと思われましたが、これでもかと伏線を回収し事件を収束させます。読者への挑戦状的なものも搭載されています。まあ犯人はあからさまに近い形で読者の目の前に提示されており、誰にでも判ると思いますよ。動機に関しては?な感じですねえ。まあ探偵が陰陽師だからそれもアリかなってところですか。

それにしても、前半で語られた連続放火事件は何だったのでしょう。単なるアクセントですかね。
転校生の水里あかねは油断すると妄想に浸りがち、自意識過剰すぎだろうと思いますし、作者は隙を突いて自分の頭の良さや知識の豊富さを披瀝しようとするし、全く油断も隙も無いというのはこういうのを言うんでしょうね。小ネタの『どんぐりころころ』は水戸黄門の主題歌『ああ人生に涙あり』のメロディで歌える、完全にシンクロしているのは、ああそう言えばそんな噂を昔聞いたようなそうでもなかったような。後で歌ってみたら確かに完璧にシンクロしてましたよ。

No.4 6点 人並由真
(2020/01/08 18:39登録)
(ネタバレなし)
 2019年の改稿・改題文庫版で読了。
 2019年の完全な新作と思って手に取ったのだが、ところどころにまほろ先生らしさは感じるものの、物語全体の結構は妙にシンプルだな……と思ったら、奥付手前のページを見て11年前の旧作の改稿版と初めて気がつく。なんかいろいろ腑に落ちた。

 青春ドラマとオカルト風味の器の中で、密室(?)不可能犯罪の謎に接近。細かい伏線や手がかりを丹念に拾いながら真相を詰めていく作りは、普通に面白かった。ただ、状況から考えるとどうしても容疑者のキャラクターは絞られてしまうので、真犯人の意外性はあまりない。犯行動機は普通に考えればトンデモの部類だが、まほろ作品世界の中でなら一応は納得してしまう。というか作者も、この文芸は狙ってやったんだろうし。
 あと、被害者の(中略)に関するギミックはあまり意味がないという先の評者さんの見解にはまったく同感だけど、これもたぶん作者はそういうミステリの手法を導入しながら、単に(中略)ネタに持って行きたかったんでしょうねえ。

No.3 4点 abc1
(2010/03/04 14:57登録)
「土」もそうだったが、ラストのオカルト展開について行けない。パロディで笑わせようとしているらしいのだが、あまりにも説明不足。

No.2 7点 江守森江
(2009/05/31 11:43登録)
天帝シリーズの厚さと読みにくさ(前3作)で手を出すのを躊躇っている方に!
本格スピリット全開の“古野まほろ”入門編としてお薦め。
作者らしい世界観はそのままに、読者挑戦と論理的解決もバッチリ。
扉を開いてみませんか!
※天帝シリーズを読まずに、このシリーズから先でも問題ないです。

No.1 8点 猫こねこね
(2008/07/17 15:37登録)
表紙をライトノベル風にしていますが、実は天帝シリーズと世界設定を同じくしています。(アメリカに占領されなかった日本かな)
一回目、妄想の激しい主人公にニヤニヤしながら、自称美少女陰陽師のよくわからない言動に頭をかしげました。トリックはなかなか秀逸。
二回目、おおっ!自称美少女陰陽師=天帝シリーズのあの人か!作者やるな!

はまると抜け出せなくなる作品です。

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