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ミステリの祭典

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蝶たちの迷宮

作家 篠田秀幸
出版日1994年08月
平均点4.00点
書評数5人

No.5 6点 人並由真
(2025/04/26 06:35登録)
(ネタバレなし)
内容(「MARC」データベースより)
 密室状態の部屋から突然女の悲鳴が聞こえたが、女の姿はかき消え、香川京平の絞殺死体が発見された。その6週間前に、小説「蝶」を書いた池田賢一少年が不可解な死を遂げた。両者の関連は…。
                            ※

 1~2年前に最寄りのブックオフの100円棚で綺麗な状態の元版(講談社版)を見つけ、なんか凄そうだ、と購入しておいた一冊。今夜は気が向いて、これを手に取った。

 先に作者(あるいは編集者)が、表紙周りや巻頭のイントロで「読者が事件の被害者にして犯人」と明言するところから始まる、その手のタイプのメタ系技巧系ミステリである(さらにもうひとつかなりインパクトのある関係性を序盤から謳っているが、とりあえずそれはここでは書かない→なお本サイトの前の方のレビューではその辺も話題にしているが、作者自身が最初から言っている事なので、そのレビューもネタバレとは言えない)。
 作者が大きな影響を受けたらしい『虚無への供物』『匣の中の失楽』へのリスペクト感全開の作品である。
 
 し・か・し、本サイトでは悪評だらけ(Amazonでも似たようなもんだが)。
 さらに一番気になったのが、2010年の江守森江さんのご投稿を最後に、15年もの間、本サイトでは誰もレビューを寄せられてないこと。

 しかしソレは逆に言えば、きっとなんかそれだけ<かなりのワケアリの作品>なんだろうなと思って(言い変えれば、結構な変わったものが読めると期待して・笑)ページをめくり始める。

 でまあ、2段組み450ページの厚みの割と長めの一冊だけど、一晩でイッキ読みしてしまった。
 良くも悪くも『虚無への供物』が100%果汁のフルーツジュースなら、こちらは果汁30%のイミテーション・ジュース(©三原順のグレアム)という感じであった。

 ただまあ、作者なりの視座でミステリという文芸ジャンルに踏み込み、その上で読者をあの手この手で饗応させようとしている奮闘ぶりは決して嫌いではない。
 肝心の「読者が」「アレコレ」のロジックは確かにかなり強引で、特に最後の最後まで引っ張ったポイントは言いたいことがわからない! と怒っている方もいるようだが、たぶんそれはこういう物語は読者の方で(中略)と作者が考えているのだろうと思う。いささか舌ったらずだが、その辺をあまりグダグダ、イクスキューズしたくなかった作者のプライドはなんとなくよくわかる。
 そういう意味では、ぎりぎり屁理屈として課題のクリアともいえるかも……しれない……かな(笑)。

 評者の場合、正直『虚無への供物』は十代に読んだため凄かったことはなんとなく覚えているけど、それから再読もしてないし、少なくとも現状の現在ではどこがどう良かったと具体的&明快な言語化はできないのだが、それでもこの一冊は遠き日に読んだ名作の、あの何とも言えない気分をちょっとだけ思い起こさせてくれた。
 というわけで本作はそんなに嫌いになれないし、まあそれなりに愛せる作品だ。
 一冊のオマージュ編ミステリとして、これはアリだとは思う。

No.4 4点 江守森江
(2010/01/31 04:17登録)
クズミス・ダメミスを代表する作品、一部では既読作品中で最悪との評価まである。
怖いもの見たさで読んでみた。
読了しても全く納得いかず破綻している「読者が犯人」設定の為に、精神分裂治療の描写と第二部が存在するが無駄に長いだけで不要と断言できる。
上記の部分を省き、更に簡潔かつ普通なメタ&アンチミステリであれば、これ以降に書かれた作品に通じ、伏線や論理部分に見所もあり水準レベルな本格ミステリに仕上がっただろう。
作者のクズミス方向への情熱がほとばしり、読者をないがしろにしている作品で「よくぞ商業出版された」との変な驚きを感じた。
※要注意!!!
読むにあたって疲弊する事を覚悟して下さい。
但し「虚無への供物」を普通に読めたなら、心配無用。

No.3 4点 測量ボ-イ
(2009/05/04 11:07登録)
この作品も僕が読むには難易度が高すぎたという事なの
でしょうか?
「読者が犯人」という論理は結局のところ理解できませ
んでした。普通の読み物として評価すればもう1~2点
プラスなのですが。

No.2 2点 響の字
(2009/02/06 21:04登録)
・・・騙された(悪い意味で)

小説としての部分が冗長すぎる。1/3の分量ならよかったのに。

No.1 4点 abc1
(2008/12/23 13:02登録)
某書評サイトで「史上最低の愚作!」と書いてあったので、逆に興味を持って読んでみた。感想は、意外と普通に読めるじゃんということ。ただし「読者が犯人」の論理は破綻している。深水黎一郎の『ウルチモ・トルッコ』が出てしまった今、この破綻した論理では、到底自分が犯人だとは思えなかった。

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