騎士の盃 HM卿シリーズ |
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作家 | カーター・ディクスン |
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出版日 | 1960年01月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 4点 | レッドキング | |
(2021/07/22 22:09登録) ヘンリー・メリヴェール卿最後の事件。完全な密室内にあった莫大な宝飾的価値の盃。侵入者は何故にそれを「盗まなかったのか」のWhyダニット。密室トリックは、清張や東野が使ったら茶化したくなるレベルのシロモノだが、趣旨はあくまでもWhy。この作も明らかに短編向けのネタで、メリヴェール卿ドタバタ引延し劇は・・ちと息切れかな。 で、カーター・ディクスン全長編(カー除く)25作の採点修了したので、私的カーター・ディクスンベスト7(9) 第一位:「貴婦人として死す」 第二位:「孔雀の羽根」 同二位:「青銅ランプの呪」 第四位:「九人と死で十人だ」 第五位:「第三の銃弾」 第六位:「一角獣殺人事件」 第七位:「プレーグコートの殺人」 同七位:「弓弦城殺人事件」 同七位:「ユダの窓」 |
No.5 | 7点 | 雪 | |
(2018/11/12 01:25登録) 純金にダイヤ、ルビー、エメラルドをちりばめたブレイス子爵家の家宝「騎士の盃」。完全極まりない密室で張り番をしていた当主のトムが眠りから目覚めると、眼前のテーブルには金庫から取り出された盃が輝いていた・・・。 不可能犯罪にうんざりしていたマスターズ主任警部は、ロンドン警視庁に訪れたトムの妻ヴァージニアの懇願を退けようとしますが、副総監じきじきのお達しにより調査に踏み切らざるを得なくなります。近隣に隠棲していたヘンリー・メリヴェール卿に全てを押し付けようとするマスターズですが、先祖代々の居館であるクランリ・コートを訪れると、H・Mはイタリア人教師と歌の練習の真っ最中でした。 しかもなぜか館には事件の関係者が集まり始め、マスターズはその場の成り行きから現場のテルフォード館で二度目の不寝番をせざるを得なくなります。その晩彼は殴り倒され、床には再び金庫から持ち出された盃が転がるのでした。 いやひどいですね(誉め言葉)。H・Mの自宅訪問から関係者全員集合の時点で相当なものですが、その後の展開はファースというより乱痴気騒ぎ。ほとんどモンティ・パイソンの世界です。お下品でもあるので、顔を顰める本格ファンもいるでしょう。全体に点が辛めなのは多分そのせい。 しかし最後まで読むと、一連のおふざけの中に精緻に手掛かりが仕込まれているのが分かります。ほとんど職人芸の域。それでも高得点は付け難いのかな。この手の作品では最高レベルの伏線の張り具合だと思うんですけどね。 弁護しておくと本作は1954年発表。HM卿最後の事件ですが、彼の引退はフェル博士より遥かに早く、「ビロードの悪魔」「九つの答」といった、カー最長編クラスの発表年と重なります。「魔女が笑う夜」「赤い鎧戸のかげで」(これも長い)等と共に息抜きとして執筆された可能性が高い。つまり作者がまだ枯れてないわけです。 読者に提出された"なぜ犯人は密室に侵入しながら盃を盗まなかったのか?"という謎も魅力的。個人的にかなり好みの作品です。 追記:巻頭に掲げられた献辞をついでに記しておきます。 「娘のジュリアと夫のリチャードへ、でもおじいちゃんを忘れないでおくれ。」 読了するとこれがなかなかに来るものがあります。 |
No.4 | 5点 | nukkam | |
(2016/09/08 00:50登録) (ネタバレなしです) 1953年発表の本書はH・M卿シリーズ第22作で最後の作品でもあります。最後の作品といっても特にお別れを象徴するような演出はなく、お笑いやどたばたを混ぜながらしっかり謎解きもしているファルス本格派に仕上がっています。何者かが密室状態の部屋に入り込んでは家宝の「騎士の盃」を動かしているという犯罪ともいたずらとも特定しにくい行動の裏にある動機はなかなか見抜けにくいと思います。密室トリックは感心できませんが最後にH・M卿が犯人に与える「罰」がいかにもファルス(笑劇)ならではです。あと作中で「青銅ランプの呪」(1945年)のネタバレがありますのでそちらを未読の人は注意して下さい。 |
No.3 | 4点 | 了然和尚 | |
(2016/05/19 19:33登録) HM卿最後の作品です。全く最後っぽくないです。前作同様殺人事件のない笑劇で、少しオカルトや歴史的味がつい多分、冒険やスポーツ要素がなくなり、本格構成も苦しいものとなってます。 全体によく分からない作品でした。 |
No.2 | 4点 | kanamori | |
(2010/06/27 22:07登録) H・M卿ものの最後の長編ミステリ。 密室の中の<騎士の盃>をだれかが動かしている、というだけの短編ネタの謎で、マスターズ警部に任せて、H・M卿は歌の練習に専念というのも分かります(笑)。 |
No.1 | 6点 | Tetchy | |
(2008/09/11 20:21登録) これはもしかしたらカー版“日常の謎”ミステリ? 本作の狙いは非常によく解る。こういう趣向は非常に好きだ。 ただこの密室の謎は現代人では解らんぞ! それが非常に残念だ。 |