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ミステリの祭典

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天使の眠り

作家 岸田るり子
出版日2006年12月
平均点6.33点
書評数6人

No.6 5点 nukkam
(2018/11/01 21:43登録)
(ネタバレなしです) ジャンルミックス型の作品を書き続ける作者の2006年発表の第3長編は本格派推理小説とサスペンス小説の要素を持っています(よくある組み合わせではありますが)。第1章で第1の主人公が13年前に別れた恋人と再会します。しかし彼女は以前の彼女とどこか違っており、さりとて別人とも確信できず主人公が悩みます。続く第2章は第2の主人公の視点で描かれる物語となり、その後も奇数章と偶数章で主人公の交代が繰り返されます。彼女が本者なのか偽者なのかでうじうじ悩む第1の主人公の描写がくどいし、第2の主人公の物語はそれに輪をかけてミステリーらしさが希薄です。最後には2つの物語が巧く融合してパズルのピースが埋まるように謎が解かれるのですが、探偵役の推理でなく犯人の回想という形での説明のため、個人的にはサスペンス小説に分類します。

No.5 7点
(2014/06/04 10:28登録)
13年ぶりに再会した元恋人の一二三に対する宗一の態度は、どう考えても尋常ではありません。これが重要なのですが、軽く流していました。じつに大胆な大トリックが使われていました。

読みはじめでは女流作家の男性視点に違和感をもち、その後繰り返される視点転換で、もしや『殺戮にいたる病』風ミステリーなのかと疑い、でも書き振りからすれば、カトリーヌ・アルレーか小池真理子似のサスペンスではと感じていたのですが・・・。
じつはこういうミステリーだったんですね。
ミステリー的な伏線がたっぷりと、惜しげもなく開示されていたのですが、みごとに騙されてしまいました。
しかも終わり方がなかなか粋で、これも好印象。
ただ1点、あの人がちょっとかわいそうだなと思いました。本当はそれこそが上手いところなんですけどね。

はじめての作家さんなので、文庫裏の解説からどんなミステリーなのか、どんな作家なのか、いろいろと想像しましたが、なにもかもはずれていました。
結局、「天使」つながりの、夏樹静子の『天使が消えていく』みたいな読後感でした。

No.4 7点
(2012/11/30 21:55登録)
13年ぶりに再会した女が別人としか思えない、という本作の不思議さは、小説の文章表現だからこそ可能な微妙なもので、不自然という人もいるようですが、個人的には気になりませんでした。それに過去に起こった2つの殺人のアリバイが絡んできます。
さらにその女の娘の視点を取り入れているのも巧みで、読み終わった後で振り返ってみると、娘の視点部分が必要であった理由がよくわかります。一方、この娘が銀閣寺を散策するシーンなど純文学風とも思えるタッチで、驚かせてくれました。
本作では『出口のない部屋』や『ランボー・クラブ』のような変な物理的トリックは使われておらず、すっきりとまとまった出来になっています。ただ、殺人動機を生むきっかけになったある要求はいくらなんでも無茶で、まともな機関と思えないのが難点でしょうか。
真相が明かされた後の短い最終章のさわやかな余韻も魅力的です。

No.3 5点 E-BANKER
(2012/01/27 23:58登録)
2006年発表の長編第3作目。
女性ならではの視点が生かされた独特のミステリー。

~京都の医大に勤める秋沢宗一は、同僚の結婚披露宴で偶然13年前に別れた恋人・亜木帆一二三(ひふみ)に再開する。不思議なことに、彼女は未だ20代の若さと美貌を持つ別人となっていた。昔の激しい恋情が蘇った秋沢は、一二三の周辺を探るうちに驚くべき事実をつかむ。彼女の愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ。気鋭が放つ、サスペンス・ミステリー~

プロットは面白いが、無理やり感が漂う気がした。
例えるなら、最初に「入れ物」があって、そこに何とかして「中身」を押し込んだ・・・とでも言えばいいのだろうか。
謎の中心は、「一二三が本物かどうか」という点と、「過去のパートナー(夫)が殺されたのどうか」という2点に絞られる。
が、最初から如何にも怪しげな人物が、さも関係ありそうに登場しているので、途中でだいたいのカラクリには気付いてしまった。
文庫版あとがきで解説の千街氏が、本書について「心理トリックとストーリーの融合の見事さ」に触れてますが、確かに秋沢の視点と感情がうまい具合にミスリードを誘うように工夫されてるのが、作者のうまさだとは思う。

ただなぁ・・・動機はまぁいいとして、こんな犯罪そもそも思いつくか??
相当割に合わない犯罪のような気がしてならないし、この「連続殺人」は背景から考えても真犯人にとって危険性が高すぎるのでは?
この辺りが「入れ物」に無理やり詰め込んだような感覚、言い換えれば「プロットのためのプロット」のような気にさせられるのだ。
これがやっぱり気になった。

トータルの評価ではこんなもんかなぁー
(因みに、「致死性家族性不眠症」は実在する病気で、その原因は本当にプリオンのようです。)

No.2 6点 makomako
(2011/09/25 21:47登録)
 小説として読んでいると何となくだまされ結末も納得してしまうのだが。うーん、作者は女性だからこういったお話が成り立つの考えるのだろうが、男はもっと女性の肉体的なことはよく覚えているのでまずこうはならないと思いますが。
 それにしても主人公の秋沢はひどい取り扱いですね。若くてきれいな新しい恋人ができたから、昔の思い出なんかはめちゃくちゃにされてもまあよいだろうということなのでしょうかねえ。

No.1 8点 つよ
(2011/05/01 22:50登録)
心地よいラスト、騙されです。

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