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ミステリの祭典

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教会で死んだ男
ポアロほか、短編集

作家 アガサ・クリスティー
出版日1982年12月
平均点5.00点
書評数5人

No.5 4点 レッドキング
(2022/05/16 06:41登録)
アガサ・クリスティー第十二短編集。  なんか、既視感あるネタが目立ってきて・・
  「戦勝記念舞踏会事件」 入れ代りアリバイトリック。ピエロ・ピエレット・アルルカン・・分かりづらい。4点。
  「潜水艦の設計図」 また機密文書ネタ。卓上からの瞬時消失って、「信じがたい盗難」のまんまでなくね? 3点。
  「クラブのキング」 ブルジョア邸宅に闖入した王族の愛人ダンサー。彼女の恐喝男は撲殺されていて・・3点。
  「マーケットベイジングの謎」 これ、あの「密室自殺に見せかけた他殺・・に見せかけた・・」ネタのまんま・5点
  「二重のてがかり」 金庫からの宝石盗難事件。手掛かりが二つも揃うと・ワザとらしく・・ 2点。
  「呪われた相続人」 一族伝承の呪いに纏わる相続人連続死と怪事件・・ラスト一言の衝撃は・・イマイチ 4点。
  「コーンウォールの謎」 夫の自分への毒殺意志を疑う女・・これまた既視感あるネタで・・4点。
  「プリスマ行き急行列車」列車の座席下に押し込まれてた女の刺殺死体。まーた既視感溢れるトリックで・・5点。
  「料理人の失踪」 瀟洒な住宅街の使用人女シェフの失踪。「赤毛組合」にチョビッと「樽」をぶち込んで・・6点。
  「二重の罪」 おお、美術品売却でダブルに稼ぐって、んなクールでファンキーな手口あんのか・・5点。
  「スズメ蜂の巣」 大量殺人後の「犯人は初めから分ってた」名探偵セリフに反発したか、殺人予防ポワロ。3点。
  「洋裁店の人形」 ひんやりと ミステリアスだが ミステリでなく・・(採点対象外)
  「教会で死んだ男」 宝石の如きステンドグランスの下で死んだ脱獄者。秘められた救済譚エンドがグッド。5点。
で、全体平均して、(4+3+3+5+2+4+4+5+6+5+3+5)÷12=4.0833…、4点。

No.4 5点 弾十六
(2020/02/15 18:38登録)
早川オリジナル編集。1923年にSketch誌に連載された25篇のポアロシリーズのうち『ポアロ登場』に未収録の9篇と、1928年のポアロもの2篇、怪奇もの1篇、ミス・マープルもの1篇(1954)を収録。クリスティ文庫で読んでいますが、ポアロとヘイスティングズの会話は、同文庫の『スタイルズ荘』や『ゴルフ場』みたいにバカ丁寧であるべき、と思うので、会話の調子を訳し直して欲しいですね。
初出順に読んでゆく試み。カッコつき数字は単行本収録順です。英語タイトルは初出時を優先しました。

⑴戦勝記念舞踏会事件 The Grey Cells of M. Poirot I. The Affair at the Victory Ball(初出Sketch 1923-3-7): 評価5点
アガサさんの短篇として発行された初めてのもの。最初に8作完成させ、後に4作を追加したという。(初出誌には12週連続掲載) 後年、何度も使われるコメディア・デラルテのモチーフが初登場。映像的なイメージが良い。
p9 ロンドン市内のアパートでポアロと同居: ホームズとワトスンのような関係。
p10 戦勝記念舞踏会: Victory Ballは1918年11月にRoyal Albert Hallで開催されたのが始まりか。(実は同会場で1914年6月14日に米英戦争終結100周年を祝う仮装舞踏会が大成功しており、これをヒントにしたらしい) 戦傷者へのチャリティー目的で同様の企画があちこちで開かれたようだ。この話は春のことだが時期を問わず開催されていたのだろうか。
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TVドラマのスーシェ版(1992, 3期10話)ではラジオが活躍。コメディア・デラルテの服装が再現されてて良い。犯人がわかる決定打がちょっと違ってたけど、あまりアレを目立たせたくなかった、ということかな? Royal Albert HallのVictory Ballは11/11夜開催のようだが、このドラマでは11/10夜から開催のような描写。
(2020-2-15記載)

⑶クラブのキング The Grey Cells of M. Poirot III. The Adventure of the King of Clubs(初出Sketch 1923-3-21) 単行本タイトルThe King of Clubs: 評価5点
コントラクト・ブリッジのネタが少々。知らなくても問題なしですが、ルールが解るとなお話が理解出来ます。
p97 母と組んで、『切り札なしの1組』と宣言したとき(I was playing with my mother and had gone one no trump): 母とペアを組んでる、ということは母の席はテーブルの反対側。ダミーの手が開かれており、ビッドは終わっている状況なので「宣言」は判断を誤らせる翻訳の間違い。(ここを読んで明らかにこの証言は嘘だと判断してしまいました) 試訳「私の『切り札なしの1組』でゲームが進んでいたとき」
p98 目鼻だちや肌の色が似ている(in actual features and colouring they were not unalike): 髪と目の色のことでしょうね。dark同様、何故、肌の色だと誤解するのか?(黒人が社会進出をはじめた頃は、確かに容貌のcolorはまず第一に肌の色だった。それが強い印象として結びついているのかも)
p104 スペードの3組(made a mistake in going one no trump. She should have gone three spades): スペードを切り札にすれば、3+6=9トリック勝てる手のはずだが… ということ。(この箇所は「宣言」でも問題なし。ここに引っ張られてp97の訳語となったのか)
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TVドラマのスーシェ版(1990, 1期9話)でもブリッジを小道具にしています。手札は全部裏返しになっており、ビッド中だったという設定。隣の家、というので間近に思ってたらかなり距離があり、日本のイメージで読んでいたと気づきました。
(2020-2-16記載)

⑻プリマス行き急行列車 The Grey Cells of M. Poirot V. The Mystery of the Plymouth Express(初出Sketch 1923-4-4) 単行本タイトルThe Plymouth Express: 評価5点
長篇『青列車』(1928)の素らしい。アガサさんは列車好きです。この事件は『ゴルフ場』(初出1922年12月号から連載)に引用されてるので、書いたのは結構早かったのでは?ジャップとの関係などの描き方もそんな感じ。
あまり好きな感じの犯人像ではないのですが、上手な構成の話。工夫して一生懸命書いています。
p238 十万ドル(a hundred thousand dollars): 米国消費者物価指数基準1923/2020(15.09倍)で1億6千万円。
p240 通廊つき(a corridor one): 各コンパートメントがそれぞれ独立していて行き来するには一旦地面に降りる客車と、各コンパートメントが通路で繋がっていて列車進行中でも行き来出来る客車の二種類があった。通廊つきは後者。
p245 鋼青色とかいう色に近いもの(the shade of blue they call electric): electric blueは落雷、電気火花、イオン化アルゴンガスのイメージで1890年代に流行。sRGB(44, 117, 255) (以上wikiより) steel blueは空色でくすんだ感じだが、electric blueは明るい空色。企業ロゴで言えばLAWSONの看板の水色。(Webでelectric blue dressを検索するとANAのロゴみたいな濃い青色が主流… ファッション用語なら濃い青の方なのかも)
p253 三ペンスつかって、リッツ・ホテルに電話(expend threepence in ringing up the Ritz): 英国消費者物価指数基準1923/2020(60.87倍)で110円。公衆電話料金でしょうか。当時の電話は交換手を必ず通す仕組み。当時の3ペンス貨はジョージ5世の肖像で1920年以降は純銀から.500 Silverに変更、重さ1.4g 直径16mmは変わらず。
p256 半クラウン: 上述の換算で1080円。新聞売り子への法外なチップ。当時の半クラウン硬貨はジョージ五世の肖像で1920年以降は純銀から.500 Silverに変更、重さ14.1g 直径32mm。重くてデカいので印象抜群ですね。(2020-3-11追記)
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TVドラマのスーシェ版(1991, 3期4話)では服の色は空色。列車が出てくる映像は大好きです。鉄道ミステリ傑作選の映像版があったら良いですね。
(2020-2-16記載)

⑷マーケット・ベイジングの怪事件 The Grey Cells of M. Poirot, Series II IV. The Market Basing Mystery(初出Sketch 1923-10-17): 評価5点
密室の謎… は残念ながら単純に解明されちゃいます。後のポアロものの中篇「厩舎街の殺人」Murder in the Mews(1936)と設定が似てるらしい。
p119 植物好き(an ardent botanist): ジャップの趣味として紹介されてるが、ここだけか。
p121 ウサギの顔は可憐だが(That rabbit has a pleasant face,/ His private life is a disgrace./ I really could not tell to you/ The awful things that rabbits do): ヘイスティングスが口ずさんだ唄。作者不明の詩らしい。原文quoteなのでオリジナルではない。調べつかず。
p133 水兵はハンカチを袖にいれる(A sailor carries his handkerchief in his sleeve): Webにワトスン(グラナダTV版)が袖からハンカチを見事に取り出す画像がありました。
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TVドラマのスーシェ版は無し。
(2020-2-29記載)

⑵潜水艦の設計図 The Grey Cells of M. Poirot, Series II VII. The Submarine Plans(初出Sketch 1923-11-7): 評価5点
軍事機密の設計図もの。状況が面白いが中途半端な感じ。後に「謎の盗難事件」(The Incredible Theft 1937)として改作。
p45 官庁の公文書送達係(special messenger): 訳文のような意味があるのか調べつかず。郵便局の電報配達少年の「特別版」(至急便など)のような気がするが…
p46 デイビッド・マカダム現首相(David MacAdam):「首相誘拐事件」(Grey Cellシリーズ1第8話)に登場。
p46 大型のロールスロイス(A big Rolls-Royce car): Silver Ghostかな。
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TVドラマのスーシェ版は無し。
(2020-3-5記載)

⑼料理人の失踪 The Grey Cells of M. Poirot, Series II VIII. The Adventure of the Clapham Cook(初出Sketch 1923-11-14): 評価4点
作りものすぎて筋が通っていない。夫人のキャラだけが目立っている。The man on the Clapham omnibus(普通の男の典型例)という言葉があるようにクラパムには普通感が漂うようだ。(メイドとコックがいる家庭は今では普通とは思えないですね)
p270 くだらない失業手当(wicked dole): National Insurance Act 1911で失業手当が初導入された。最高額は週7シリング(=3023円、月額13098円)だった。
p270 マーガリン: 19世紀末の発明。
p285 相談料1ギニー: 9068円。普通っぽい謝礼金額。
(2020-3-7記載)
TVドラマのスーシェ版(1990, 1期1話)は実に納得のゆく話になっています。原作もそういう意図だったのかも。(ポイントは、当座の間だけ誤魔化せば良いと犯人が考えてたのが明白かどうか) 銀行のシーンで客(ポアロ)がティッカー・テープを読んでるシーンがチラッと映るのだが、株式市場の最新情報を提供するサービスなのかな?
(2020-3-20記載)

⑺コーンウォールの毒殺事件 The Grey Cells of M. Poirot, Series II X. The Cornish Mystery(初出Sketch 1923-11-28): 評価6点
アガサ的ミステリ世界がコンパクトにまとまってる印象。典型例として使えそう。
p197 管理人のおばさん(our landlady): この連作の“ハドスン夫人”なんだけど、いつも客の到来を告げるだけの役目でキャラづけ無し。ポアロたちの部屋は二階にあるので一階の管理人が来客を迎え、店子に到着を知らせる仕組みのようだ。名前(Mrs. Murchison)が出てくるのは1923年発表の25篇中では一回だけ。(『西洋の星』)
p204 年に五十ポンド: 43万円。若い娘の収入。
p211 安っぽいイギリス製のベッド(the cheap English bed): ポアロが感じる田舎の宿の恐怖。
p212 肌の浅黒い長身の青年(a tall, dark young man):「黒髪の」
p212 コーンウォール地方特有のタイプ(the old Cornish type): dark hair and eyes and rosy cheeksと表現。詳細はCornish people(wiki)参照。ローマ侵攻前のブリトン人(ケルト系)の末裔らしい。
(2020-3-11記載)
TVドラマのスーシェ版(1990, 2期4話)はかなり原作に忠実。サンドウィッチが美味しそう。『易経』をミス・レモンとヘイスティングズが試してるシーンあり。(有名な英訳は1882年James Legge訳のようだが、ドラマで使ってる本は違うようだ)
(2020-3-22記載)

⑸二重の手がかり The Grey Cells of M. Poirot, Series II XI. The Double Clue(初出Sketch 1923-12-5): 評価5点
この知識、英国人には一般的ではなかったのかな?(似たようなネタがアガサ作品のどこかで使われてた記憶あり) Vera Rossakoff伯爵夫人はこの作品が初登場。
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TVドラマのスーシェ版(1992, 3期7話)は未見。見終わったら追記します。
(2020-3-13記載)

⑹呪われた相続人 The Le Mesurier Inheritance (初出The Magpie1923年Christmas号) 単行本タイトルThe Lemesurier Inheritance: 評価4点
Magpieは1923-1924の夏と冬に4号だけ発行されたSketch誌の特別増刊号、2シリング96ページ。
語りのテクニックが稚拙だが、陰影のあるラストがアガサさんらしい感じ。
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TVドラマのスーシェ版は無し。
(2020-3-22記載)

(10)二重の罪 Double Sin (初出 週刊紙Sunday Dispatch 1928-9-23)

(11)スズメ蜂の巣 Wasps' Nest (初出Daily Mail 1928-11-20)

(12)洋裁店の人形 The Dressmaker's Doll (初出[Canada]Star Weekly 1958-10-25、トロント・スター紙の週刊版)
怪奇もの。

(13)教会で死んだ男 Sanctuary (初出This Week 1954-9-12〜9-19, 2回連載, 挿絵Robert Fawcett、連載タイトルMurder at the Vicarage)
ミス・マープルもの。

No.3 4点 クリスティ再読
(2016/10/10 21:14登録)
本短編集はハヤカワの独自編集のようだ。要するにクリスティ、何回も重複ありでアメリカでイギリスで短編集を出しているから、コンパイルの基準になるようなやり方がないみたいだ。だから本短編集は他の短編集から漏れたものをまとめたような感じのものだが...まあ所収の短編のほとんどは、創元だと「ポアロの事件簿2」に入ってるものなので、読んだ感じ「ポアロの事件簿1=ポアロ登場」の続編みたいな感じである。
実際収録のポアロ物は20年代のものばかりなので、「ポアロ登場」の続編で問題ない。出来も似たり寄ったり。ただ、後半「二重の罪」から少し面白くなる。「スズメ蜂の巣」はポアロにしては珍しく人情ものっぽい味がある。でファンジーか怪談か微妙な「洋裁店の人形」とかわりと面白い。まあ最後のマープルもの「教会で死んだ男」は腰砕けの失敗作だろうな。だからトータルの出来は「ポアロ登場」より少し面白いけど...というくらい。

No.2 7点 あびびび
(2011/08/15 17:05登録)
全体的にバラエティに富んでおり、楽しく読めた。どれも長編までは膨らまないが、ニヤリとさせられる佳作ぞろい。

中でも「スズメ蜂の巣」は、なにげない生活の中から殺人事件の前兆を読み取り、それを阻止すべく行動に移るポアロの自信に満ちた行動。自慢のひげがぴくぴく動いている様が思い出された。

No.1 5点
(2011/03/23 23:07登録)
全13編中11編は、以前創元版の『ポワロの事件簿2』『クリスティ短編全集4(砂に書かれた三角形)』で読んだことのあるポアロものです。『戦勝記念舞踏会事件』『プリマス行き急行列車』等は、トリック自体は鮮やかで悪くないのですが、犯人がそのような方法を使うメリットがあまりないのが不満な作品です。なお『プリマス~』のトリックは後にメリット面を改善して長編に仕立て直されています。『クラブのキング』(ちょっといんちきな感じもしますが)、『スズメ蜂の巣』(殺人阻止というのが珍しい)はどちらもなかなかいい話。しかし『マーケット・べイジングの怪事件』が最もよくできていると思います。これはトリックはそのままで小説としてのふくらみを持たせ、中編『厩舎街の殺人』として書き直されています。
怪奇ものの『洋裁店の人形』はまあまあですが、最後のミス・マープル登場の表題作『教会で死んだ男』は、原題にもなっているダイイング・メッセージが結局ほとんど意味不明ですし、トリック的にもどうも冴えません。

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