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ミステリの祭典

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ヴァンパイアの塔
カー短編全集6

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1998年01月
平均点4.60点
書評数5人

No.5 6点 レッドキング
(2022/04/27 20:49登録)
ジョン・ディクスン・カー第六短編集。 ラジオドラマ台本9作+短編1作。
  「暗黒の一瞬」 降霊会の手出し不可能状態での霊媒刺殺事件トリック。6点。
  「悪魔の使徒」 そこで寝た人間は原因不明の死を遂げる古塔。事件の真相と恐怖エンド。6点。
  「プールのなかの竜」 2年前の凶器消失事件の解明と、犯人処刑トリック・・痛え!・・6点
  「死者の眠りは浅い」切断された電話から掛ける幽霊への通話。「あたし、今、あまり綺麗じゃないの・・」7点。
  「死の四方位」 短編「銀色のカーテン」のシナリオ化。7点。
  「ヴァンパイアの塔」 長編「五つの箱の死」と同じ毒殺トリック・・からの・・6点。
  「悪魔の原稿」 「僕の(ホラー)原稿はキミを殺せる」・・作家の挑発と、それに乗る男。3点。
  「白虎の通路」 新切り裂き魔の正体の手懸りは"M・D"・・該当者は数名・・2点。
  「亡者の家」 屋敷内を移動して元の部屋に戻ったら、外の街が消え、森になっていた・・5点。
  「刑事の休日」 宝石強盗の男女が、それぞれ衆視の中で消失し・・クリスマスちょびっとイイ話エンドへ。8点。

No.4 5点 弾十六
(2019/07/20 08:59登録)
JDC/CDファン評価★★★☆☆
ダグラス G. グリーン編のラジオドラマ集(The Dead Sleep Lightly 1983)に日本版ボーナス短篇「刑事の休日」をプラス。伝説のエッセイ「新カー問答」(松田 道弘 1979)も収録。私もリアルタイムでこれを読んですっかりカー熱に取り憑かれたものです。
さて収録されたラジオドラマなのですが、無駄に複雑化せず、わかりやすい筋になってるのが良いところ。単純すぎて物足りない感じですが、ラジオドラマならこのくらいじゃないと胃もたれします。JDC/CDは強烈なシチュエーションにしか興味がない人なので、実は漫画や映画がベストマッチではないか、と妄想。荒木飛呂彦先生、描いてくれないかな… (文字だけだと「ナニコレ」ってなるトリックも映像化すると案外効果的では?)
以下、初放送日は『カー短編全集5』の著作リストで確認。(なぜかDragon in the Poolが抜けてたのでWikiで補足) 原文は入手出来ませんでした。

(1)The Black Minute (BBC 1941-10-18) 高見 浩 訳: 評価6点
フェル博士もの。不気味な降霊術は映画『恐怖省』(1944)を思い出しました。舞台は1940年のロンドン。『ユーモレスク』を奏でるヴァイオリン。悪魔の仮面をつけた、日本のサムライの鎧。(ほお当てのことか?) 警察に通報する電話番号は999。

(2)The Devil's Saint (CBS Suspense 1943-1-19) 大村 美根子 訳: 評価6点
ピーターローレ主演のラジオドラマはWeb公開あり。ネタはアレかな?と思ったら違いました。舞台は1927年、聖カタリナの日(Saint Catherine's Day 11月25日)、オペラ座。曲は「死の舞踏」のなかのテンポが遅いワルツが登場。(2019-7-25修正)

(3)The Dragon in the Pool (BBC Appointment with Fear 1944-2-3) 大村 美根子 訳: 評価6点
この味はJDC/CD風味。無理筋なのもいかにもJDC。

(4)The Dead Sleep Lightly (原型CBS Suspense 1943-3-30、改訂版[こちらを翻訳]BBC 1943-8-28) 大村 美根子 訳: 評価6点
フェル博士もの。雨のなか、ふと思い出すところが良い感じなんですが… 舞台は1933年のロンドン。p169の引用“その身を引き裂く/魔女や飢えた悪鬼ども(以下略)”はJDC最後の長篇(1972)の元ネタなんでしょうね。調べつかず。

(5)Death Has Four Faces (BBC Appointment with Fear 1944-10-19) 大村 美根子 訳: 評価6点
編者によるとカー短編集1収録の「銀色のカーテン」(1939)の変奏というが、私は未読。舞台は1930年代のフランス北東岸の町バンドレット。(架空地名?) 作者若き日のフランスの思い出なんでしょうね。雰囲気良し。「ぼくのブロンド娘のかたわらで」(Aupres de ma blonde)は17-18世紀に流行したフランスの歌。

(6)Vampire Tower (BBC Appointment with Fear 1944-5-18) 大村 美根子 訳: 評価6点
JDCの盛り上げ技が光ります。舞台はケント州、1930年代。慈善バザーも映画『恐怖省』の一場面のような感じ。銃は「ウィンチェスター61。22口径で撃鉄は内臓式」が登場。ポンプアクションのライフルWinchester Model 61, Hammerless Slide-Action Repeater(1932-1963)ですね。銃身24インチで全長104cm、重さ2.5kg。撃鉄内蔵だとハンマーが狙撃視線を邪魔しないので、連射時でも狙いを保持しやすい感じ。

(7)The Devil's Manuscript (BBC Appointment with Fear 1944-10-12) 大村 美根子 訳: 評価5点
舞台は1934年、英国の浜辺の町ウェイフォード。(架空地名?) バンドの演奏する「海辺へ行きたい」は英国海岸の定番曲 I do like to be beside the seaside(1907)のことか。雑誌の値段1シリングは英国消費者物価基準(1934/2019)で70.98倍、現在価値478円。当時のStrand誌が1シリングです。編者によるとビアスの短篇の翻案、元ネタは読んでません。なんだか変なねじれ感。

(8)White Tiger Passage (BBC Appointment with Fear 1955-8-2) 大村 美根子 訳: 評価5点
舞台は1954年のブライトン。JDC風味のギャグっぽい話。ミステリ味は薄口。「頰ひげウィリー」のイメージがいまいち分からず。5ポンドは英国消費者物価指数基準(1954/2019)で27.15倍、現在価値18279円。

(9)The Villa of the Damned (BBC Appointment with Fear 1955-8-30) 大村 美根子 訳: 評価4点
怪奇風味の盛り上げは良いんですが… あっさり味です。必ず定刻どおりのドゥーチェの列車がちょっと興味深い。

(10)Detective’s Day Off (初出Weekend 1957-12-25/29) 深町 真理子 訳: 評価5点
不可能犯罪っぽい話があっけなくスカされるのはJDCの特徴ですね。初出誌Weekendはデイリーミラーの土日版?クリスマスなので歌は『神には栄光、地には平和』、『きよしこの夜』

No.3 5点 nukkam
(2016/08/02 06:26登録)
(ネタバレなしです) カー(1906-1977)の死後にダグラス・G・グリーンによって編集された1983年発表のラジオ・ドラマ脚本集で、降霊会の参加者が互いの手を握り合っている際中の殺人事件をフェル博士が謎解く「暗黒の一瞬」、郊外の住宅街が丸ごと消えてしまった「亡者の家」など1940年代から1950年代にかけて書かれた9編の脚本が収められています。創元推理文庫版には独自ボーナスとして短編小説「刑事の休日」が追加されていますが、どうせならラジオ脚本だった方が統一感があってよかったような気がします。謎解き自体は平凡だったり小説からのアイデア再利用もありますがラジオを意識してか高い演出効果を狙ったようなところがあります。特に「悪魔の使途」と「プールのなかの竜」は結構怖い結末で、小さいお子さまにはちょっとお勧めできないな(笑)。謎解きとして面白かったのは「暗黒の一瞬」で、トリックは専門的知識が使われていて感心しませんが謎解き伏線の張り方が巧妙です。

No.2 4点 kanamori
(2010/07/01 23:00登録)
カー短編全集の最終第6弾。
ラジオドラマ作品集が中心の収録で、出来がいいとは言い難いです。表題作は、おそらく「死が二人を別つまで」の原型ではないかと思います。

No.1 3点 Tetchy
(2009/01/01 22:55登録)
ラジオ・ドラマの脚本を集めた異色短編集。
従って地の文が無く、登場人物同士の会話だけで成り立っているため、読み易く、テンポも良い。

が、しかしもはやそれまで。
各々のプロットは興趣をそそるものではなかった。結論するに、全く以って本書はカーマニアのコレクターズ・アイテムに過ぎない。

『赤後家の殺人』や『死が二人をわかつまで』の原形と思われる作品や別の短編で使われたトリックが散見したのもマイナス要因。

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