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ミステリの祭典

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撮ってはいけない家

作家 矢樹純
出版日2024年11月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 人並由真
(2025/07/17 10:39登録)
(ネタバレなし)
 読了後、本サイトに登録してあったはずの本作を検索しようとして「ない家」の三文字でサーチしたら、この作品とスターリングの『ドアのない家』、ビガーズの『鍵のない家』の三冊が検索結果に並んだ。
 うむ、三作とも読んでるのは、現状の本サイトで私ひとりだな。エッヘン。
(実にどーでもいいが。)

 矢樹作品はこの10年少しは読んでるつもりだが、ホラーというのは初めて。とはいえミステリ要素は多いんだろうな? と思いながら読む。いや、このサイトで評判いいので。本書の刊行はここで初めて知った。

 意外だったのは、なかなか(中略)というイベントが起きないことで、それでもゾクゾク感はそれなりにある。
 ただし(これはメルカトルさんのご感慨と同じと思うが)

 怖い < サスペンスフルで面白い

 の興味の方が上回る感じ。それでも冷静に考えれば結構、コワイ場面はあるんだけどね、それ以上にストーリーテリングの妙の方が強烈でどんどんページをめくりたくなる。

 途中の謎(某キャラの死にからんだ)はさすがに予想がついたが、そのあとの話の作りと、次第に露見してくる秘められたキャラの配置はなかなか絶妙。この人らしいといえばいえるんだけど、それでもこの作者の著作のなかでもかなり上位にくる仕上がりじゃないだろうか(まー、まだ未読のものも多いが・汗)。

 で、クライマックスは意外なノリでそっちの方向に行くみたいなので、え、これってもしかしたら……? と予期したが、最終的に(中略)。まあこれくらいの方がまとまりはいいかもね。

 いい意味で優等生的なホラーミステリの秀作だと思う。

No.3 5点 たかだい
(2025/06/09 10:51登録)
オカルティックな恐怖を主体としつつ、ミステリー小説のような側面も併せ持った新機軸のホラーといった印象
決まった年齢に達すると児童が謎の死を遂げるという真偽不明の曰くがある家系に隠された悍ましい闇であったり、横になっている自分が周囲の人々に喰われたりする不気味な夢を時折見る少年、そこに過去の事件も関係して一つの終焉へと収束していく様は面白かったです
ただ、個人的に少々文章が読みにくいと感じた点や、当初期待したいかにもなホラー小説とも少々毛色が違った部分が読んでいて気になりました
読了した感想としては面白かったのですが、普段の読書ペースから言えばなんか読み進まないと言いますか、中盤以降から終盤に掛けて盛り返してくるタイプのスロースターターな作品だったように思います

No.2 7点 メルカトル
(2025/05/07 22:16登録)
「その旧家の男子は皆、十二歳で命を落とす――」映像制作会社でディレクターとして働く杉田佑季は、プロデューサーの小隈好生から、モキュメンタリーホラーのプロットを託される。「家にまつわる呪い」のロケのため山梨の旧家で撮影を進める中、同僚で怪談好きのAD・阿南は、今回のフィクションの企画と現実の出来事とのおかしな共通点に気付いていく。そして現場でも子どもの失踪事件が起こり……。日本推理作家協会賞短編部門受賞『夫の骨』著者の最新作!
Amazon内容紹介より。

正にノンストップホラーの見本の様な作品。最初から最後まで非常に良く練られ、サプライズもあったりして細部まで神経が行き届いた好篇に仕上がっています。序盤から謎の連続で、これら全てをどう回収するのか不安になる位、何もかもが謎めいています。徐々に不可思議な現象が解き解されていく様は、読んでいて爽快感すら覚えました。ホラーとしてはほとんど怖さはないので、そこはちょっと物足りないかなとは思いましたが、それは贅沢というものでしょうね。

流石にミステリ作家だけあって伏線の回収は見事の一言。一つひとつの怪異や事件が混然一体となって読む者を圧倒します。物語は変遷しながらも予期せぬ方向へ向かって進み、意外な真相の絵図を描きます。一瞬の予断も許さないホラーの秀作です。

No.1 8点 虫暮部
(2025/02/19 12:31登録)
 作者の筆力が十全に発揮されたホラー・ミステリ。新機軸に挑んだ為に想定外のポテンシャルが活性化したのか?
 伏線はそれなりに拾った心算だったが、それを超えて張り巡らされた蜘蛛の糸に翻弄された。オカルティックなのに合理的な語り口が怖さを増幅する。解決編で怒涛の情報量に溺れかけたので、そのへんもう少し余裕を持って整理されていたら、とは思う。

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