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ミステリの祭典

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心地よく秘密めいた場所
エラリイ・クイーン

作家 エラリイ・クイーン
出版日1974年01月
平均点4.60点
書評数5人

No.5 5点 虫暮部
(2021/02/27 13:48登録)
 バージニアの日記の自意識過剰気味な書きっぷりは面白い。
 余計なこと考えずに動機“キューイ・ボーノ”を追及すれば、警察はすんなり犯人に辿り着けたんじゃない?

No.4 5点 レッドキング
(2021/01/10 23:14登録)
エラリイ・クイーン最後のミステリ。見どころは二点。
一、殴打跡の証拠とニセ証拠を巡る左右のロジック。
二、犯人による探偵の操り。「葉を隠すには林の中」、犯行目的の象徴Xを隠すためには、多くの象徴Xを拵えてそこに紛らわせてしまえば良い。林を与えられれば、葉を探し出す衝動に駆られる探偵本能を操り、容疑者Aを指示させようとする真犯人。
元題、A fine and private place、「大変にプライベイトな場所」とでも訳すのかな。
で、クイーン全長編39作の採点修了したので、「大変にぷらいべいと」な我がクイーン長編ベスト10(11)

  第一位:「シャム 双生児の秘密」
  第二位:「Xの悲劇」
  第三位:「十日間の不思議」
  第四位:「Yの悲劇」
  第五位:「エジプト十字架の秘密」
  第六位:「ギリシャ棺の秘密」
  第七位:「フォックス家の殺人 」
  第八位:「ドルリイ・レーン最後の事件」
  第九位:「日本庭園の秘密」
  第十位:「災厄の町」
  同十位:「九尾の猫」

No.3 4点 クリスティ再読
(2017/06/25 22:40登録)
クイーン最終作品なのだが...何か読んでいて極めてよそよそしい。あれ、どうしたんだろう?と気になる小説だ。この事件にエラリイが引きずり込まれることになる父親との問答も、何か異化演劇風で「これはすべて架空のことなのだ!」と示そうとしているかのようだ。
最終的な被害者となる億万長者も何かそらぞらしいキャラだし、そのオブセッションである「9」でさえ、最終的にすべて意図的な「レッド・へリング」であることが示される....舞台装置の裏側はベニヤ板でしかないのだ。欺瞞に包囲されたエラリイは、9の象徴の飽和攻撃に押しつぶされるかのような惨めな失敗をする。後期エラリイはたびだび推理に失敗するのだが、その中でもおよそキャリアで最低のカッコ悪さでだ。作者クイーンがパズラーというもの、ミステリというものに、疑いを持ってしまったかのように。
本作はおそらく「最後の一撃」の書き直しみたいな面を持つのだろう。作者が設定する「謎」というもののこれ見よがしで不自然な部分だけが肥大し、探偵は解釈の多重性の中で途方に暮れるしかない。謎だけがそこにあって、真相は仮のものでしかないのかもしれない。もうちょっとズレたら、本作は前衛ミステリになるのかもしれないけど、そこまでの意義は残念ながら認めがたい。ヒロインの次のセリフは、エラリイへの慰謝か、それともクイーンのかなわぬ約束だったのか。

あなたはきっと、そのうちにほんとうの答えを考え出しなさるわ。

No.2 3点
(2014/01/07 22:25登録)
マンフレッド・リーの死去によって結局クイーン最後の長編となった本作、構成は凝っていますし、最初のうちは、左右の問題とそれに対する解答など、なかなかおもしろく読ませてくれます。
ところが、最初の殺人事件が疑念を残したまま「一応」片付いた後、しばらくして第2の殺人が起こってからが、どうにも冴えません。パターン的には『最後の一撃』と似た、ミッシング・リンク的な謎なのですが、それほどと思えなかった『最後の一撃』と比べても、謎そのものに魅力がありませんし、その解決にも説得力がないのです。元々登場人物が少なすぎて、犯人には『真鍮の家』『最後の女』のようなそれなりの意外性もありませんし、かといって犯行計画もそんなに巧妙と思えません。そんなたいしたことのない計略にひっかかるエラリーの論理ミスも、ちょっといただけないものです。
どうも残念な出来の最終作でした。

No.1 6点 Tetchy
(2013/03/03 19:58登録)
クイーン最後の長編。
その最後の作品は殺意の芽生えから殺人に至るまでを女性の妊娠に擬えている。最後の長編でありながら、新たな生命の誕生に章立てが成されているとは云いようのない歪みを感じる。

後期及び最後期のクイーンの作品では、あるテーマに基づいた奇妙な符合を見出して事件の異様さを引き立てる構成が多く採られているが、クイーン最後の長編の本書では、インポーチュナ産業コングロマリットの創始者である、物語の中心人物ニーノ・インポーチュナの人生そして彼の殺害事件後に届く奇妙なメッセージに全て数字の9を絡めているのだ。その絡め方はそれまでのクイーン作品の趣向以上の情報量の多さを誇る。特に171ページ以降は9に纏わる逸話やエピソードのオンパレードである。
そしてまた9は一桁の最後の数字でもある。すなわち本書がシリーズ最後の作品であることを暗に仄めかしていると考えるのは果たして穿ちすぎだろうか?

そして最後の作品のトリックとして用いられたのはなんとそれまで刊行されたクイーン自身の作品群!
まさかこのために作者=探偵という設定を用いたわけではないだろうが、このような着想を考え付くこと自体、恐ろしい。

だからこそ最後の真犯人の登場が唐突過ぎて非常にもったいない。
最後の作品もロジックで終始し、犯人逮捕の決め手となる証拠が欠けている。やはりクイーンは最後までロジックに淫した本格ミステリ作家だったのだ。

しかしタイトルの意味は果たして何を指すのか?最後に登場する真犯人が大金をせしめて優雅に暮らそうとした場所だったのか?それともバージニアとピーターが誰彼憚ることなく2人きりでいられる場所のことだろうか?もしくは作者クイーンが本書を脱稿した際に思い至った境地を指すのか?

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