ラグナロク洞「あかずの扉」研究会影郎沼へ あかずの扉研究会シリーズ |
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作家 | 霧舎巧 |
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出版日 | 2000年11月 |
平均点 | 5.40点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 7点 | 人並由真 | |
(2020/12/02 16:58登録) (ネタバレなし) 竹取島と月島で起きた不可解な殺人事件から二カ月。「ぼく」こと二本松翔(カケル)をふくむ北澤大学のミステリーファンサークル<「開かずの扉」研究会>は、またしても怪異な事件に遭遇した。舞台は、中央アルプスの一角にある影郎沼。隠れ里の伝承が残るその地には、天然の洞窟に手を加えた特殊な設計のホテルが建造されていたが、翔とサークルの先輩メンバーで「名探偵」こと鳴海雄一郎は、嵐の夜にそこに土地の者たちとともに閉じ込められる。やがて不可解な密室殺人が発生するが、それはこの事件に秘められたおびただしい謎のほんの一端でしかなかった。 シリーズ第三弾。メインキャラを絞って開幕し、あとから残りのレギュラーが応援に現れるというちょっと変則パターンの構成。 作者自身が例によって今回も、三題噺での新本格パズラーだと豪語。三つのネタとは「嵐の山荘もの」「ダイイング・メッセージもの」「ミッシング・リンクもの」の取り揃えである。 圧巻は、前半で早々と鳴海が講釈を垂れる「ダイイング・メッセージ講義」だが、このテーマに関して独特の見識(というか、評者自身などもあまり意識しなかったことで「言われてみれば……」な視点)などを聞かせてもらって面白かった。まあ確かに、ダイイング・メッセージってそもそも(中略)。 かわって後半の謎解きのハシラとなったのがミッシング・リンクという主題の方だが、これは新本格でよくありがちな、しかしそれでもツボを抑えた舞台装置と融合して実に好み。論理というより思いつきの羅列という気がしないでもないが、これだけ楽しければ首肯してしまいたい。 犯人に関しては、物語の流れやこの本の仕様(評者はノベルス版で読了)からある程度、読めるところもあるが、いつものように手数の多い仕掛けで事件の全貌をあらかじめ見通すことはまずムリ。 伏線はちょっとチョンボ手前、というのも一つだけあるけれど、作者がこれをやりたかった気分はよっくわかるので、まあいいか。 重厚感と犯人の意外性からいえば前作『カレイドスコープ』の方が上なんだけれど、手技の多さをスムーズに捌いた作品づくりの練度ではこっちの方が上かも。ちょっと京極堂シリーズの『魍魎』と『狂骨』の関係に似てなくもない。 シリーズが短期で終わったのは仕方がないよな。そうそう量産のきく路線ではないと実感する。 |
No.4 | 5点 | sm556s | |
(2018/07/31 22:55登録) まずは、本格推理小説にふさわしい舞台設定や雰囲気づくりに敬意を表したいと思います。筆者の本格推理に対する思い入れの深さがひしひしと伝わってきます。ただ、読んでいて、独りよがりなストーリー展開が多くて、筆者の思いと読者の温度が一致しない部分が多いような気がします。それと、驚きが少ない気がします。本作品とは直接関係はないのですが、例えば、3つの殺人事件で、最初に事件の時に現場にいたのがAとB、次の事件に現場にいたのが、BとC、最後の事件で現場にいたのが、BとD、したがって、すべての事件で現場にいたのがBなので、Bが犯人です。というのは論理的には正しいかもしれないが、まったく面白くない。時間的な関係性や順序の関係性で犯人を特定するというのは、残念ですが、本格推理としては不十分だと思います。やはり、読者を唖然とさせるような意外性がなければ・・・。 |
No.3 | 7点 | シレン | |
(2011/09/09 14:55登録) 館(正確には建築物でなく洞窟)もので、それに見合ったトリックがあり、ダイイングメッセージを巡る展開で、「王道」をとても意識した構成。 厚さはあるけれど、長さは全く苦になりませんでした。 今回はちょっとキャラクターの個性が出てきていなかったかな? |
No.2 | 5点 | 江守森江 | |
(2009/05/24 07:30登録) これは変形の館物。 でも添付図でトリックが分かりガッカリ。 これじゃシリーズが長続きしない訳だ。 |
No.1 | 3点 | makomako | |
(2008/08/30 18:45登録) 「あかずの扉」でちょっとがっかりしたがそれでも期待してやっぱり発売されたらすぐに読んでみた覚えがある。残念ながら2作目3作目とだんだんつまらなくなってしまった印象。書評がないのもそのせいか。 |