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ミステリの祭典

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世界の望む静謐
乙姫警部シリーズ

作家 倉知淳
出版日2022年10月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 6点 E-BANKER
(2025/05/03 16:47登録)
死神そのものの風貌を持つ「乙姫警部」と、信じられないほどのイケメン「鈴木刑事」。
殺人事件が起きた場所に必ず出没する(?)迷コンビが贈る、倒叙シリーズの第二弾。
単行本の発表は2022年。

①「愚者の選択」=大人気漫画「探偵少女アガサ」シリーズを手掛ける漫画の大家を勢いで殺害してしまった担当編集者。これはもう、その時点で切腹ものだよな、普通。ただ、本人は悪あがきをしてしまうことに・・・で、当然乙姫警部に目を付けられる。
②「一等星かく輝けり」=往年の大スターが今回の犯人役。もう一花咲かせようと、プロモーターに売り出しの依頼をしたのだが、コイツが悪かった・・・。その結果、殺害に至ってしまう。今回の肝は、犯人の顔が世間一般に知られていること。これが(犯人にとって)悪い結果をもたらすことに。有名人もツラいね。
③正義のための闘争=今度の犯人役も著名人。意識高い系の女性(←嫌いだ)どもに人気の芸能・文化人というやつ。だが、遊び人である夫の浮気を許すことができず(→プライドが高いからね)、浮気相手を殺害することに。今回は乙姫警部が執拗な罠を仕掛けていく。
④「世界の望む静謐」=なんだか意味深なタイトルの最終編。舞台は美術専門の予備校。被害者は事務員で、加害者は講師。しかもイケメンの。いつも最初から犯人の目星をつけて行動する乙姫警部なのだが、今回はその理由がちょっと弱いような気がするが・・・

以上4編。
シリーズ二作目となり、ますます安定感が増したように思う。レベルは高位安定。
とにかく、「乙姫警部」である。(作者としても「猫丸先輩」以来、手応えのあるキャラを得たのではないか?)
毎度毎度、話を聞かれる事件関係者から、さまざまな言葉でその「死神っぷり」を表現させられるところなど、作者の遊び心が伺えて良い。
それともうひとつ大事なポイントが、犯人役のキャラ立ちの良さ。前作に比べてもここがパワーアップしたと思う。

ただ、倒叙ものは「ワンパターン化のしやすさ」が宿命となる。これは二作目でかなり強くなってしまっている。次作があるなら、そろそろ変化球パターンを持ってこないと、さすがに・・・という要らぬ心配をしてしまう。
倒叙ものの人気シリーズも多いだけに差別化は難しいのだろうけど、ぜひ今後も続けてほしいシリーズとなった。
(それにしても、ますます古畑っぽくなってきたような気が・・・。地上波への布石?)

No.4 6点 SU
(2025/03/02 21:19登録)
痩身に死神を思わせる警部とその部下で人間離れした美貌をもつ鈴木刑事のコンビが犯人を追い詰めていく倒叙ミステリ連作。
国民的人気コミックを手掛ける漫画家を手に掛けてしまった編集者、悪徳プロモーターの命を奪った芸能生活五十年を迎えたベテラン歌手、夫の不倫相手であった自らの秘書を刺殺したライフスタイルアドバイザー、脅迫をする美大専門予備校の職員を殺害した美術講師の四名が各話の犯人となる。
犯人により消し去られた事件ん痕跡を乙姫警部は深淵を覗き込むように瞳に宿る観察力で現場にある不自然さを次々と見抜いていく。本シリーズの凄みは、犯人が弄した隠蔽工作を幾重にも推理を行うことで全方位から突き崩していく過程にある。とりわけ表題作において、自然なものとして見えていた光景において姫の語りによって小さな矛盾が、まんべんなく暴かれていく様は圧巻。

No.3 7点 HORNET
(2023/09/03 18:28登録)
 「あなたのことは、最初から疑っていました」──漫画家を殺してしまった編集者、悪徳芸能プロモーターを殺めた往年の歌謡スター、裏切った腹心の部下に鉄槌を下した人気タレント文化人、勤務先の事務員の口を封じた美大予備校の講師……罪を犯した者たちの前に現れる、死神めいた風貌の「乙姫警部」。あの名作「刑事コロンボ」を彷彿とさせる名物警部の人気シリーズ。

 冒頭で犯行シーンが描かれたのち、刑事が表れて犯人を追い詰めるという、教科書のような倒叙もの。推理の手がかりとなる事象も、うまく描写に紛れ込ませられている。
 「一等星かく輝けり」が個人的ベスト。悪徳プロモーターの性質に踊らされてしまった犯人、そこを突き詰めた乙姫警部の捜査と推理は、小気味よかった。

No.2 5点 虫暮部
(2022/12/22 16:24登録)
 犯人のキャラクター小説として面白い。“最初から疑われていたポイント” も上手い点を突いている。しかし、どこでミスをしたのか、と言う興趣は今一つ。犯行そのものではなく、その後の不用意な行動で露見するパターンもあまり好きではない。
 「一等星かく輝けり」の作中歌の♪スターダスト~ は “スターの屑” と言う洒落?

No.1 5点 フェノーメノ
(2022/10/12 23:55登録)
皇帝と拳銃とに続くシリーズ二作目。
前作の印象はかなり薄い。正直話自体はほとんど覚えていない。それは今作も同じで、しばらく経ったらすぐに忘れてしまいそう。前作が面白くなかったのなら特段読む必要はないと思う。

そんな中で一番面白かったのは二番目の一等星かく輝けりか。警部の最初の気づき含めて、これが一番好き。

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