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ミステリの祭典

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仕掛島
小早川探偵事務所

作家 東川篤哉
出版日2022年09月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 5点 E-BANKER
(2024/03/10 14:29登録)
ひたすらシリーズもの短編に傾注してきた作者。そんな作者が久々にはなつシリーズ外の長編ミステリー。
タイトルからして、ものすごい「仕掛け」があるんだろうなあと予測はできますが・・・(でも読者のハードルも相当上がりますけど)
単行本は2022年の発表。

~岡山の名士が亡くなり、遺言に従って瀬戸内海の離島に集められた一族の面々。球形展望室を有する風変わりな別荘・「御影荘」で遺言状が読み上げられた翌朝、相続人のひとりが死体となって発見される。折しも台風の嵐によって島は外界から孤絶する事態に陥る。幽霊の目撃、鬼面の怪人物の跋扈、そして二十年前の人間消失事件・・・続発する怪事件の果てに、読者の眼前に驚天動地の真相が現れる!~

妙に「岡山推し」が目立つのは、昨今のプチ岡山ブーム(?)に乗っかってるためなのか?
随所に岡山弁のギャグも出てきて、地元民ならばニヤリとしそうな場面も多い。

で、本題ですが、
初期作品の「館島」同様、孤島に建つ「御影荘」や孤島である「斜島」そのものがトリックの素となっているのは自明。
一つ目のやつ(通路のやつね)は最初から薄々気付けるレベル。まあ、横溝の岡山ものなんかでもよく登場するしね。
もう一つの、建物そのものの仕掛けはなかなか大胆。当然、伏線は張られていたとはいえ、想像の斜め上をいくものだった。部屋割り図は挿入されていたけど、建物の立面図かせめて全体を俯瞰できる図があれば、なお良かったとは思う。(後での「えーっ!感が強くなると思う)。

ただし、全体のプロットは決して褒められたものではない。構図は見えやすいし、同様作品の焼き直し感が半端ない。
名探偵キャラもどこかで見たようなやつ(水〇サ〇〇っぽい)。つまりは、長編とはいえ引き続きやっつけ感の垣間見える作品という感想は拭えなかったな。
そろそろ腰の座った「新機軸」が欲しいところだ。
(続編が用意されてるっぽいけど・・・)

No.4 8点 まさむね
(2023/03/02 22:23登録)
 ド直球の本格作品と言ってよいと思いますし、愛すべきバカミス系でもあります。斬新なトリックが…という訳ではないものの、過去の事件との関係も含めてしっかりと練られていて、最後まで楽しく読ませていただきました。新鮮味というよりも、安定感で勝負といったところか。個人的には、結構好きなタイプの作品。
 ちなみに、ユーモア度については、作者の他作品と比べれば低めかも。でも、内容的にもこの辺りが丁度いいような気がしますね。読み心地は大変に良かったです。

No.3 8点 makomako
(2022/11/06 07:49登録)
 館島の続編ともいえるお話です。作者はユーモアミステリーの旗手として知られており、もちろんこの作品でもユーモアセンスたっぷりですが、館島と同様がっちりした本格物です。
 はじめは従来のユーモアミステリーの色が濃いのですが、瀬戸内海の孤島で起きる不可解な殺人事件が20年以上前の事件と絡み合って、読み進むにつれ興味深い展開となります。
 最終的には見事などんでん返し。
 お話はプロローグからすべて意味があり、しかもきちんと収まります。
 館島は私見では作者の最高傑作と思っていますが、それに肩を並べる素晴らしい作品でした。

 表装の絵もよいですね。いかにも奇怪な島でこれから本格ミステリーが始まるぞっていった感じがよく出ています。

No.2 6点 人並由真
(2022/10/29 06:37登録)
(ネタバレなし)
 1995年3月の瀬戸内海。夜釣りに出ていた三人の中学生は、世にも奇妙な事件に遭遇した。それから23年。関西出版界の大物、西大寺吾郎が病死し、その莫大な資産は、異形の孤島・斜島に集まった遺族たちに分配される。だがその島で、怪異な殺人事件が発生。遺言書の執行役である若き女性弁護士・矢野沙耶香と、行方知れずだった遺族の一人を島に連れてきた私立探偵・小早川隆生は、台風で閉ざされた奇妙な建築構造の館の周囲で、複数の事件の謎に向かい合うが。

 作者のかつての人気作『館島』の世界観(縁者の登場人物、類似の事件の舞台)を引き継ぐ新作。
(今回の主人公探偵コンビの男性の方が『館島』の探偵カップルの息子で、母親が開業していた私立探偵事務所を継承しているという設定である。)

 東川作品はまだ片手の指程度の冊数しか読んでない評者だが、本当にたまたま、ほぼ一年半前に気が向いて『館島』は読んでいたので、良かった。
 まあそっちを読んでなくても、全く問題ない新作だが。

 とはいえミステリとしては、コテコテの新本格パズラーにしてバカミス、しかしパワフルな娯楽作であった前作と比べちゃうので、どーしても分が悪い。
 作者の著作の中での最長の長編ということも新作のセールスポイントらしいが、どちらかというとお話や事件の密度に比して、冗長な印象。

 で、肝心の「仕掛け」に関しては、確かに現実の世の中に、それなりにありふれたものの延長のギミックではあるものの、作者と読み手の駆け引きの中で頭に浮かんでくる類のものとは思えず、真相がわかったあとのサプライズにインパクトも響くものもあまりない。はあ、そういう仕掛けですか、オチですか、という程度の感じであった。
 むしろ個人的には、お話や事件の細部を固めた脇の中小のネタの方が、まだ良かった。

 『館島』のダイナミズムの再来を期待すると裏切られちゃうので、どっちも読んでない人は、もしかしたら、こっちから先に手に取った方がいいかも? 
 佳作にはなってると思うけれどね。

No.1 6点 フェノーメノ
(2022/10/28 23:58登録)
タイトルからもわかるように島に関しては荒唐無稽な大仕掛けがあるが、個人的にこれはいまいち。それよりもその後に明かされる真相の方がミステリとしては面白かった。というか恐らくこちらが本筋で、豪快な物理トリックに期待する向きの作品ではないのだろう。

著者最大最長長編という謳い文句だが、沢山のネタが詰め込んであるというわけでもなく、読後感としては多少物足りない。やはりこれは肝心の島の仕掛けがあまり面白く感じられないことに原因があるように思う。
また伏線に関してもあれこれ張ってあるものの、もっとしっかり前振りをしてほしい部分は疎かにされていて、全体的にバランスを欠いていると思う。ところどころ、後出しに感じる部分があった。
とはいえすっかりシリーズ短編作家になった著者が今年は2冊も長編を書いたということは素直に喜ばしい。

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