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ミステリの祭典

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追憶のかけら

作家 貫井徳郎
出版日2004年07月
平均点6.80点
書評数5人

No.5 6点 パメル
(2024/04/14 19:23登録)
主人公である大学講師の松嶋は、上司である教授の娘と結婚していたが、自分の浮気が原因で喧嘩をし、妻は実家に戻っている時に事故で亡くなってしまう。そのため義父・麻生教授との関係も良くない。
そんな失意の日々を送る松嶋のところに、戦後間もなく自殺した作家・佐脇依彦の未発表手記が持ち込まれる。その手記は、自分がどうして死を選択することになったのか、ということが綴られているのだが、その内容がミステリとしか形容しようがないものだった。
謎めいた内容もさることながら、旧字旧仮名で書かれているのが、得体の知れない不安を覚えさせる。その不安感は、手記の謎を探る松嶋が何者かに追い詰められたり、数々の不可解な出来事で一層、増幅されていく。複数視点で物語を二転三転する展開は、作者の真骨頂と言える。最後に明らかになる黒幕の悪意、残酷さ、理不尽さには恐ろしいものがあった。それども読後感は爽やか。それは、松嶋の人の良さと、妻子に対する深い愛情がなせる業でしょう。ミステリであるとともに、家族や夫婦の愛の物語でもある。

No.4 7点 シーマスター
(2009/08/01 23:25登録)
あまり得意ではない旧字旧仮名遣いの作中作が始まるところで立ち止まり、パラパラと先のページを捲ってみて、それが300ページ近く続くことを知り心が折れそうになったが、案ずるより・・とばかりに意を決して取っ掛かると、これが悲愴な話ながら実に読みやすくて面白く、エンターテイナーとしての作者の懐の深さを改めて実感させられる次第となった。

かういふ文体で、斯くも読みゐらせるストオリイを書き綴るとは凄いぢやないか。

この人の作品は概して都合いい偶然が少なくないし、生臭いヒューマンドラマの割にはリアリティの薄弱さを感じさせるところがあったり、動機が今ひとつシックリ来なかったりすることがあるが、「読んでいて、いれ込めればそんなものはどうでもいいじゃないか」と思わせるだけの筆力を有する数少ない作家の一人だと思う。(少なくとも自分にとっては)

本作の構図は少し技巧に走りすぎたきらいはあるが、ラストは・・・・・どうにも文字が滲んでくるのを止めることができなかった。

No.3 5点 itokin
(2009/06/09 13:10登録)
まず長すぎる前半の一挙手一動の説明には辟易、後半一挙に盛り上がるかと期待したがだめだった。最後も無難にまとめたと言う感じで平凡。貫井さんという事で期待したんだが・・・。

No.2 6点 いけお
(2008/12/15 02:12登録)
プロットが良く、謎も興味をそそるので、テーマが薄っぺらく感じない点はよかった。

No.1 10点 小湊
(2004/10/03 17:42登録)
2004年(10月3日現在)ベスト1の作品。
魅力的な謎と、時代を超えてそれを追っていく過程、
時代と、それが生んだ悲劇、現代人の誰もが持つ
閉塞感と、そこから脱出したいという願い、物語の
最後、ちょっと泣きそうになった。
20代後半から40代ぐらいの人にオススメしたいと
なんとなく思った。
文章がうまいのは相変わらず。登場人物も魅力的。
文句のつけどころは読後かなり経っているが見つからない。これはスゴイ作品だと思う。

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