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ミステリの祭典

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夜歩く
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1957年01月
平均点6.83点
書評数29人

No.9 5点 江守森江
(2009/09/21 00:47登録)
※大多数の方々には完全ネタバレです。
諸処でクリスティー「アクロイド」の技法を用いた作品だと語られているので伏せません。
この作品が書かれた時には翻訳され日本人にも「アクロイド」が読めた事。
更に前に同じ日本文学の巨匠・谷崎潤一郎が使用していた事を踏まえると、当時の日本探偵小説界はアイデアの転用(パクリ)に非常に寛容で、大横溝をして何度も“この技法”を使用した事が残念でならない。
その為に基本採点が低くなるのは仕方がない。
根深い憎悪を描いた人間描写、首切り&すり替えトリック、二番煎じである事を感じさせない書き出し等々を評価し同系統な高木「能面〜」より1点高く採点した。
※この技法を使用した後続作品の評価については「アクロイド」の書評で触れたので御参照下さい。

No.8 9点 ミステリー三昧
(2009/09/04 02:02登録)
<角川文庫改版>金田一耕助シリーズの代表作です。
今にもハチ切れんばかりの憎悪・嫉妬が渦巻くドス黒い人間関係の大爆発・大崩壊が一番の読みどころです。特にラストの大どんでん返しが圧巻。この時代からこの手法があったことに嬉しさを感じます。まさかの大発掘でした。真相は強引ですが、偶然を頼らぬ完全犯罪系として高く評価したい。
この作品は、首切りトリックと「夜歩く」病(夢遊病)が重要なキーとなっていて、特に前者は申し分のない出来栄えでした。「被害者は誰か?」で二転三転するプロットの質の高さと首切りの必然性に十分納得できた点で不満が見つかりません。後者もミスディレクションの骨格として十分な役割を果たしていました。特に第一の殺人では、ある点に関して完全にミスリードされたので、犯人を称賛する他ない。
ただフェアな作品とは言い切れないので、あまり推理せず、ピンと張りつめた息苦しい人間関係の崩壊と細部まで血が通った完全犯罪の構図に期待して読むと評価を下げずに済む。
(2009/10/20追記)
私的横溝No.1作品です。この作品で語られる真相が最も印象的でした。トリッキーな犯罪・意外な犯人・終盤のドンデン返し・探偵の秀才ぶり・・・など本格的要素が他の横溝作品に比べて高い。小説世界でしか楽しめない作品です。
ただし、読者によって新鮮度が違ってくる。真相に既出感を感じる可能性があり、平均点が低いのも納得できる。早めに読むべき作品です。

No.7 6点 nukkam
(2009/06/12 09:35登録)
(ネタバレなしです) 1948年発表の金田一耕助シリーズ第3作である本書の前には「本陣殺人事件」(1946年)や「獄門島」(1947年)、後には「八つ墓村」(1949年)や「犬神家の一族」(1950年)といった代表作とされる作品が次々に発表されており、それらと比べて知名度で劣るのは地方色や時代色といった背景描写が弱いからでしょうか。逆に考えれば今読んでもさほど古さを感じさせないという長所でもあるのですけど。語り手による1人称形式を効果的に使って重く暗くそしてサスペンス濃厚な雰囲気づくりに成功している点はやはり全盛期に書かれた作品だということを納得させます。

No.6 7点 E
(2009/06/07 00:29登録)
おどろおどろしい雰囲気は横溝氏特有(だと思ってます;)。
「まさか・・・なぁ・・・」と思っていた犯人が的中したけれど、ぐんぐん読ませてくれる。犯人予想がついても“読ませる”文才!!事件の背景には吃驚。

No.5 7点
(2009/05/18 22:15登録)
本作と、他の人も言及している海外某作品とはむしろ違いを強調したいところです(むろんヴァリエーションではあるのですが)。本作の場合には、そのネタを使った理由を工夫しているわけで、そのため某海外作品はとりあえずフェアと言えるのに対して、本作はどうしてもアンフェアな部分が発生せざるを得なくなっているというのが、個人的意見です。実は、横溝正史は以前の長編でもこの手をちょっと試みているので、今回はいわばその拡大版と言ったらいいでしょうか。それに首なし死体パターンをひねって組み合わせていて、なかなか読みどころの多い作品です。
後の『悪魔の手毬唄』とは多少食い違いがある鬼首村が後半の舞台です。

No.4 5点 spam-musubi
(2009/03/09 11:39登録)
読み始めの段階で、「あれ、一人称なんだ。八つ墓村と同じだなー。」とは思ったんですけどね。
地の文まで…とは思いませんでした。

個人的にはやっぱり「ずるい」感が否めません。

No.3 8点 シュウ
(2008/09/24 16:13登録)
この作品で使われているトリックは、海外の某有名探偵小説に使われた叙述トリックのさきがけともいえる凄いトリックと同様なもので、
あの作品も特にアンフェアだとは思わないのでこっちも同じくアンフェアではないと思いますw
この作品は前半は館ものとして楽しめ、後半は岡山に舞台を移しての怪奇ものとして楽しめるという1作で2度おいしい作品です。ただ個人的に
岡山ものの方が東京ものより好きなのですが、この作品に出てくる異常な人々が前半の方が異常っぷりが弾けてるのに対して岡山に移ってからは
なんかおとなしくなってしまうのでちょっともったいないなあという感じです。

No.2 5点 マニア
(2008/08/11 22:21登録)
非常に採点しにくい作品。

最後に、それまでの小説世界をぶち壊す大技!横溝作品でこれをやられるとは思わなかったが、それについては自分にとって明らかにアンフェアでミステリとしては評価できない。しかし、極端な怪奇趣味と昼ドラを遙かに凌駕するドロドロとした人間関係、鬼気迫るド迫力の解決編は読み物としては間違いなく楽しめる。

今回の金田一は珍しく天才(笑)

No.1 7点 おしょわ
(2008/05/05 22:31登録)
いろんな意味で現代だと受け入れられない作品でしょう。
当時は結構衝撃的だったんではないかと思うと、それはそれで楽しめます。

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