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ミステリの祭典

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義眼殺人事件
ぺリイ・メイスン 別題「偽眼殺人事件」

作家 E・S・ガードナー
出版日1954年02月
平均点5.60点
書評数5人

No.5 6点 nukkam
(2018/12/19 21:51登録)
(ネタバレなしです) 全作品が「The Case of」で始まるペリイ・メイスンシリーズの日本語タイトルはいちいち「事件」を付けていませんが、英語原題が「The Case of the Counterfeit Eye」である1935年発表のシリーズ第6作の本格派推理小説である本書はなぜか「義眼殺人事件」というタイトルがまかり通っていて微妙に不思議(笑)。拳銃や毒薬などの凶器になりそうな物ならともかく、義眼を盗まれた依頼者が殺人現場にその義眼を残されたらと心配するのが不自然な気もしましたが、殺人事件が起きてからの展開があまりにドラマチックでいつの間にか違和感を忘れてしまいました(笑)。ライヴァルと呼ぶには力量不足の感もありますがハミルトン・バーガー検事の初登場作品です。メイスンが法廷で「検事の行為は、スタンド・プレーの域を出ないものと申せましょう」とコメントしますが、「あんたがそれを言うのか!」と突っ込みたくてうずうずします(笑)。ところでシリーズ初期作品では結末で次回作の予告が挿入される趣向がありますが本書の角川文庫版では「管理人の飼猫」(1935年)が、ハヤカワポケットブック版と創元推理文庫版では「奇妙な花嫁」(1934年)が予告されています。どちらが正しいか自信がないのかハヤカワミステリ文庫版では予告が削除されてしまっています(おまけに巻末解説でアガサ・クリスティーの「スタイルズの怪事件」(1920年)の犯人名ネタバレをしています)。個人的には出版順を考えると角川文庫版が正しい気がしますが。

No.4 6点 弾十六
(2018/11/03 03:35登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第6話。1935年4月出版。創元文庫で読了。
義眼講座から始まる物語。ホルコム刑事とのドタバタ劇は初期シリーズの名物。バーガー初登場。後年の「メイスンが憎い」狂人ではなく、無実の訴追を恐れるまともな地方検事です。メイスンの策略は無茶。(やってはいけないことを平然とやってしまいます) でも、この位のが面白い。
同時に3丁の銃が現れる豪華な事件です。一つは38口径コルト ポリスポジティブ(翻訳では「警察用の38口径のコルト」「コルト警察拳銃」)、二つ目は38口径S&W リボルバー、三つ目はショルダーホルスターに入った型式不明の拳銃。今までピストルと言えばコルトだったこのシリーズですが、やっとS&Wが出てきました… 幕切れにもオマケの45口径リボルバーが登場。ホルコムが男をあげて幕。
(以下2021-9-5追記)
実はcounterfeit eyeには「義眼」という意味はない。全文検索したが、この小説の本文でも「義眼」は glass eye または artificial eye。本文に11箇所出てくる counterfeit (eye) は全て「偽の(義眼)」を指している。調べるとcounterfeitには「偽造」の意味が強く、悪いニュアンス付きのようだ。なので新版を出すときは『偽造の眼球』を推します!

No.3 5点 mini
(2012/02/06 09:59登録)
発売中の早川ミステリマガジン3月号の特集は、”逆転裁判/逆転検事に異議なし!”
裁判てえ~っと、やはりガードナーも採り上げないとね

「どもりの主教」とかあまり裁判シーンが重要な要素を占めてない作品も有るんだけど、「義眼」なんかはシリーズの中では比較的に裁判シーンの重要性が高い方じゃないかな、裁判シーンの分量比率ではなく役割という意味でね

ところで当サイトで空さんも指摘しておられますが、何ですかこの題名
ガードナーは大部分は早川が刊行しているが、メイスンシリーズ中には創元が出しているものも数作あって、「吠える犬」などは珍しく創元版は有るが早川版が存在しない
両社揃って刊行したものも数作有るが、例えば「怒りっぽい女(すねた娘}」「門番の飼猫(管理人の飼猫)」のように微妙に題名が違うものもある
そんな中、「義眼殺人事件」は両社仲良く?題名が共通である
でもこれ不思議だ
メイスンシリーズの題名って、”(形容詞・形容動詞・修飾語句A)+(名詞B)”という形式を採るパターンが殆どで、このAとBとの組み合わせが妙だ、というのが1つの特色になっている
だとすればだ、原題も例外でなくパターンを踏襲しているし、普通に考えて邦訳題名は”模造の眼球”とかにすべきなんじゃないだろうか
それが何で「義眼殺人事件」???
数点しかない創元はともかく早川なんて他の数多いシリーズ作品の題名は全て原題を活かした「~の~」「~した~」というパターンなのに、なぜ「義眼」だけ”殺人事件”が付いているのか???
ガードナー作品で題名中に”殺人事件”が付く作品は他には殆ど無かったはずで、内容よりも題名の方がはるかに謎である

No.2 5点 りゅう
(2011/04/23 20:31登録)
 ペリー・メイスンシリーズは初めて読みました。プロットがかなり複雑で、展開も急です。メイスンは、お抱え探偵のドレイクと共に縦横無尽に動き回って問題解決にあたります。メイスンは依頼人を救うために2つの策略を企てるのですが、1つは完全な裏目に終わります(これは警察の捜査妨害でもあり、やり過ぎだと思います)。もう1つの策略は何のためにやるのか、メイスンの最後の説明を読むまではその意味がわかりませんでした(この策略が期待どおりの結果になる確率はそれほど高いとは思えず、失敗したら大損です)。真相説明は一応状況をうまく説明しているのですが、感心するほどのものではありませんでした。また、ブルノードからの依頼内容が取って付けたようで不自然です。義眼が盗まれ、自分を陥れるために犯罪の現場に残されるおそれがあるので何とかしてほしい・・・・・・。こんなことを弁護士に依頼する人はいないでしょう。

No.1 6点
(2011/01/09 12:21登録)
例によってご都合主義的な偶然が重なって依頼人が窮地に陥るパターンですが、これくらいならまあいいでしょう。義眼と消えた証人とに焦点を絞って、なかなか好ましい印象を与えてくれる佳作です。ただ、片目の依頼人がメイスンのところにやって来た理由がいいかげんなのが少々不満ではあります。
普通なら簡単に解決のつく事件のはずが、ある人物の行動によってややこしいことになってしまうのです。メイスンもそれで苦境に立たされますが、バーガー検事(本作が初登場です)の出方を予測してのメイスンの思い切った策略が最後には功を奏します。
ところで、本作には昔から何種類もの翻訳がありますが、そのほとんどのタイトルに「殺人事件」がついているというのは、ガードナーにしては非常に珍しいですね。

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