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ミステリの祭典

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法廷遊戯

作家 五十嵐律人
出版日2020年07月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 7点 八二一
(2023/10/19 20:43登録)
無罪と冤罪、制裁と救済、天秤が傾くのはどちらなのか最後まで気が抜けない。
斬新な形でリーガル・サスペンスを進化させ、法廷劇の面白さを知らしめた。

No.4 7点 猫サーカス
(2023/09/06 17:05登録)
法都大ロースクールに通う久我清美と織本美鈴。決して司法試験の合格率が高いとは言えないロースクールで、久我と織本に加えてすでに司法試験に合格している結城馨は群を抜いて優秀だった。第一部の「無辜ゲーム」とは結城を裁判官として、学生の中で行われる模擬裁判のことである。議題に上がる謎は消えた飲み会の代金や、久我の過去にまつわるもので、大した事件性はない。第二部の「法廷遊戯」では、三人の運命は大きく歪み、殺人事件の弁護人、被告人、被害者としてそれぞれの思惑を抱え、法廷へと導かれる。前半は斬新な「疑似」法廷ミステリ、後半は作者の豊富な法知識の下、緻密に作り上げられた圧巻の本格法廷ミステリ。全てが明らかになった時、罪とは人が犯すもので罰を下すのもまた人なのだ。「それが一体どういう事なのか、君は理解しているか」と問い掛けられた気がした。

No.3 6点 虫暮部
(2022/04/16 12:24登録)
 上手く出来ているのは判るが、私にとって法律論はメイン・ディッシュにならないな~と思った。頭いい人の一人称形式は匙加減が難しい? その内面が反映されている筈の地の文からはそこまで優秀なものが読み取れない。背伸びしながら喋っている感じ。何でも屋のキャラクターはナイス。

No.2 7点 HORNET
(2022/03/19 23:24登録)
 法曹資格を持っている作者が、その見識を生かしながらエンタメ的に非常に上手く仕上げたミステリと感じた。
 終末の、法廷でのどんでん返しはどう考えも現実的には禁じ手だと思うのだが、何やら難しい法廷ルールで正当化されていた。資格者である作者が書くのだからきっと理屈では通るのだろう。
 事件の真相や真犯人の意外さ自体は十分に面白い。その仕掛け方に法律の仕組みが介在しているのだが、その理論・理屈を理解するのがちょっと面倒。ただ本気で理解しようとしなくても、話自体は十分に楽しめると思う。

No.1 6点 パメル
(2021/11/10 09:14登録)
第62回メフィスト賞受賞作品。(個人的にはメフィスト賞受賞作品は良いイメージがないが)
法律家を志した三人。一人は弁護士になり、一人は被告人になり、一人は命を落とした。謎だけ残して。
ロースクールに通う久我清義は、模擬法廷の扉を開ける。法壇の中央、裁判長席から久我を見下ろすのは結城馨。すでに司法試験に合格していながらここに進学してきた異才の天才に、久我は無辜ゲームの開廷を申し入れる。
構内にばら撒かれた、久我の過去を暴露する紙。それは単に名誉棄損というだけでなく、同じ学生の織本美鈴に関わる問題であり、そして紙に添えられた天秤のイラストは、犯人からの果たし状を意味していた。教務課や警察に相談する密告か耐え忍ぶか、ゲームを受けるか。前に進むにはゲームを受け入れるしかない。
読む前に想像していた法廷バトルといった趣はあまりないが、現役の司法修習生である作者ならではの確かな知識と法廷の描き方、知的遊戯性ばかりでなく小説としての旨味もたっぷりと備えており、魅力的な枝葉のエピソードがストーリーを彩っている。
もちろん、リーガルミステリ最大の読みどころといったら、クライマックスの法廷劇。久我、結城、織本、三人の若者を結ぶ謎が解き明かされる時、罪とは、罰とは、制裁とは、救済とは、様々な想いが体中を駆け巡り、そして最後の一行に胸を射抜かれる。罪と罰の在り方に考えさせられる作品。

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