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ミステリの祭典

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仮面劇場の殺人
ギデオン・フェル博士シリーズ

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1997年12月
平均点5.33点
書評数6人

No.6 6点 みりん
(2025/09/27 00:56登録)
仮面劇場で、シェイクスピア劇のリハーサル中に特等個室「ボックス席」で起こった石弓による殺人。たったひとつの扉は完全に施錠され、舞台に向いた窓は衆人環視下にあった。被害者は背中を下から上に打たれており、凶器は現場から離れた場所で発見された…
前作は『死が二人をわかつまで』だったが、今作は劇場で起こる殺人で容疑者全員に鉄壁のアリバイという展開で『緑のカプセルの謎』を思い出した。個人的にはトリックのみを切り出すと『緑のカプセルの謎』に比類すると思いますが(元々カプセル評価低め)、事件とは無関係の記述があまりにも多く、事件の概要や重要なポイントをわざと(?)掴ませないようにしている感じがして、犯人当ても難しいです。位置関係が重要になるのだから、劇場の見取り図くらいはつけてほしかったな。

本書の解説はカーに対する並々ならぬ熱量がある二階堂黎人氏。ありがたいことにカーの全長編作品の中で密室を扱った作品が何作あるかをカウントしてくれている。完全なる密室が18作、準密室が17作、足跡のない殺人が5作でなんと全長編71作中40作が密室(広義の密室を含めると+α)であるらしい。どうやらジョン・ディクスン・カーは俺をまだまだワクワクさせてくれるようだ。

No.5 7点 レッドキング
(2020/07/03 20:46登録)
劇場の鍵のかかったボックス席で、背中に矢を射られて殺された女。「密室」ではない。舞台に向かって大きく「窓」が開いていたのだから。殺害状況とアリバイの二つの「不可能性」解決がテーマの作品。
※これ、もちっとで「くたばれ健康法」とんでもトリックになれた(かな?) ただ、あのやり方で本当に背中から刺し殺せるのか?(ま、よいとしよう)
※同様な「半密室」不可能トリックを扱った「第三の銃弾」に比べて、トリック自体は見劣りするが、「第三の銃弾」が余剰部分を極力削った作品だったのに対して、こちらは約2倍の分量の、トリックテーマ外の「物語」たっぷりの作品で、そこが魅力的なので点数はオマケ加算。

No.4 5点 ボナンザ
(2018/02/24 20:53登録)
確かにトリックは中々のものですが、ほかの方もおっしゃるように会話の冗長さやドタバタ具合はイライラさせられるレベル。

No.3 5点 kanamori
(2012/01/18 23:07登録)
フェル博士の探偵譚では最後から2番目の作品。
序盤で英国からアメリカに向かう客船上での狙撃事件はあるものの、メインの殺人が起こるまでが長い。その間の人間関係の説明がモタモタしていて、意味深な会話が佳境に入りそうなタイミングで横やりが入って話題をそらすという(晩年の作品に共通する)テクニックに”イラッ!”とさせられます。
劇場2階のボックス席という準密室状況の殺人トリック(というより、アリバイ・トリック?)はこの時期の作品ですからこんなものでしょう。劇場ミステリが好みなので、まあ楽しめました。

No.2 4点 Tetchy
(2008/12/31 18:16登録)
確かに短編で同様のトリックがあり、しかもチェスタトンの某有名短編でも同様のトリックがあるので、新味はない。
そして起こる事件はそれ一つのみだから、私も冗長さを感じたのは全く同感。
本筋から関係のない脱線気味の笑劇もあり、カーのサービス性がどうも悪い方向に働いたようだ。

No.1 5点
(2008/12/26 20:54登録)
似た殺人方法のトリックをカーは以前にも使ったことがあります。しかし、読んでいる間は、トリックについては何となく想像はついたのですが、類似作があることには気づきませんでした。全く別のシチュエーションで、かなりうまく扱われていると思います。犯人と動機もなかなか意外でしたが、アリバイ工作はちょっといただけません。
しかし、『月明かりの闇』にしてもこれにしても、カーの晩年作の長大化(無駄に長いとまでは言いませんが)は、横溝正史の晩年となんとなく重なる感じがしますね。

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