数字を一つ思い浮かべろ デイヴ・ガーニーシリーズ |
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作家 | ジョン・ヴァードン |
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出版日 | 2018年09月 |
平均点 | 6.20点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 6点 | メルカトル | |
(2022/05/22 22:31登録) 数字を一つ思い浮かべろ。その奇妙な封書にはそう記されていた。658という数字を思い浮かべた男が同封されていた封筒を開くと、そこにあった数字は「658」!数々の難事件を解決してきた退職刑事に持ち込まれた怪事は、手品めいた謎と奇怪な暗示に彩られた連続殺人に発展する。眩惑的な奇術趣味と謎解きの興趣あふれる華麗なミステリ。 『BOOK』データベースより。 第一部は静、第二部は動、そして第三部は進展と云った具合に明確に色分けされています。それにしてもこれ程の大作とは思いませんでした。勿論それに見合った内容である訳ですが、主人公で元刑事のガーニーとその妻マデリンの、心の交流が結構な分量を占めており、それは要らなかったかなと個人的には思います。数々の謎は物語の進行に従って徐々に解されていき、本格ミステリのお約束の様な最後の最後に関係者を集めて謎解きが行われるというものではありません。その中でもメインとなる658という数字の関するトリックは、納得はいくもののアッと驚く程ではありませんでした。理論的には成立しますが、若干疑問に思う部分も無きにしも非ずです。 本作を読んでいて、いかにもアメリカらしいミステリだなと感じました。映像化すれば、と云うかした方が面白くなりそうです。主にハウダニットに重きを置いている感じもしますが、ホワイもフーもおろそかにされている訳ではありません。全体として良く出来ているとは思いますが、名作傑作の部類に入るとは言い切れませんね。文体もこなれていない印象を受けましたし。 |
No.4 | 5点 | ボナンザ | |
(2021/01/19 23:06登録) 主人公の私生活半分、事件半分といった感じで、単にミステリにするだけならもっと短くて良かったかもしれないが、このドラマパートがないとそこまで印象に残らなかっただろうとも思う。 |
No.3 | 7点 | びーじぇー | |
(2020/01/25 11:28登録) 相手が思い浮かべた数字を、当ててみせる手品。子供でもできる簡単なものから、本格的なものまで、そのトリックは様々なようだが、この作品の犯人が被害者を眩惑する手口も、それらを応用したものといっていいだろう。 思い浮かべた数字を的中させるだけでなく、犯人の足跡が雪中で途絶える殺人現場など、本作の謎の数々は古典ミステリの不可能犯罪ものを思わせる。一見、黄金時代への回帰を思わせるが、これらの謎は解き明かされていく過程で、鮮やかに二十一世紀の今と同期していく。本作の真価は、安易な先祖返りではなく、古き良き探偵小説の魅力を、現代にアップデートしてみせたところにあると言えるだろう。 |
No.2 | 7点 | 小原庄助 | |
(2019/01/23 08:33登録) 不穏な冒頭から、意外な着地を見せる結末まで、提示される不可解な謎を解明する楽しさで一気に読ませる。 元刑事のガーニーは、学生時代の友人メレリーから相談を受ける。彼のもとに届いた奇妙な脅迫状。そこには、千までの数字を一つ思い浮かべるように記されていた。それに従ったのち、メレリーは同封された小さな封筒を開いて驚愕する。そこには、彼が思い浮かべていた数が記されていたのだ。 得体の知れない脅迫はやがて殺人事件に発展し、ガーニーは検事の要請を受け、特別捜査官として犯人を追うことになる。 事件はいくつもの謎で彩られている。犯人はどうやってこれを成し遂げたのか?なぜ意味の無さそうな奇妙な行動をとったのか?一つの謎の解明が新たな謎を生み、その連鎖が物語を織りなしている。 主人公ガーニーの造詣も印象深い。頭脳明晰な元刑事として知られる一方、妻の考えが分からず思い悩む日常。そんなサイドストーリーも、時に思わぬ形で謎解きに絡んでくる。鮮やかな手品を見たような満足を味わえる小説である。 |
No.1 | 6点 | nukkam | |
(2018/11/09 20:54登録) (ネタバレなしです) ミステリー作家としては遅咲きの米国のジョン・ヴァードン(1942年生まれ)による2010年発表のデビュー作で、退職刑事デイヴ・ガーニーシリーズ第1作です。警察小説と本格派推理小説のジャンルミックス型で、3部構成の第1部では謎めいた脅迫文を次々に受け取り、頭の中で思い浮かべた数字を的中されてパニックになった旧友から相談を受けるガーニーが描かれますがここではまだ警察小説とは言えません。現役時代は伝説的名刑事だったガーニーが臨時捜査官として警察捜査に参加する第2部から警察小説らしくなりますが、ここでも雪の上の犯人の足跡が途中で消えてしまうなど謎づくりへのこだわりを見せています。後半になると登場人物リストに載っていない人物が殺されたりと少し雑然としてきた感もありますが、ガーニーの私生活ドラマや正体を現した犯人の異常性格描写など内容は盛り沢山で、(文春文庫版で)550ページを越す厚さながら物語はだれることなく進行します。 |