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ミステリの祭典

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夜歩く
アンリ・バンコランシリーズ

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1954年12月
平均点5.88点
書評数25人

No.5 5点
(2010/06/24 21:21登録)
ケレン味たっぷりな展開は、みなさん認めるとおり最初からいかにもカーです。というより、本作や次作『絞首台の謎』のこけおどし的猟奇性は、後の作品ではむしろ薄まり、正統的な怪奇性に変わってきます。
全体的な構造はおもしろかったのですが、偶然の使い方が説得力に欠けるのが難点です。メインの密室トリックにしても偶然うまくいったというところがあるのです。運が少し悪ければ致命的目撃者があったはずで、殺人計画と偶然との組み合わせ方としては『白い僧院の殺人』等の巧みさにはほど遠いと思います。また、ある出来事が起こるために必要な偶発的条件を考えれば、密室殺人が起こる前から犯人の見当はついてしまうとも言えます。
ところで、最終章「勝利のとき」とは、誰の勝利なのでしょうか。バンコラン? それとも真犯人?

No.4 6点 ミステリー三昧
(2009/08/26 12:04登録)
<創元推理文庫>ディクスン・カーのデビュー作(長編/1930)です。
「ローランがいつ・どこで・誰に姿を変えたか?」は丹念に読まずとも変化がはっきり窺えるほど大量かつ大胆に伏線が張られていたにもかかわらず、分かりませんでした(笑)。意外に盲点を突いた真相です。密室トリックも種を明かせば実に簡単なトリックでした。ただし、ある点を考慮に入れる必要があるため、それがアンフェアの種になる恐れがあります・・・がそれを匂わせる伏線も結構大胆に張っていたので、特にミステリマニアならわかりやすい部分なのかもしれません。う~ん・・・でも、やはりこの手のトリックはどうしても好きになれない。ズルイと感じてしまう。
小粒ながらフーダニット・ハウダニット両方を兼ね揃えた本格推理小説となっていました。特に密室トリックは勉強になります。このシチュエーションなら「ここを疑え!」みたいな教訓が、いやでも身に付きそうです。読み始めは古くて堅苦しい文章に馴染めず、パリの街や人物の容姿がイメージしにくいアウェーな雰囲気に萎えが生じました。でも我慢すれば二度読みも楽しめる作品であり「流し読み」を許さぬプロットの妙・伏線の数々を堪能できる作品でした。

No.3 7点 測量ボ-イ
(2009/06/05 21:14登録)
カ-のデビュ-作ですが、名物探偵フェル博士やHM卿は
まだ出現しません。
けれども例のオカルト・怪奇趣味はこの作品から既に全開
(?)です。個人的には結構好きな作品です。

No.2 5点 Tetchy
(2008/12/15 22:55登録)
カーのデビュー作ですが、もうこの頃からカーだ。
怪奇・オカルト趣味に溢れている。
野心溢れる作品だが、やはり若書きの荒さが目立つし、なにしろ文章が読みにくい(訳者の筆にも寄るのだろうけど)。
そしてあの最後のサプライズをどう受取るかで評価も分かれるだろう。
私はカーをある程度読んだ後に本作を読んだので、まあカーらしいんじゃない?と思ったが。

No.1 6点 ロビン
(2008/09/14 22:43登録)
カーの処女作。探偵役は、有名な二人に比べればちょいマイナーなバンコラン氏。
終盤に登場した死体によって、物語の世界がガラッと変わった瞬間は驚愕。それに関する推理は、所々に伏線はあるものの、決定的な証拠は記述されていない科学捜査に基づくものでその点は残念。
メインの密室(&アリバイ)トリックも、あの人物(犯人)の証言が犯行現場を密室にした大切なものだったのに。それが嘘だったなんて……。

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