home

ミステリの祭典

login
東京空港殺人事件
那須警部シリーズ

作家 森村誠一
出版日1971年01月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 7点 人並由真
(2025/05/04 08:49登録)
(ネタバレなし)
 昭和30年代。北極回りロンドン行きの旅客機が機体の不調から、アラスカの氷原に不時着。多くの乗客や乗員が犠牲になった。それから十年以上の時が経った、昭和40年代のその年の2月6日。乗客乗員総員138名を乗せた「全日航」の旅客機JA4301便が羽田の到着前に、行方不明となった。新婚の夫で全日航のエリート職・小室安彦の帰国を待っていた若妻の由紀子は、彼が乗っていたはずの4301便の無事を願うが。やがて事態は、空港周辺のホテルでの奇異な密室殺人事件へと連鎖していく?

 光文社文庫の新装版で読了。
 密室トリックに関しては、そこだけ切り離してみるとかなり<ナン>だが、一冊全体、作者・森村センセイの人間観が如実に感じられ、しかしてそれがいつものようにはさほどイヤミになっていない。
 むしろ小説の完成度がミステリ要素のぶっとい柱となっている感じで、そこがとてもいい。なんかこの作品の登場人物の描写は、いわゆる「刺さる」ってヤツなんだな。
 繰り返すが密室謎解きミステリとしては、かなりアレです。でもその上でね、なかなか嫌いになれない作品だった。

No.4 8点 斎藤警部
(2015/08/03 12:02登録)
力作感漲る長篇です。 冒頭で、何処かで起きた航空機遭難事故避難者達の苦境を描写し、過去から現在に連なる因縁をこれ見よがしに暗示。 現在の羽田沖では同社の航空機が残骸となって見つかり、更にその数ヵ月後、羽田沖事故の調査を進めていた同航空会社重役が空港ホテルの(ご丁寧にも二重の)密室内で死体となり発見されます。 
露骨に「高層の死角」を連想させる殺人ぶりではありますが、社会派本格推理の歴史に欠かせない一冊である事に間違い無し。 森村氏渾身の剛速球を是非、受け止めてください。

No.3 5点
(2011/12/17 15:02登録)
二重密室という本格要素に、企業の争いを中心とした社会派要素を付加した読み応え十分な社会派本格ミステリーです。
本書を読めば、当時の森村氏は社会派の雄である松本清張に倣いつつも、本格要素を多く取り入れて自分流の本格ミステリを突き進もうとしていたのでは、という気がします。
いろいろとアラもあるのですが、『高層の死角』の後ということなのか、勢いのある本格ミステリという感じがします。企業がらみの社会派ミステリーは嗜好からずれていますが、最初に読んだ森村作品ということで思い出深く、懐かしいです。

No.2 3点 文生
(2010/01/21 13:43登録)
空港での二重の密室の謎が中心になっているが、ひとつは古典的すぎるし、もうひとつはこのくらいすぐに気づけよと言いたくなるしょぼいもの。
これはちょっと評価できない。

No.1 6点
(2008/12/05 21:25登録)
東京空港内での密室殺人捜査と、飛行機墜落事故の原因究明とをからめて、話は進んでいきます。
後者の、正に社会派の王道とも言うべき問題提起はさすがに読みごたえがありますし、密室トリックも偶然を利用した部分は少々気になりましたが、悪くありません。ただ、その2つの事件がどう結びついてくるのかという点については、期待していただけに拍子抜けでした。

5レコード表示中です 書評