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ギザじゅうさん
平均点: 6.99点 書評数: 238件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.218 6点 そして夜は甦る- 原尞 2005/03/01 16:06
錯綜したプロットが光った佳作。本格的視点から見ても満足のいく作品ではある。が、この「洒落た会話」とやらについていけない。

No.217 7点 有限と微小のパン- 森博嗣 2005/03/01 16:01
シリーズ完結を迎える大作。一作の『すべてがFになる』との対称が美しい。
本作のトリックはかなりのバカミスネタ。それをカバーするために様々な工夫を凝らしてあるが、説得力を持つかといえばやや苦しい。ただし真賀多四季の存在が作品に張りを与えているのは成功。おおむね満足のいく作品ではあった。
しかし、大きな不満点が一つ。ラストで四季博士が「すでに死んでいる」と述べたときに、F(死→生)とパン(生→死)の対称に思い当たった。同時にPERFECT OUTSIDERの意味にも。でも、やっぱり生きていたというので、豪快に大ごけした。さらに、それが瀬戸千衣というのだから、なおひどい。どこがパーフェクトなんだ。これが無ければ良かったのだが・・・・・・。

No.216 7点 名探偵 木更津悠也- 麻耶雄嵩 2005/02/26 13:30
麻耶らしいひねったパズラー。
幽霊を平気で出したり、ホームズとワトソンの関係に独特の揺らぎを与えつつも、正統派パズラーとしての抑えるべきポイントは、しっかり抑えているのが素晴らしい。
とりわけ「交換殺人」は出色の出来。

No.215 7点 女囮捜査官 5 味姦- 山田正紀 2005/02/22 11:19
本シリーズのトリ。最後で明かされる、女囮捜査官の意味やラストの北見志穂の疾走など、これまたぶっとんだ作品ではある。連作のテーマはジェンダー的な面かと思いきや、日本人論になってしまうのだから驚きではある。ただし、連作抜きで本作だけではチト辛い。顔のない死体に挑んで、なかなか面白いトリックはあるが、現代の検死技術であれを見抜けないとは思えない。トンネル中の密室トリックも知っているか知っていないかの問題ではなかろうか。その他多々不満もあるが、連作としては大満足。傑作の言葉に偽りなし。

No.214 8点 女囮捜査官 4 嗅姦- 山田正紀 2005/02/22 11:12
これまた変な作品。ミッシングリンクあり、麻薬あり、とネタの盛り込み方は他と変わらず満足。とりわけ、犯人のホワイダニットのねじれ方は、連作中でもぶっ飛んでいる。意外と人気キャラ(?)の袴田刑事の内面を描いているのも意外や意外で楽しめた。これまた怪作。

No.213 8点 女囮捜査官 3 聴姦- 山田正紀 2005/02/22 11:08
本書が視覚に次いで二番目に面白い。誘拐犯の狡知だけでも、ずば抜けて凡百の誘拐ミステリーよりも面白い。しかし、最後にはさらなるどんでん返しが待っていて、贅沢な事この上ない。作品を覆うベールにしても、他と異なっている連作中の怪作か?

No.212 9点 女囮捜査官 2 視姦- 山田正紀 2005/02/22 11:03
五連作のうちではこれがベスト!不可能犯罪に取り組みつつも、バラバラ殺人に取り組んだパズラーには驚嘆させられた。意外な犯人という点でも文句なし。犯人の壊れ方や現代の病魔性という点でも、この辺りから加速がかかり、これ以降の作品も一気に読んでしまった。

No.211 7点 女囮捜査官  触姦- 山田正紀 2005/02/22 10:58
小気味よくひねりを加えたフーダニット。ネタを色々と盛り込み、最後までどんでん返し。これだけでミステリとしての水準点を超えていて、十分面白い。ただし、導入部の為に特被部やキャラなどの紹介にページを割いているにも拘らず、これが一番短い。そのためか、五連作の中では一番おちる。逆にいえば、一番おちるのに、これだけ面白いのが凄い。

No.210 7点 暗黒館の殺人- 綾辻行人 2005/02/17 14:58
あらゆる意味で、綾辻(館シリーズではなく)の集大成。騙しのテクニック(館)、雰囲気の出し方(囁き、水車)、消失トリック(殺人方程式?)、記憶(最後の記憶?)、ダリアの祝福(殺人鬼・・・無理があるか?)、スプラッターはないが細々とした伏線は殺人鬼的だろうか?『暗黒館』の黒は、綾辻のもてるカラーをすべて混ぜ合わせたことで出来た黒なのだろう。
ただし、メイントリックはいささか不満。伏線の張り方もイマイチなので(「当代の乱歩」って、やりすぎだろう)、容易に真相が看破できてしまうのが悲しい。これだけでこの長さを支えるのは無理があるが、その分大量に謎が盛り込まれているので、驚きも少なくなかった。個人的には殺人の動機と、中村某の館に驚かされた。暗黒館の雰囲気が気持ち良いので、この長さもつらくなかったが(その年では加賀美氏の『監獄島』ほど辛くはなかったが)、客観的に見たら、思わせぶりな記述で冗長に引っ張りすぎる印象は否めない。
もうひとつ感じたところでは、「暗黒館の殺人」というよりも「殺人のあった暗黒館」といった趣きが強く、その点では黒死館に似ている気がする。本人も意識したかもしれない。

No.209 7点 スイス時計の謎- 有栖川有栖 2005/02/01 19:55
女彫刻家とシャイロックの二作は物足りない。
が、他中編二作は必見。「あるYの悲劇」はダイイングメッセージに対するアプローチの仕方が面白く、ミスリードも適度に効いていて、まあまあ満足。月光ゲームでのダイイングメッセージYより、格段の進歩が感じられる。作中での悪意に対する考察は、マレー鉄道の影響か?
そして、白眉の表題作。論理の筋立て自体は地味で、一見その推理自体にも説得力が感じられないのだが、逆説的なくらいにロジカルである(でもよく考えたらわかったなぁ、という口惜しさは残る)。本作での時間に対する考えから言っても、有栖川有栖を語る上での重要なポイントになるのは間違いない。
さて、連載されていたモロッコ水晶(だったか?)は如何に?

No.208 7点 タイトルマッチ- 岡嶋二人 2005/01/03 23:09
まず、本格としてはやや物足りない印象を受けた。誘拐物として「なぜKOで倒せ」という脅迫をしたのかが謎の焦点となるが、その脅迫で本当に犯人の狙い通りになったのかは微妙なところ。また、一方では犯人は口封じの為に殺人も行っている点にも、犯人の印象にちぐはぐな感じを受ける。
しかし、それを補って余りあるサスペンスフルな展開、目まぐるしく動く事件の局面、軽妙な登場人物、そしてラストの試合の迫力!どこをとっても岡嶋二人。これだけでも十分楽しめることは間違いない。

No.207 8点 朱の絶筆- 鮎川哲也 2005/01/02 15:03
りら荘と比べると、多少落ちる。
と、いきなり言うのも辛口だが、なかなか楽しめた。りら荘同様に、連続殺人を起こしておきながら無意味の殺人がなく(誤って殺したというのも無い)、伏線をしっかりと張っておくという、まさに本格という作品。アリバイトリックも鬼貫ものとはまた違った趣き。小説としても、りら荘よりも上手くなった感じもする。ラストは素っ気ない感じもしたが、十分満足。(ただし「鏡は横にひび割れて」の謎は、犯人当てにはあまり関係なかった気がしたが・・・。レッドへリング)
犯人が当てやすいのと、多少ダラダラした印象があるのが残念。

No.206 4点 まどろみ消去- 森博嗣 2004/12/24 09:44
本当にひどい作品・・・というわけでもないのだが、全体を通しての趣旨がよくわからない。短編集としてここまでめちゃくちゃなラインナップだと、言葉も出ない。唯一評価できるのはシリーズ物に拘らずに、好き勝手に書いている点か?
唯一の本格である『だれもいなくなった』は、トリックバレバレ。見せ方の工夫も足りないため、全く楽しめなかった。『ミステリィ対戦の前夜』はこれ一編では、読者にはオチが読めないぶんアンフェア?『やさしい恋人〜』もラストでひっくり返してはいるが、ラスオチの可能性が少ないために、容易に推測ができてしまう。他の作品ももう一度読み返そうとは思わないものばかり。
幻想味の強い作品で勝負するなら、それだけで纏めたほうがよい。ただし、他の純文学+SF系の作家(筒井とか安部公房とか)に比べると、格段に落ちる。

No.205 8点 木製の王子- 麻耶雄嵩 2004/12/23 22:15
単なる人工美という奇をてらっただけの作品化と思いきや、その過剰なまでの人工が最後のトリックの伏線になっていたのには参った。時刻表(時刻表トリックじゃなくて時刻表ね)のようなアリバイ、家系図、家族の名前、それらがラストのトリックになっているのだ。このような真相が説得力をもちうるのも不思議だが、まさにアートとカルトの密接な結びつきが抜群に上手かった。
ただし、あのアリバイトリックはやっかいだし(たとえそれが重要だったとはいえ)、そのトリックもミステリを読みなれた読者なら容易に気づくもの。そういった途中の退屈さは困り物。
ただし、それのラストへのつながりをプラスと見るか、その退屈さをマイナスと見るかは人それぞれだろう。が、ある意味では麻耶の最高傑作ではないだろうか。

No.204 6点 御手洗潔のメロディ- 島田荘司 2004/12/19 14:16
IgEはなかなか発端の変わりようから、意外な結末までよく出来ていた。あのような事件なら、御手洗の存在がよく栄えていい感じ。対して、ボストンは御手洗の大学生時代の事件という変わった設定だが、ダイイングメッセージがバレバレなのが、興ざめだった。が、ラストは面白い。
非ミステリの二作だが、御手洗という人物を浮き彫りにするという意味では重要だが、あまり好きにはなれない。やはりミステリでありながら、御手洗を深く描くようにしてもらいたいと思う。しかし、御手洗ほど謎が多い人物だから、このような話が成り立つのだとも思う。この二編をもってしても、御手洗を覆う霧の深さは大して変わらないからだ。これは御手洗に許された特権か?

No.203 8点 風の証言- 鮎川哲也 2004/12/19 14:09
この写真トリックの基本原理は、氏が以前ある短編でも使っていたのだが、それにひねりを加えたもの二つをメイン、サブトリックで使っているのがなかなか面白い。
そのうえさらに、証拠を見つけるとなると・・・。最後に明かされる謎解きの鍵が凧というのも味わい深い。よく出来た秀作。

No.202 7点 二の悲劇- 法月綸太郎 2004/11/28 17:03
二人称とはまた変わっている。作例としては都筑道夫の『やぶにらみの時計』しか知らない。しかし本作では、それがトリックと大きく関わっているだけに、評価できる作品である。ただし、二人称の可能性の狭さゆえか、トリックが看破しやすいのは残念だ。それを作者も認識していたのかどうか、そこに至るまでの過程に一工夫も二工夫も凝らしているだけに、非常に楽しめる作品となった。
法月親子の掛け合いなど、時には漫画のように感じることもあったが、このくらいで調度良いのかもしれない。(法月警視ファンに対するサービスなのかもしれないが)
さて、『三の悲劇』はどうなるのやら。三人称視点を多用した、非常に重層的な作品になるのではないか、と思っているのだが。

No.201 6点 殺意は砂糖の右側に- 柄刀一 2004/11/28 16:56
IQ190の天才(というより雑学王)を探偵役にしてあるだけあって、トリックは専門的なものもある。が、それに寄りかからずに、ロジックを大切にしている点は好印象。
考古学ミステリやアリア系とは別の視点から描かれているが、柄刀独自のロマン観がしっかりと息づいている。他の作品と比べると、多少物足りなさも感じたが、このシリーズがどう発展していくの楽しみである。

No.200 6点 掌の中の小鳥- 加納朋子 2004/11/28 16:46
最初の一編は本格味が弱く、先が心配になってしまったが、それ以降はなかなか良く出来ていた。(特に「自転車泥棒」が)
 単なる連作かと思いきや、全作を通して「掌の中の小鳥」が描かれていたのには舌を巻いてしまった。日常というと北村薫を連想しがちだかが、北村薫とは違った別の視点が感じられた。

No.199 7点 正月十一日、鏡殺し- 歌野晶午 2004/11/28 16:41
裏本格というものを、非常に楽しんで読めた。
黒々としたカオスのような作品でありながら、しっかりと伏線をはっている、まさに裏『本格』であった。また、日常的な出来事や最近の風潮などを取り上げているだけに、恐怖感も倍増。
特に表題作と「美神崩壊」が良かった。

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