皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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たかだいさん |
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平均点: 5.19点 | 書評数: 81件 |
No.8 | 4点 | 東京・山形殺人ルート- 西村京太郎 | 2025/01/18 18:40 |
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身元不明のバラバラ死体が発見された事を皮切りに、僅かな手掛かりに縋って十津川警部が山形に赴くトラベル・ミステリー作品です
文庫本には「本格推理小説」とありますが、作風としてはサイコパスを扱うサスペンス物となります 引き起こされる凄惨な事件など前提となる設定が結構面白く、個人的には僅かな手掛かりから捜査線上に挙がった男「黒田」のキャラクター性が割と好きで、捜査線に名が出るや自ら十津川警部に接触を持ち、疑われている前提で嘲笑うように捜査を掻き回す。愉快犯的であり、言葉巧みに女性を信用させる詐術の持ち主であり、大胆不敵で抜け目のない狩人でもある「黒田」のキャラクターが、この作品のすべてと言ってもあながち言い過ぎではないかと思います ただ、それだけにラストが呆気なさ過ぎた感が否めない。その直前に、十津川警部との水面下での攻防に勝利しているだけに、余計、唐突に負けた感が拭えなかった そこが残念に感じた点であり、詰まらなくはないがイマイチという評価に繋がったポイントです |
No.7 | 5点 | 仙台駅殺人事件- 西村京太郎 | 2025/01/01 09:39 |
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特定の駅をメインに据えた十津川警部シリーズの一つ「駅シリーズ」の仙台駅Ver.です
ある女性が住むマンションの自室で男性の遺体が発見され、なにやら恐喝されていた痕跡がある女を追って十津川警部と亀井刑事のコンビが仙台駅へ向かうというストーリー 一応、本格推理小説と銘打たれていましたが個人的には推理小説というよりサスペンスかなと思うのは、本書も同じでした 地道な調査によって事件の全容が少しずつ分かってくるという形式で話が進むので、事件の背景や犯人の正体といった部分に推理の余地は微妙にあるかも知れませんが、特別、何かしらのトリックが仕込まれていたりも本書には無かったですしね とは言え、女の行方を主軸としながら、事件の背後に見え隠れする恐喝犯の存在や、連鎖的に引き起こされる殺人、一筋縄にはいかない関係者達などを西村京太郎らしい安定感のあるトラベルミステリーだったかと思います |
No.6 | 6点 | 殺人偏差値70- 西村京太郎 | 2024/12/22 00:20 |
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西村京太郎によるノンシリーズ物の短編を収録した短編集
氏の代名詞であるトラベル・ミステリー物はなく、十津川警部も1編にゲストで登場する程度で基本登場しない そんな本書の中身だが、嘘の爆破予告をして受験に間に合った浪人生、沈没しながらも全員生還した奇跡の漁船、TVで紹介された人力車曳きの女性、自殺を図った有名レーサーの恋人、謎の失踪を遂げる官僚、秘密を売買する謎のクラブ、罠に掛けられた新社長、助けを求める旧友ーと、なかなか個性的な話が収録されてます 中でも初っ端に収録されている「受験地獄」は発想から皮肉なオチまで面白くて好きな作品です 漁師にまつわる問題を根底にした作品や、マスコミ業界に関わる問題提起的な作品もあって、短編とはいえ満足感はある収録内容だったかと思います |
No.5 | 7点 | 京都駅殺人事件- 西村京太郎 | 2024/12/15 07:58 |
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西村京太郎作品でお馴染みの十津川警部が活躍するシリーズの一つで、特に『駅』に特化して書かれた「駅」シリーズ(「終着駅殺人事件」や「札幌駅殺人事件」などが該当)に属する作品となります
今作の舞台は京都駅で、東京で1人の青年が殺害された事件をきっかけに、醜悪な京都駅を破壊しろという脅迫文が京都駅に送り付けられる事態へと発展していきます 本書には「長編推理小説」とは書かれてますが、本作はミステリーというよりサスペンスの色が濃いです。ついでに言えば、以前、西村京太郎の別作品をレビューした際にも言ったエンターテイメント性の高い作品でもであるかと思います 爆弾を盾に京都駅を脅し、警察を振り回す犯人の目指す先と、なんとかして先回り(逮捕)を試みる十津川警部や京都府警。両者の、暖簾に腕押し的な対決が読んでいて面白い おそらく割と初期の作品であるからか話が練られている印象もあり、勢い任せではない程良い重厚感もあって読み応えのある良作かと思います |
No.4 | 6点 | 裏切りの特急サンダーバード- 西村京太郎 | 2024/12/14 11:50 |
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西村京太郎と言えば十津川警部と鉄道物、トラベルミステリーが有名だが、読み応えのある作品を選ぶなら初期の作品の方が優れていると思う一方、500を超える著作の中にはエンターテイメント性に富んだ作品も数多い
この作品もそんなエンターテイメント性の高い作品の一つで、とある資産家の男が、金と話術で取り入った6人の男女を利用して特急サンダーバードを占拠し、爆弾と乗客を人質に莫大な身代金を奪い去るストーリーとなっている 正直言ってラストの資産家の男と十津川警部の対決は肩透かし感というか、わりと周到なイメージを抱いていた男(資産家)がそんなミスというか感情的な事するか?とは思ってしまい、そこら辺に話を無理に締めた感じが見え隠れしてしまうが惜しい所 とは言え、西村京太郎らしい読み易さと、テンポの良さでスラスラ読めるのは読み物として十分魅力的だと思います |
No.3 | 4点 | 消えたなでしこ- 西村京太郎 | 2024/12/03 23:58 |
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お馴染みの十津川警部が活躍する作品で、西村京太郎作品で度々見られる誘拐物の一作です
今回、誘拐されるのはなでしこジャパン。なかなかのビッグネームで、興味がそそられます して、その中身ですが、なでしこジャパンがチーム丸ごと誘拐される根幹は面白いものの、事件の流れそのものは良かれ悪かれ平坦だった印象 どうしても氏が書いた誘拐物の最高峰「華麗なる誘拐」と較べてパワーが低い上に、似たプロットで読売ジャイアンツの選手が誘拐される「消えた巨人軍」が既にある為、二番煎じは言い過ぎにしても正直新鮮とは言い難い。同じ十津川警部が活躍する誘拐物でも「ミステリー列車が消えた」や「ダブル誘拐」の方が作品としての質は高かった気がします 軽い読み物としては十分楽しめる反面、満足感はそこまで望めない。そんな作品でした |
No.2 | 6点 | 終着駅殺人事件- 西村京太郎 | 2024/12/02 19:05 |
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西村京太郎といえば十津川警部で、更に言えばトラベルミステリーの印象が圧倒的に強い
本作も例に漏れず十津川警部が指揮を執る鉄道ミステリーであり、氏の代表作の一つと記憶している その内容はと言えば、アリバイ、密室、動機と幾重にも謎が絡み合い、特に最後の最後に明らかになる決定的な動機に関して言えば脱帽と言ってもいい塩梅。正直、犯人の側からしたら友人を皆殺しにするくらいの殺意も湧くだろうよ、と納得出来てしまった とりあえず、西村京太郎に関しては作品数が膨大であるが故にパターン化している所もあって当たり外れが極端な印象を持っていますが、この『終着駅殺人事件』然り氏の初期の作品は話がよく練られていて面白いですね |
No.1 | 8点 | 華麗なる誘拐- 西村京太郎 | 2024/11/09 05:24 |
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比較的規模の大きな事件を扱う探偵・左文字進シリーズの2作目で、昔とあるTVドラマの劇場版の原作に使われた事を知り、その当時に読んだ作品です
まず、日本国民を全員誘拐するというぶっ飛んだ発想が好きな好きな作品で、その大掛かりな発想を軸に読み易い文章でグイグイ読み進められる為、誘拐ミステリーの名作と評されるのも頷ける内容となっています もっとも、これが書かれた年代が年代な為、(私が最初に本書を手に取った十数年前ですら)最後のオチがチャチに感じるのは致し方なし…。当時は今のようなネットバンクもなければ、そもそもネットも普及してない時代でしょうし、そこは現代の感覚で読むと「なんだかなぁ」となるのはやむを得ないかなと改めて思った そこを抜きにしても、飛び抜けた発想に面白さが詰まった名作だとは思うし、個人的にはトラベルミステリーで名高い西村京太郎作品の中でもトップクラスに好きな作品という事に変わりはないので問題はないわけですけどね |