海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

みりんさん
平均点: 6.66点 書評数: 385件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.11 7点 喜劇悲奇劇- 泡坂妻夫 2024/09/27 11:08
相変わらず奇術がお好きな泡坂妻夫の第6長編!第5長編『迷蝶の島』に引き続き、船内が舞台。

【以下鋭い方にはネタバレになるかも】


前作にはない楽しみとしては、奇術師集団であることを活かしたハウダニット。奇術師とミステリ作家って、聴衆を欺くトリックを思索し続けなければならないという点で親和性の高い職業ですな。
そしてなにより回文のオンパレード。ミステリの構造が回文そのものだったというところに本作最大の狙いがあるように思えました。ことごとく登場する回文にもよくぞここまで思いつくものだなと感心しましたが、何気に↓の虫暮部さんのオリジナル回文(?)がそれなりに物語の概略となっており、完成度が凄まじいです。

No.10 7点 迷蝶の島- 泡坂妻夫 2024/09/08 21:31
長編は極めて本格プロットだった泡坂妻夫(たぶん)、第五長編ではじめてサスペンスに舵を取る。
清涼感あふれる青春の幕開けかと思いきや愛憎渦巻く三角関係へと発展し、中盤以降は船と孤島でのサバイバル。本格成分薄めでありながら、小説として大変面白くて一気読みしてしまいました。そして毎度アーサカさんに騙される私。
精神科医の分析がいい味出しています。逆にこれがなかったらアンフェアとまではいかなくても不満だったかも。

No.9 7点 煙の殺意- 泡坂妻夫 2024/09/08 12:26
うーんこの人今のところハズレがない。すごい。
いつもの泡坂流逆説が楽しく、なかでも『椛山訪雪図』は芸術的な域の"騙し"に仕上がっています。『歯と胴』は短編集の中では一風変わった倒叙もの。某技術は1980年頃には既にあったのか…現代ほど浸透していたら、逆に特定には繋がらないだろうなと。『開橋式次第』の鮮やかな伏線と論理は『亜愛一郎の狼狽』を彷彿とさせ、読後清々しい気持ちになります。特に上記の3つが気に入り、泡坂短編集の最高傑作との評価にも頷けます。まだ短編4作しか読んでないけど。

No.8 7点 花嫁のさけび- 泡坂妻夫 2024/04/04 23:40
また騙されちまった! 泡坂妻夫の騙しの業には今のところ全敗。

【直接的なネタバレはありませんが、未読の方は読まないことを推奨】

序盤はロマンス溢れる雰囲気で悪くはないが、血みどろの惨劇を求める私のような読者にとってはかなり退屈だ。しかし、恩田陸の解説によるとこれらはすべてダフネ・デュ・モーリア作の『レベッカ』という名作小説を下敷きにした壮大なミスリードだったらしい…!私のように古典の教養がないと、こういうオマージュが楽しめなかったりする(笑)
んで、その仕掛け以外の密室トリックですが、ありきたりすぎて驚きはなかったですね(気づけはしませんでしたが)
騙しの姿勢と密室トリックが相殺して6点 レベッカ読んだ自分に+1点


恩田陸が解説で、"「あっと驚くトリック」を求めて巷を徘徊する本格ミステリのファンとして読んだ時は衝撃を受けなかったが、同業に手を染めてこの作品の凄さがわかった"的なことを書いているので、玄人好みの作品だと思います。私はまだ前者です笑

結論:古典と触れ合うことは大事!

No.7 8点 湖底のまつり- 泡坂妻夫 2024/03/27 15:12
「乱れからくり」「11枚のとらんぷ」「しあわせの書」などと比べて退屈な部分がなく、これは泡坂妻夫の中でも屈指のお気に入り作品になりそうです。密室等の不可能犯罪さえあれば9点以上は確実だったと思います。
ものの見事に騙されました。アレは意味のある描写だったのですね。
これは自虐風自慢ですが、「途中でトリックが分かってしまった」系の書評が多い作品ですら、自力で気付けた試しがありません(笑) ミステリ好きとして幸せな脳細胞です。

※関係ない余談
この2重トリックの方向性で2000年代の某作品が思い浮かびました。この作品が元ネタかなあ?と思ってその作者のX(旧Twitter)で「泡坂」でキーワード抽出を行うと、なかなか心酔しておられるようで…
こじつけるには少し遠いような気もしますが、もしかしたらこの作品から着想を得たのかな…?

No.6 7点 亜愛一郎の逃亡- 泡坂妻夫 2023/08/13 05:59
徹夜で読んでしまった。亜愛一郎と出会ってからわずか2日でお別れの時が来たようだ…
亜愛一郎、名探偵ランキングを作るなら間違いなく上位の逸材である。(当然1位は京極堂w)

今作『逃亡』は"何を推理するのか"を推理する所から始まるお話が多い。難易度激高です。
狼狽の『DL2号機事件』と転倒の『藁の猫』のような"超次元ロジック"は今回も『歯痛の思い出』にて健在。一見関係のないように見える出来事も論理の飛躍のためには重要な要素となってくるのが気持ち良い。この超次元ロジック作品(?)は泡坂センセーの他に書いてる人いないのか??って思うくらい楽しかった。
表題作『亜愛一郎の逃亡』ではシリーズ最大の謎、亜愛一郎が何者であるのかが明かされるわけだが、読み終わった後、不覚にも寂寥感を覚えた。これはズルい。
ラスト1行の完璧さ。最後まで作者の遊び心満載のシリーズだった。

※ミステリとしては『転倒』を1番に推していきたい

No.5 7点 亜愛一郎の転倒- 泡坂妻夫 2023/08/12 15:31
こ〜れは読んでいて楽しい。ヒジョーに楽しい(^^)
なんだ『狼狽』より『転倒』の方がイイじゃん。
『狼狽』に比べたらハズレもあるけど『転倒』の方が3発くらいガツンと来たよ。

気に入ったの3つ挙げると『藁の猫』『意外な遺骸』『病人に刃物』
『藁の猫』は狼狽の『DL2号機事件』っぽい。完全を忌避する人間の心理をついたロジックのマジック(?) いや〜実に素晴らしい。
『意外な遺骸』では趣向を偏重する犯人が登場するが、遊び心満載の泡坂妻夫そのものじゃんね。
『病人に刃物』 もしこれが無かったら『狼狽』を超えたとは思わなかっただろうってほど驚いた。これこそINPERFECT INSIDERにふさわしい。

『三郎町路上』の響子姉さんの再登場を願いながら『逃亡』に進みます

No.4 7点 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 2023/08/11 14:18
泡坂妻夫の中では世間的に1番評価の高い作品かな?というだけあってどれも無難に面白い。しかし『しあわせの書』で作者の変態ぶりに衝撃を受け、『乱れからくり』の美しさに感銘を受けた私としてはいささか物足りない。上記と違って短編だから仕方ない部分もあるけど、こう何か一発ガツンと来るものがなかった。

1番面白かったのは『掌上の黄金仮面』でこの反転は流石に見事でした。「あ、この作者そういえば変態だったなあ」と再確認したのは私史上最高難度の暗号が登場する『掘り出された童話』ですかねぇ。でもね〜とある人間の心理を深く突いたロジックのマジック(?)『DL2号機事件』とこれぞザ・本格『曲がった部屋』も捨てがたい。
いや、やっぱり世評通りのすげえ濃密な短編集な気がしてきたぞ。

連城とか泡坂とか幻影城出身の方って連載形式だから短編が人気になりがち?

No.3 6点 11枚のとらんぷ- 泡坂妻夫 2023/07/25 17:04
ロジックよりトリック派の私は断然「乱れからくり」の方が好みでした。

作中作でおお!って思ったマジックは「予言する電報」と「パイン氏の奇術」ですかね

No.2 8点 乱れからくり- 泡坂妻夫 2023/07/24 16:03
せ、1977年刊行!?刊行から40年以上経った今更泡坂妻夫の天才ぶりに驚愕しています。

【ネタバレします】


皆様の書評を見ると、犯人はわかりやすい方なのでしょうか。私はヤツが犯人であると1%も頭に浮かぶことはありませんでした。トリックの緻密さもさることながら、1番感心したのはねじ邸に迷路を作った理由でした。まさか迷路が○○の役割を果たしているなんて… そして犯人の最期のセリフも良いですね。
犯人が財産目的な以上、からくり身上オチにはできないのがもったいないな〜
おもちゃ蘊蓄がちょっと退屈すぎるのが欠点か

No.1 7点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術- 泡坂妻夫 2023/07/23 15:39
おおおおこれはすごいな 泡坂妻夫は変態だ。似たような趣向の作品を読んだことある(当然刊行年はしあわせの書の方が先)けれど、こちらの作品の方が大変な労力を必要としそう、たぶん。
小説として面白いかは置いといて、作者の変態的なこだわりに敬意を表してこの点数。



【ネタバレあり】


序盤はまったくと言っていいほど文章が頭に入ってこなくてこの作家とは致命的に合わないかもしれないと思っていたら、それはこの作品のギミックによるものだったのかもしれません。

キーワードから探す
みりんさん
ひとこと
(未登録)
好きな作家
(未登録)
採点傾向
平均点: 6.66点   採点数: 385件
採点の多い作家(TOP10)
夢野久作(21)
連城三紀彦(20)
島田荘司(20)
江戸川乱歩(17)
エドガー・アラン・ポー(15)
三津田信三(15)
綾辻行人(12)
白井智之(12)
泡坂妻夫(11)
アントニイ・バークリー(10)