皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ぷちレコードさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 242件 |
No.5 | 6点 | 巴里マカロンの謎 - 米澤穂信 | 2024/02/03 22:31 |
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中学時代の失敗から、目立たたずに生きることを旨としている高校生の小鳩君と小山内さんが、日常の中で小事件に遭遇するというのが物語の基本形式。小市民的な体面を崩さずに、その謎を解くことが彼らにとっては重要なのである。
表題作を含めお菓子の名前を配した短編が並んでいるが、動機を問うものや犯人捜しをするものなど、提示される謎の種類がすべて異なっている。「花府シュークリームの謎」は、手掛かりの出し方が抜群に巧い。 |
No.4 | 7点 | 追想五断章- 米澤穂信 | 2023/05/30 23:07 |
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叔父の古書店で店番をしている青年が、客に頼まれて奇妙なアルバイトを引き受ける。依頼人の父親が生前に書いた五つの短編小説を探し出す仕事である。
そのうち四編は古い同人雑誌などの載っているのが見つかったが、なぜかいずれも結末の一行を伏せたリドル・ストーリーになっていた。調査を続けるうちに、彼は未解決のまま終わった「アントワープの銃声」事件に行き当たる。二十二年前のその夜、依頼人の両親の間にいったい何があったのか。真相はその最後の一行に隠されている。 小説の中に別の小説を組み入れて、異なった時制の物語を同時進行させる手法は珍しくない。しかし、このように五編の「小説中小説」が緊密に組み合わさってひとつの物語を構成するミステリは、あまり無いのではないか。 |
No.3 | 6点 | 秋期限定栗きんとん事件- 米澤穂信 | 2022/09/11 22:08 |
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扱われるのは連続放火の犯罪とはいえ、死者は出ない事件である。新聞部内部の路線対立。学校の生活指導部と新聞部で生じた摩擦。また、小山内は恋人の瓜野、小鳩は友人の堂島部長を通じて新聞部に接近する。ここには高校生たちの駆け引きがあり、大げさな言い方をすれば政治的暗闘が展開されている。本書では小鳩の推理とともに、そんな駆け引きの面白さも読みどころになっている。 |
No.2 | 5点 | 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 | 2022/02/23 22:35 |
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学園ものの連作ミステリ。一見、命の生々しさとは無縁のように思える。だが、読み出してすぐに印象は変化する。平穏を至上の価値として「小市民」を目指す高校一年生の男女が巻き込まれる小事件の数々。
この徹底的な爽やかさとひ弱さが、我々の命がナマモノであることを強く感じさせる。 |
No.1 | 8点 | 満願- 米澤穂信 | 2020/03/27 19:37 |
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人間誰しもが持っている弱く痛い部分を突かれるような、じわじわと締め付けられるような怖さが少しずつ迫ってくる。
後味は不穏であり不気味で背筋がゾクゾクして、でもそれが何とも魅惑的でどんどん深みにはまって抜け出せない。 極上のストリーテラーによる至福の短編集。 |