皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
zusoさん |
|
---|---|
平均点: 6.29点 | 書評数: 230件 |
No.9 | 8点 | ゴールデンスランバー- 伊坂幸太郎 | 2023/08/03 22:14 |
---|---|---|---|
ケネディ大統領暗殺事件と酷似した首相暗殺事件が仙台市内で起きる。
無実にもかかわらず事件の犯人として追われる青柳雅春という青年が主人公だが、彼の視点から語られる話と交互に、かつて青柳の恋人だった樋口晴子の話が重要な副旋律として奏でられる。 青柳の友人や元同僚との過去のエピソードも交えつつ緻密に構成された物語は、最後に意外な結末を迎え感動する。 |
No.8 | 6点 | 陽気なギャングは三つ数えろ - 伊坂幸太郎 | 2023/04/20 22:31 |
---|---|---|---|
銀行強盗の四人組は、ハイエナ記者に付きまとわれる。更に当たり屋、痴漢冤罪などの災厄が続き、ある組織と対峙することに。悪徳記者と組織を敵に回して、どう危機を乗り越えるのか。
まず窮地に立たされ、打破していく手続きが周到。もっとサスペンスと波乱があればと思わないでもないが、まずまずのスリルが味わえる。 響野の饒舌と賑々しくカラフルでユーモラスな人物の共演、悪党たちと渡り合うゲームの展開は、洗練された犯罪コメディといえる。 |
No.7 | 7点 | ラッシュライフ- 伊坂幸太郎 | 2022/12/22 22:51 |
---|---|---|---|
発端と結末を繋ぐのは、傲慢な拝金主義者に、どん底の人間が意地を示し一矢報いるまでの経過。それだけならありがちな「ちょっといい話」。ところが発端と結末の中間に、皮肉な偶然に彩られたストーリーのパズルが挿入されているために、ニュアンスが複雑になっている。
作中では、仙台駅の近くの展望塔に関する言及が何回も出てくる。しかし、登場人物が塔に上り下界を見渡す場面自体は、最後まで描かれない。このことは、各自のストーリーを生きる彼らが、五つのストーリー全部を展開する能力を持たないのを象徴している。 個々のストーリーに閉じ込められた人生。パズル的構成で浮かび上がる苦みがここにある。 |
No.6 | 5点 | ペッパーズゴースト- 伊坂幸太郎 | 2022/07/19 22:14 |
---|---|---|---|
主人公は中学校の国語教師の檀で、彼には「飛沫感染」すると相手の明日を垣間見ることができる特殊能力があり、生徒の事故を防いだために生徒の父親と知り合い、テロ事件へと巻き込まれていく。
本書が面白いのはそれと並行して、生徒が書いた小説が展開することだろう。その小説が中盤になってメインの事件と複雑に絡みだしてねじれていく。思わず脱力してしまうユーモアが光るメタフィクション的趣向、複数の伏線の見事な回収、そして最後の最後に明らかになる事件の真相も鮮やか。ただし、犯行計画の動機は納得しかねる。 |
No.5 | 5点 | 重力ピエロ- 伊坂幸太郎 | 2021/03/17 22:25 |
---|---|---|---|
ミステリですが、家族について考えさせられる小説。お父さんの台詞が印象的で、テーマは重いのに物語は温かく爽快。 |
No.4 | 6点 | アヒルと鴨のコインロッカー- 伊坂幸太郎 | 2021/03/06 23:24 |
---|---|---|---|
現在と過去が同時に描かれるカットバック形式の小説。ミステリなのかコメディなのか独特の雰囲気を持っており、途中はどうなるかと思ったが、読み終えると不思議と優しい気持ちになる。 |
No.3 | 5点 | サブマリン- 伊坂幸太郎 | 2020/07/02 18:54 |
---|---|---|---|
ちょっと馴染みのない仕事、少年事件を扱う家裁調査官の物語。
少年たちが起こした、正義と悪が交差する犯罪。世の中の不条理に息苦しくなる。けれど、そこ伊坂作品。面倒くさいけど愛すべき登場人物たちに救われる思いがする。 |
No.2 | 6点 | 砂漠- 伊坂幸太郎 | 2020/02/17 20:46 |
---|---|---|---|
東北の大学が舞台で、キラキラした風情の青春小説。
青春のカッコ良さよりも、カッコ悪さ、まの悪さ、取り返しのつかないことが書かれたりしていて、共感できる部分も多かった。 でも、ミステリとは言えないですよね。 |
No.1 | 8点 | 死神の精度- 伊坂幸太郎 | 2020/01/31 20:44 |
---|---|---|---|
六編からなる短編集で登場する死神は、死の国の調査委員で、担当する人間が死ぬのにふさわしいかどうか、身辺調査をして情報部に報告するのが仕事。調査期間中には、ストーカー問題がおき、ヤクザの抗争に巻き込まれ、殺人事件の現場に居合わせ、恋のキューピッド役になり、自殺行につきあわされetc。
クラシックな密室殺人劇あり、昔のハリウッド映画を思わせるサプライズ・ストーリーありの各編は、大なり小なりミステリの骨格を保って、絶妙にリンクし、死神はいつもちょっとした探偵の役割を果たす。 構成を含めた作品的な巧みさで言えば、「死神の精度」「恋愛で死神」「死神と老女」の三編だと思うが、個人的には感動したこともあり、「死神と藤田」「旅路と死神」が好みです。 |