皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ことはさん |
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| 平均点: 6.19点 | 書評数: 303件 |
| No.6 | 5点 | Iの悲劇- 米澤穂信 | 2025/11/23 21:59 |
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| 連作全体を貫くテーマとして「地方自治の問題」が設定され、各短編にはいつものように謎と解決があしらわれている。謎と解決の部分は、相変わらずの米澤節で、やや小粒な印象だ。全体を通してのミステリ的趣向もあるが、あまりインパクトは感じなかった。
私は、米澤の「青春もの」以外は、どうも琴線にひびかないので、うん、まあ、この点で。まあ、完全に好みの問題だが。 でも、描写や展開がよいので、読みやすく、一気読み。小説としての質は高く、テーマ性と構成の確かさは十分に感じられる作品だった。 |
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| No.5 | 8点 | 秋期限定栗きんとん事件- 米澤穂信 | 2025/06/15 23:18 |
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| 再読。これも1回目より楽しめた。1回目は、前作までの「日常の謎」のイメージに強く引きずられて、謎と解決に期待したため、戸惑いが大きかったのだと思う。今回は「連続放火事件を間に挟んで、小鳩くんと小佐内さんが、なにを感じて、どのように行動したか?」を中心に読んだので、実に楽しかった。
「日常の謎」としては、小鳩くんパートの「バス」「泥棒」「トマト」の3エビソードくらいで、これらは謎と解決としては相変わらず小粒。しかも、全体の物語からの位置づけは、「知恵働きをアピールできず、楽しめない小鳩くん」のエピソードといったところ。だからなのか、それよりも小鳩くんパートで印象に残るのは、小佐内さんに言及される何箇所かだった。 やはりこれは、小鳩くんと小佐内さんの物語なのだと思わされる。「自身の感情を感じ取ることができないために、他者の感情もわからない」小鳩くんと、「他者を支配するだけで、理解できないし理解する気もない」小佐内さんの、すこしピントのずれた青春物語だ。 小鳩くんが中丸さんとする会話はすべて「わかってないな、小鳩くん」というものだし、小佐内さんの「雪に足跡をつけるときにどうするか」の会話は、いかにも小佐内さんらしい。 ふたりの関係を描くことにおいては、本作は会心の出来だと思う。「春」「夏」では、ふたりの掛け合いだけだったが、本作でそれぞれに別の相手をあてて、その相手と掛け合いをさせることで、それぞれのキャラクターの「周囲との関係性」を浮き彫りにし、それをふまえて、あらためて「ふたりの関係性」を振り返させる。これにより「ふたりの関係性」は、層を増し、深みを増す。抜群にうまい。 この後に、作者が「冬」をなかなか作れなかったのは、「ふたりの関係性」について、「あらたに書くことを思いつかなかったのでなないか?」と想像してしまう。「秋」を再読した今、あらためて「冬」の「ふたりの関係性」について考えると、「秋」でかたまった内容に、「エピソード0」と「エピローグ」を付け加えただけのように感じるからだ。 アニメ(2025春期)も見たので、ちょっとだけ感想。 原作のページ数とアニメのエビソード数から想定していたが、だいぶ駆け足。小鳩くんパートの「日常の謎」エピソードは、「トマト」以外カット。「トマト」の回のネット感想では「トマトイーター」なる単語が飛び交っていて、ネットの命名力はさすが。中丸さんはキャラデザと声がとてもキュートで、ここは個人的な見どころだった。小佐内さん役の羊宮妃那さんは相変わらずよい。 |
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| No.4 | 7点 | 巴里マカロンの謎 - 米澤穂信 | 2025/02/09 17:54 |
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| 「冬期」が書かれる前の本サイトの感想には、「このシリーズは今後どうなるの?」「終わらせずに今後も続く?」などと書かれていて、本サイトの投稿者をやきもきさせた(?)が、「冬期」できれいにふたりの関係性に結がついたので、「春・夏・秋・冬がメインストーリーで、本編は番外編」という位置づけにおさまったと考えてよいだろう。
春・夏・秋・冬は「ふたりのキャラ/関係性を描く」ことが主で、「謎と解決」は従だったが、本作は、「ふたりの関係性」を固定して「謎と解決」の方を主にしている。そのため、「謎と解決」に関しては、本作がシリーズでいちばん良い。意外性は大きくないが、納得感はある解決で、伏線のはられ方も、じつに良い。 Wikiによると、本になっていない作が3作あるとのことだが、早くまとまらないかなぁ。楽しみだ。 あと、この手のノリなら、アイディアが出ればいくらでも続けられるので、「冬期」以降の大学生編も作者の意思があれば可能なのだが、無いよね。出たら絶対買うのになぁ。 春・夏と同様、これもまた再読だが、これもまた初回より楽しめた。全体にちりばめられているユーモアがよかった。10年のブランクで小佐内さんのキャラがまるくなったのか? 演出は間違いなく春・夏よりうまくなっている。1作ずつ見てみよう。 「巴里マカロンの謎」。謎解きの動機に無理がないのが展開をスムーズにしている。春の「おいしいココアの作り方」なんかは、「その疑問にこだわらなくても……」と思ったが、本作で「店員を呼ばない」と決める理由が、いかにもキャラらしい理由で、ストーリーの流れをじゃましない。冒頭の名古屋に向かうところでも、「なにするのか言ってなかった」あたりのやりとりが楽しいし、推理の途中でも「ガナシのフィーリング?」をはじめ、ボケとツッコミの間合いが多く楽しい。謎解きは小粒でも、会話の楽しさで読ませる。 「紐育チーズケーキの謎」。導入部、チーズケーキの感想を語りあうところから、キャラのたった会話で実に楽しい。「そういうことなのよ、小鳩くん」という会話の締めまで実にいい。事件途中、古城さんが理由も聞かず走り出すときに語りで小鳩くんがツッコミをいれるところや、「それにはおぼやないわ!」という言い間違えなど、全編、いろいろと楽しい。謎解きもシリーズで上位で、満足度の高い一編。 「伯林あげぱんの謎」。犯人当てとして作られたためか、謎の検証はいちばん力がはいっている。そのためか、逆に、作内のユーモア分は薄くなっているが、ユーモア分はラストで全回収しているので、バランスのいい良作。 「花府シュークリームの謎」。謎解きとしてては、冒頭のxxxxxやxxが伏線として立ちあわわれる展開がよい。インタビューによると、作者の初期構想では、ふたりの立ち位置は「ハードボイルの探偵」と「名探偵」とのことなので、それからイメージすると、これは”いかにも”というストーリー。こういう”「行動力」と「推理力」の組み合わせで事件が解決される”話をもっと作ってほしいなぁ。ふたりの会話は、他作品以上にバディ感があって、そこもグッドポイントだ。 |
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| No.3 | 7点 | 夏期限定トロピカルパフェ事件- 米澤穂信 | 2024/11/16 18:33 |
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| 再読なので、ふたりの対決としてみられた。結果、1回目より全然面白かった。例えるなら、ガニマール警部対アルセーヌ・ルパンというところか。
これも、初読時は「謎と解決」に期待していたから、「小粒過ぎる」と評価できなかったよ。ケーキのごまかしや、半の意味、場所当てでは、ちょっとなぁ。 小鳩くんと小佐内さんの立ち位置や関係性は、春期以上に掘り下げられ、ラストの落とし方も含めて、じつに面白い。夏秋冬はどれもいいなぁ。 発売当時はそんな言葉は知らなかったが、いま読むと、ふたりはアセクシャルかアロマンティックかもしれないと思った。 あと、いま本サイトを見ると、案外点が低いのね。まあ、初読時の自分の評価を思うと、これはしょうがないのかも。 アニメ(2024夏期)も見たので、ちょっとだけ感想を。 1話を「巴里マカロンの謎」からもってきて、「夏期」は4話と半分で描かれ、最後の半分は「秋期」のイントロ。2025春期で秋冬のアニメ化とのこと。やはり「謎と解決」に目がいってしまい残念。ポイントで描かれる小佐内さんのダーク表情はとてもよいので、そこは見どころ。でも、やはり、この話の面白さはふたりの心理戦なので、これを描くには小説に分があるよなぁ。 |
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| No.2 | 6点 | 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 | 2024/11/16 18:32 |
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| 昔、読んで「日常の謎」が主と思っていたが、「日常の謎」のウェイトは半分だ。
例えば、「おいしいココアの作り方」のページ数でみると、40ページの話で、謎の検討と解明は20ページくらいだ。では、ほかは何かというと、最終話につながるフリと、小鳩くんと小佐内さんのキャラクター描写。 「謎と解決」だけみると、どうでもいいことを検討している感じで、あまり面白みは感じないが、ふたりの立ち位置や関係性は面白かった。初読時は「謎と解決」に期待していたから、「なんか違うな」と思ったが、今回はわかっていたので、楽しめた。 帯が手元に残っているが、「コミカル探偵物語」とあって、小鳩&小佐内コンビの面白さを表現するのに、試行錯誤した結果なのかなと想像する。成功している気はしないけど。 あらためて思い返しても、まったくもってストレートな「日常の謎」ではない。謎を名探偵が解いて「よかった、よかった」となっていないからだ。「羊の着ぐるみ」、「For your eyes only」、「おいしいココアの作り方」、「はらふくるるわざ」、「狐狼の心」。どれも小鳩くんの探偵活動は「意味がなかった」ことになっている。なんともひねくれた話だ。 アニメ(2024夏期)も見たので、ちょっとだけ感想を。 風景は美麗。主題歌はOP/EDとも、背景絵と共にとてもよい。小鳩&小佐内コンビのキャラデザは美形になりすぎ。だけど、これはアニメ化するにあたっては、しょうがないかな。でも、まとっている雰囲気や声と口調はピッタリ。特に、小佐内さん役の羊宮妃那さんはいい。なかでも「おいしいココアの作り方」の「ちっちゃい子?」の言い方はグッジョブ。「春期」は4話で描かれ(「For your eyes only」はアニメ化されなかった)、やはり「謎と解決」に目がいくので、地味過ぎる。 |
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| No.1 | 7点 | 冬期限定ボンボンショコラ事件- 米澤穂信 | 2024/08/16 15:53 |
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| うまい。1章50ページで、章の区切りごとに一息つける構成がよい。過去と現在の行き交い方も自由自在。春、夏と比べたら、断然うまくなっている。事件も相変わらずビターだし、中学時代の小佐内さんも可愛いし、期待通り。
解決に無理がある(それを期待して行動するなんて、無理があり過ぎて納得行かない)けど、それはシリーズのいつものことだしね。 でもこれでシリーズ完結かぁ。Wikipediaをみると、「""都市""""スイーツ""の謎」の短編3作が、まだ単行本未収録なので、もう1冊短編集はでそうだが、その後は無いのだろうな。 アニメもはじまりましたが(2024/7-)、映像は美麗だが、アニメとしてはプロットが薄味すぎかな? |
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