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ことはさん
平均点: 6.28点 書評数: 254件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.9 5点 罰金- ディック・フランシス 2024/09/08 19:13
終盤、主人公がおちいる状況は最悪。(褒め言葉です)これは嫌だなぁ。ここはヒリヒリした。
それに、知り合いが自殺する導入はよい。これは引き込まれる。
しかし、それ以外が、いまひとつ。
1つは詐欺の話だが、これがバレずにできていたというのも、どうなのかと思うし、後半の悪役の行動は、ハリウッドのアクション映画ばりのバカ行動でしょう。そんなことしたってなんにもならない。
2つめの話は、主人公のプライベートの状況だが、最初に書いたように、終盤に主人公がおちいる状況をやりたかったための設定だと思うが、時代もあるが、今読むと、主人公の恋愛観(肉欲感?)がクズ。最後の2行は特に最低。
ほかには、群像劇をやろうとしてうまくいっていないのかな? 最後のレース・シーンで、前に少し出番があった騎手がでてきたりなどして、複数のキャラの動向がレースで区切りがつくようになっているのだが、前振りが弱くて印象に残らない。
フランシス作では、どちらかというと失敗作だと思うが、MWAをとっているのが不思議だ。

No.8 6点 飛越- ディック・フランシス 2024/08/26 01:23
さらにつづけてフランシス。
本作のストーリーは、あまり紆余曲折なく、一本道だ。 前半は主人公の人生の悩みが主で、ネオ・ハードボイルドの作にあった、ライフ・スタイル小説の趣を思い出した。この辺の雰囲気も含めて、クリスティ再読さんの評で”ハイソで上品な「ロッキー」みたいなもの”とあるのは、実に的確に感じる。さすがです。
終盤、急展開の場面には驚いた。それからは一気呵成で楽しめたが、どうなったかわからないでおわるところがあるのは気になる。エピローグがあればいいのに。

No.7 5点 血統- ディック・フランシス 2024/08/26 01:12
フランシスをつづけて読む。今度は初期の頃の作を手にとる。
本作、ハヤカワ・ミステリ文庫「名門」の池上採点表では満点だが、失敗作だと思う。
主人公がある願望をもっている設定だが、それが実感をもつところまで掘り下げられないので、どうも惹きつけられない。
ストーリーは、あまり紆余曲折なく一本道で、簡単に犯人にたどりつきずきだし、主人公のピンチの場面も、定型のためハラハラしない。
ラストになると、主人公とある人物の関係に焦点があたるが、そこまで二人の関係を描いてきていないので(主人公と他の人物との関係のほうが丁寧に書かれていると思う)、胸に迫ってこない。
描写がよく、いいシーンもあるので、つまらなくはないのだが、それらをうまく活用できていないと思う。
あと、本作、冒険小説風味よりハードボイルド風味が強い。池上さんは、各種書評から、きっと冒険小説風味よりハードボイルド風味が好きだと私は思っているが、だから本作が好みにあって満点だったのだろうなと思う。

No.6 7点 反射- ディック・フランシス 2024/08/26 00:55
これはうまいなぁ。「写真の謎を解く」、「騎手としての進退」、「妹を探す」の3つの話が、主人公の人生の岐路に関わってくる。
それぞれの話は事件として直接つながるところはないのだが、3つの話とも「主人公の選択」への影響が感じられて、奥ゆきがある。
ミステリ-としてのシャンル的面白さより、小説としていい小説だ。
終盤、主人公が苦難にみまわれるところはフランシス印。これも主人公の決意に関わってきていい。
やはり、フランシスはこの時期のものが好みに合いそうだ。

No.5 5点 興奮- ディック・フランシス 2021/10/16 17:28
久しぶりに読むフランシス初期作品としては、最も有名な本作を選んでみた。
(再読なのだが、不正の仕掛け以外はなにもおぼえていなくて、初読のようだった。昔の記憶、どんどんなくしてるな……)
このサイトの書評を色々読んで、初期はメイン・ストーリー中心と思っていたが、それはそのとおりだった。また、私は他フランシス作の感想に「フランシスについては、メイン・ストーリーよりサブ・ストーリーのほうが好み」と書いたが、それもそのとおりだった。
楽しく読めたのだが、「面白いっ!」と感情が動かされるほどではなかった。
冷静に要因を考えてみると、主人公があまりにストイックであり、感情描写もすくなかったため、共感できなかったためだと思う。ハラハラドキドキさせる小説では、主人公の感情に寄り添えることが重要なのだとあらためて認識した。(中期フランシスでは、もっと感情描写があると思う)
構成としてもひとつ疑問があった。ラストの章がやや唐突に感じたのだが、これは「事件が主」で語られているからだと思う。「主人公を描くことが主」で、事件は主人公を描く手段とおもえるほど徹底したほうが、効果的だったのではないか。そうすれば、最後の1文など、主人公と一緒の感慨を感じられたのかもしれない。
やっぱり、フランシスは中期のほうが好きかなぁ。

No.4 5点 黄金- ディック・フランシス 2021/08/28 21:15
フランシスのイメージとは違い、これも家庭内ミステリだった。
HM文庫の解説によると、本作以降(解説執筆当時で30作まで)、冒険小説敵要素が薄まり、心理的葛藤の要素が強まるとのこと。
なるほど、「標的」も同じ流れなんだ。
前半、家族の群像劇を描いていく部分は、ヒッチコックのコミカルな作に似た雰囲気がある。ドタバタ喜劇の感じだ。中盤の事件から、喜劇感はなくなるが、強烈なサスペンスというわけにはいかず、ウェルメイドなフーダニットという感じ。
ううん、これは違うな。悪くはないんだけど、これでは、たくさんいる優良作家のひとりになってしまう。以前の作にはあった「フランシスだけの味わい」が消えてしまった。
これ以降の作を読むのは後回しだな。フランシスの未読作を読むのは、これより前を優先するとしようか。

No.3 8点 奪回- ディック・フランシス 2021/08/28 21:14
いやぁ、よかった。フランシスはまだ10数作しか読んでいないが、文句なしに一番良かった。
この頃のフランシスには、発表当時に人気があった「情報謀略小説」(クランシーとか)の影響だろうが、特定の業界をリサーチして反映した作品がある。本作は誘拐対処企業。これが興味深くて、前半からすぐに作品世界に入れた。
そして、ヒロイン役のキャラ造形がかなり好み。主人公との関係では、距離感が微妙で、その距離感もまた好み。
最後の展開はやや定形どおりだが、そこで伝えられるヒロイン役の言葉にはぐっときた。ベタでも、こういうのは好きだな。
アマゾンの感想で「初期の話とはだいぶ雰囲気が違う」と書いている人がいて、それは同感だが、きっと私は初期フランシスより、こっちの方が好き。
中期フランシス、いいなぁ。もう少し読んでみよう。

No.2 5点 標的- ディック・フランシス 2021/08/28 21:13
中期のフランシスをいくつか読んでみようと考えて、2冊目として手にとった。
意外なことに家庭内サスペンス。フランシスらしいのは、主人公の造形と、家庭が厩舎であること。事件の構成は、クリスティー作品にもありそうなもの。
家庭内サスペンスは好みでないので、全体的にいまひとつだった。
主人公が陥るラストの苦境は読み応えがあったが、それ以外の部分はいまひとつ。解決の付け方も気に入らない。
でも、もう少し中期のフランシスはいくつか読んでみよう。

No.1 7点 骨折- ディック・フランシス 2021/08/28 21:11
久しぶりのディック・フランシス。
フランシスを何作か読んだのはだいぶ前だが、世評の高い初期作品より、(2、3作読んだ)中期の作品のほうが面白かった記憶がある。
このサイトの書評を色々読んで、中期はサイド・ストーリーを膨らませているのだなと認識し、「なるほど、私はフランシスについては、メイン・ストーリーよりサブ・ストーリーのほうが好みなんだ」と思い、本サイトでサイド・ストーリーの評価の高い本作を読んでみた。本作のメイン・ストーリーが「敵との戦い」なら、サイド・ストーリーは「少年との交流」になる。
うん、これは確かにサイド・ストーリーのほうが好み。いいなあ、フランシス。ハードボイルド風の語り口。ストイックで有能な主人公。せまる敵。おそってくる苦痛。こういうものが一体となって「これがフランシス」という世界がつくられている。
これは、中期のフランシスをいくつか読んでみよう。

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ことはさん
ひとこと
ホームズ生まれの、クイーン育ち。
短編はホームズ、長編は初期クイーンが、私のスタンダードです。
好きな作家
クイーン、島田荘司、法月綸太郎
採点傾向
平均点: 6.28点   採点数: 254件
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