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ことはさん
平均点: 6.34点 書評数: 222件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.5 5点 興奮- ディック・フランシス 2021/10/16 17:28
久しぶりに読むフランシス初期作品としては、最も有名な本作を選んでみた。
(再読なのだが、不正の仕掛け以外はなにもおぼえていなくて、初読のようだった。昔の記憶、どんどんなくしてるな……)
このサイトの書評を色々読んで、初期はメイン・ストーリー中心と思っていたが、それはそのとおりだった。また、私は他フランシス作の感想に「フランシスについては、メイン・ストーリーよりサブ・ストーリーのほうが好み」と書いたが、それもそのとおりだった。
楽しく読めたのだが、「面白いっ!」と感情が動かされるほどではなかった。
冷静に要因を考えてみると、主人公があまりにストイックであり、感情描写もすくなかったため、共感できなかったためだと思う。ハラハラドキドキさせる小説では、主人公の感情に寄り添えることが重要なのだとあらためて認識した。(中期フランシスでは、もっと感情描写があると思う)
構成としてもひとつ疑問があった。ラストの章がやや唐突に感じたのだが、これは「事件が主」で語られているからだと思う。「主人公を描くことが主」で、事件は主人公を描く手段とおもえるほど徹底したほうが、効果的だったのではないか。そうすれば、最後の1文など、主人公と一緒の感慨を感じられたのかもしれない。
やっぱり、フランシスは中期のほうが好きかなぁ。

No.4 5点 黄金- ディック・フランシス 2021/08/28 21:15
フランシスのイメージとは違い、これも家庭内ミステリだった。
HM文庫の解説によると、本作以降(解説執筆当時で30作まで)、冒険小説敵要素が薄まり、心理的葛藤の要素が強まるとのこと。
なるほど、「標的」も同じ流れなんだ。
前半、家族の群像劇を描いていく部分は、ヒッチコックのコミカルな作に似た雰囲気がある。ドタバタ喜劇の感じだ。中盤の事件から、喜劇感はなくなるが、強烈なサスペンスというわけにはいかず、ウェルメイドなフーダニットという感じ。
ううん、これは違うな。悪くはないんだけど、これでは、たくさんいる優良作家のひとりになってしまう。以前の作にはあった「フランシスだけの味わい」が消えてしまった。
これ以降の作を読むのは後回しだな。フランシスの未読作を読むのは、これより前を優先するとしようか。

No.3 8点 奪回- ディック・フランシス 2021/08/28 21:14
いやぁ、よかった。フランシスはまだ10数作しか読んでいないが、文句なしに一番良かった。
この頃のフランシスには、発表当時に人気があった「情報謀略小説」(クランシーとか)の影響だろうが、特定の業界をリサーチして反映した作品がある。本作は誘拐対処企業。これが興味深くて、前半からすぐに作品世界に入れた。
そして、ヒロイン役のキャラ造形がかなり好み。主人公との関係では、距離感が微妙で、その距離感もまた好み。
最後の展開はやや定形どおりだが、そこで伝えられるヒロイン役の言葉にはぐっときた。ベタでも、こういうのは好きだな。
アマゾンの感想で「初期の話とはだいぶ雰囲気が違う」と書いている人がいて、それは同感だが、きっと私は初期フランシスより、こっちの方が好き。
中期フランシス、いいなぁ。もう少し読んでみよう。

No.2 5点 標的- ディック・フランシス 2021/08/28 21:13
中期のフランシスをいくつか読んでみようと考えて、2冊目として手にとった。
意外なことに家庭内サスペンス。フランシスらしいのは、主人公の造形と、家庭が厩舎であること。事件の構成は、クリスティー作品にもありそうなもの。
家庭内サスペンスは好みでないので、全体的にいまひとつだった。
主人公が陥るラストの苦境は読み応えがあったが、それ以外の部分はいまひとつ。解決の付け方も気に入らない。
でも、もう少し中期のフランシスはいくつか読んでみよう。

No.1 7点 骨折- ディック・フランシス 2021/08/28 21:11
久しぶりのディック・フランシス。
フランシスを何作か読んだのはだいぶ前だが、世評の高い初期作品より、(2、3作読んだ)中期の作品のほうが面白かった記憶がある。
このサイトの書評を色々読んで、中期はサイド・ストーリーを膨らませているのだなと認識し、「なるほど、私はフランシスについては、メイン・ストーリーよりサブ・ストーリーのほうが好みなんだ」と思い、本サイトでサイド・ストーリーの評価の高い本作を読んでみた。本作のメイン・ストーリーが「敵との戦い」なら、サイド・ストーリーは「少年との交流」になる。
うん、これは確かにサイド・ストーリーのほうが好み。いいなあ、フランシス。ハードボイルド風の語り口。ストイックで有能な主人公。せまる敵。おそってくる苦痛。こういうものが一体となって「これがフランシス」という世界がつくられている。
これは、中期のフランシスをいくつか読んでみよう。

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ことはさん
ひとこと
ホームズ生まれの、クイーン育ち。
短編はホームズ、長編は初期クイーンが、私のスタンダードです。
好きな作家
クイーン、島田荘司、法月綸太郎
採点傾向
平均点: 6.34点   採点数: 222件
採点の多い作家(TOP10)
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