皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ことはさん |
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平均点: 6.20点 | 書評数: 297件 |
No.6 | 6点 | 後ろ姿の聖像- 笹沢左保 | 2025/10/19 16:22 |
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「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズで読んだが、有栖川のイントロダクションにあるように、前章はフォーマットに則った作りですすむが、中章、終章で、そんなふうに展開させるんだと思わされる展開になる。これも有栖川のイントロダクションにあるが、デビュー20年目の作とのことだが、安定を求めずに挑戦的なプロットなところはすごい。300ページ弱を一気読み。
まあ、登場人物が少ないから、仮説の選択の幅が広くないので、真相の構図は終盤にはおおよそ想像がつくのだが、これだけ一気読みさせられれば文句はない。特に、ラストシーンがタイトルに修練するのはよかった。 |
No.5 | 6点 | 人喰い- 笹沢左保 | 2025/10/19 16:19 |
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まあ、ともかく次々と展開していく。1章「遺書」からはじまり、行方不明者の捜索につづき、なんと爆発が起こる。いやあ、豪快。島田荘司の諸作を思い起こした。
その後も、疑惑の焦点が絞られ、捜査をして、だめになって、とプロットは転々とする。それぞれの仕掛けや趣向は、前例がありそうだが、手数で飽きさせない。読み終わってから、改めて考えると「そんな迂遠なことするかな?」とは思うが、読んでいる間は、スピード感に惑わされて気づかないのは、さすがベストセラー作家。 |
No.4 | 5点 | 泡の女- 笹沢左保 | 2025/01/03 01:00 |
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「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズのカバーに惹かれて、もう1冊。
本作の面白さは、捜査の道行きの部分だろう。「招かれざる客」の感想でも書いたが、鮎川哲也の鬼貫ものを思い出させるもので、なかなか楽しい。ただ、これも「招かれざる客」と同じだが、順調にいきすぎなのは、やや難点。 真相の提示や、解決編もスピーディで、すっぱりと終わるのは、「軽やか」と肯定的にみるか、「あっさりしすぎ」と否定的にみるかは、好みが別れるところと思った。 時代(1961)を考えると、読みやすいのは実に驚異的。なにしろ、烏山がまだ人家がまばらで、風呂を薪で焚く時代なのだから。 |
No.3 | 6点 | 招かれざる客- 笹沢左保 | 2024/07/14 02:12 |
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「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズのカバーがなかなかよいので、もう1冊。
前半は記録の抜粋にして、後半、主人公による捜査行というのがなかなか良い構成。前半で提示される情報の量が多くて、かなりスピード感があって楽しいし、後半の捜査行は、鮎川哲也の鬼貫ものを思い出させる地道なものだが読ませる。(鮎川哲也と比べると、順調にいきすぎだが) いくつかのトリックは、それだけ取り出すとシンプルすぎたり無理があったりで、驚けなかったが、楽しむ部分は、トリックを解明していく捜査の道行きだろう。 動機については、ちょっとどうかな。1つめの事件の動機はドロドロしすぎだし、2つめの事件の動機については、原因となるある事実が無理すぎる(誰か気づく!)。ミステリに徹して、この部分は無いほうが好みだった。 |
No.2 | 6点 | アリバイの唄- 笹沢左保 | 2024/05/26 12:11 |
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「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズのカバーがなかなかよいので、1冊選択してみた。
これは、ちょっと事前情報を入れただけで、余計な気付きにつながる作品だ。なので、明確なネタバレはしないけど、未読の人は下記を読まないほうがいいかも。 1990年の発表の作品なので、笹沢左保が新本格をふまえたうえで書いた作品ととらえるのが適当で、そう考えると、メインの趣向はいかにも新本格的だ。 読み口は軽快で、軽快さを優先させるためか、情景描写/心理描写には深入りしていない。そのため作品全体の印象はあっさりしている。事件が発生するのがかなり遅いし、質疑応答や試行錯誤も少ないので、読み終わって記憶に残るのは、メインの趣向だ。あえて、メインの趣向に全振りしたのかもしれない。 あと、タイトルはどうなのかな。タイトルと事件の様相から犯人わかっちゃうよ。 |
No.1 | 5点 | 霧に溶ける- 笹沢左保 | 2023/09/17 17:51 |
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笹沢左保は未読なので、ひとつ読んでみようと、評価が高いものを読んでみた。
まずは、事件が起きるまでの、各登場人物の状況/紹介は楽しめなかった。生々しいというか、醜悪というか、社会派全盛頃の作品の、この手の雰囲気はやはり好みではない。特に1章に登場する男、まったく共感できなかったが、当時の人達はこれに共感できたのかなぁ。 事件が起きてからは、快調に読めたし、なかなか凝った構図が展開されるところは楽しめたが、トリックはどれも小粒。また、演出がいまひとつ好みでないのか、驚きやワクワク感は感じなかった。 世評ほど、私には刺さらなかったな。 |