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YMYさん
平均点: 5.89点 書評数: 372件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.32 5点 秘密資産- マイケル・シアーズ 2019/01/26 08:58
元花形トレーダー、ジェイスンが主人公で、ニューヨークを舞台にした金融サスペンス。
急死した父親の巨額の隠し資産を探してほしいという依頼に、金に困っていたジェイスンは飛びつくが、彼ばかりか息子の命まで狙われはじめる。このシリーズの読みどころである息子への深い愛情に加え、今回は母性愛にも心を揺すぶられた。

No.31 8点 カササギ殺人事件- アンソニー・ホロヴィッツ 2019/01/20 17:05
たくらみに満ちた作品。
実は作中作であるアガサ・クリスティばりの古典的ミステリと、それを読む担当編集者の物語からなる二重の構成を持っているからだ。
上巻を読めば、下巻を読まずにいられない。入念極まりない計算に感嘆させられた。

No.30 5点 ガットショット・ストレート- ルー・バーニー 2019/01/16 19:33
刑期を終えたシェイクは裏の仕事で出会った女ジーナを救い、大金をめぐる追いつ追われつの争いに巻き込まれる。
カール・ハイアセンを思わせる軽妙な会話、とぼけた味のある登場人物、悪賢い美女とお楽しみが盛りだくさん。

No.29 5点 ロング・ドッグ・バイ- 霞流一 2019/01/06 10:53
人間から見ると多少不思議に過ぎない事件が、犬の視点からすると通常では、実現不可能となっているところがユニーク。
謎に対して犬たちによる討論場面、一つの謎が明かされないまま現れる謎の数々。裏側には大掛かりなトリックがあり、さらにその解決方法も犬を主人公としているだけに工夫がみられる。
タイトルからしてかなりふざけている。バカミスが合わない人にはおすすめできない。

No.28 5点 天国通り殺人事件- シュテファン・スルペツキ 2018/12/09 10:37
目の前で起きた殺人事件の濡れ衣を着せられそうになった元刑事が、無実を証明するため、被害者が働いていた療養所に潜入捜査する。
癖の強い語り口は読者を選ぶかもしれないが、登場人物たちの強烈な個性で読ませる物語となっている。

No.27 7点 容疑者- ロバート・クレイス 2018/11/19 19:50
ロス市警の刑事スコットは銃撃戦で相棒を失い、それがトラウマになっている。彼は心と体の傷が癒えないまま、主人を失ってやはり傷ついているシェパードのマギーの訓練に取り掛かる。そんな時、銃撃戦の捜査に新たな展開があったことを知り、マギーとともに探り始めるのだった。
スコットの不器用だが粘り強い捜査ぶりも新鮮だが、なによりマギーとスコットが少しずつ心を通わせていく過程が胸を打つ。
犬というのはなんて愛情あふれる忠実な生き物なんだろうと、健気な姿に胸がしめつけられた。

No.26 5点 極夜の警官- ラグナル・ヨナソン 2018/10/25 19:48
アイスランド最北の小さな町の警察官アリ=ソウル。邦訳としてはシリーズ第2作となる。
一日中太陽が昇らない極夜の時期が近づいたある日、警察署長が町はずれの空き家で襲撃を受けて重傷を負う。住民の誰もが顔見知りの町で、アリ=ソウルたちの捜査が始まる。
狭い共同体という特徴を生かした謎解きが描かれる。陰のある、驚きに満ちた物語を堪能できる。

No.25 8点 白墨人形- C・J・チューダー 2018/10/17 19:44
1986年夏。僕ら4人は「あの少女」のバラバラ死体を発見したが、犯人とおぼしき人物の死で事件は事件は幕を下ろしたはずだった。30年後、大人になった僕らに「真犯人を知っている」と手紙が届く。
過去の悪夢がじわじわと現在に忍び寄るホラーミステリ。巨匠スティーヴン・キングがツイッターで「私の書くものが好きなら、この本を気に入るはずだ」とつぶやいたことでも話題に。巧妙な語りと最後まで続く予想外の展開で引き込む。新人作家とは思えない出来。

No.24 6点 遭難信号- キャサリン・ライアン・ハワード 2018/10/08 21:09
豪華客船を舞台に繰り広げられるサスペンス。ただし、舞台が船に移るのは後半から。
出張でバルセロナに向かった恋人のサラが失踪した。アダムは不安に駆られて彼女の足取りを追う。やがて、サラのパスポートと、彼女の字で「ごめんなさい」と記されたメモが届く・・・。
冒頭から不穏な要素が散りばめられ、不安を煽り立てる。謎と焦燥感で読者を五里霧中に引っ張る。
最終的には、意外な真相が明らかになり衝撃度は高い。

No.23 8点 バットランド- 山田正紀 2018/10/02 20:20
五つの中短編を収録した最新作は、力作ぞろい。
認知症を患った詐欺師のユーモラスな逃走劇から始まる表題作は、廃坑を利用したニュートリノ検出施設に生息するコウモリの異変や、ブラックホールの「蒸発」などが次々と判明し、宇宙消滅の危機へと急展開する。
たたみかけるようなテンポの良さとスケールの大きさは、まさに山田ワールドといえるでしょう。

No.22 6点 モリアーティ- アンソニー・ホロヴィッツ 2018/09/24 09:50
シャーロック・ホームズの異色のパスティーシュ(がん作)。
ホームズと宿敵モリアーティがライヘンバッハの滝に消えた。現場を訪れた英国の警部は、米国のピンカートン探偵社から来たという男と出会う。2人は手を組んで、モリアーティに接触を図っていた米国人犯罪者を追跡する。
ホームズは登場しないが、彼の手法を模倣する警部の存在が印象深い。意外な結末へと至る物語の仕掛けも鮮やか。
巻末には、ワトソンが語るホームズ短編「三つのヴィクトリア女王像」も収録。

No.21 6点 これ誘拐だよね?- カール・ハイアセン 2018/09/11 21:02
アイドル歌手のチェリーがドラッグ中毒だということをマスコミに隠すための影武者アンが誘拐され、欲の皮が突っ張った人々は右往左往する。その愚かしさをユーモアたっぷりに皮肉と風刺をまぶして描き出す作者の魅力が炸裂している。

No.20 6点 凍える街- アンネ・ホルト 2018/09/01 09:51
クリスマスも近いオスロの街で、会社社長の家で4人が殺された。女性刑事ハンネと同僚たちが真相を追う10日間の様子が描かれている。
捜査と並行して語られるのがハンネ自身の私生活。同性愛者であり、それゆえに家族との間に確執を抱えている。自身の生き方に悩みつつ犯人を追うハンネの姿が印象に残る。苦い味わいが魅力の作品。

No.19 6点 日曜の午後はミステリ作家とお茶を- ロバート・ロプレスティ 2018/08/24 20:07
小粒ながらも個性の光る短編集。
ミステリ作家の日々の暮らしと、彼が遭遇した事件を描く。「日常の謎」的な出来事から殺人事件まで多彩な謎を描きつつ、作家の日常に寄り添った物語のトーンは一貫して、安定した印象を残す。
何かの合間に気軽に読める、心地良さを感じさせる作品。

No.18 5点 バッドタイム・ブルース- オリバー・ハリス 2018/08/17 19:28
ギャンブル好きで飲んだくれという型破りな刑事ニックが主人公。
破産寸前で家もないニックは、大富豪デヴェールの行方不明事件に興味を持ち、捜査ついでに屋敷で寝泊まりし、置かれていた高級酒を勝手に飲み、服をくすね、どこかに高跳びして八方ふさがりの人生を抜け出そうと、財産の横領をももくろむ。だがデヴェールになりすますべく素性を調べるうちに、大掛かりな策謀を嗅ぎつけてしまう。
ニックの行動はとにかく大胆で規律・規則は完全無視。しかし頭が切れ、舌を巻くほど機転が利くうえ、人としての倫理や情はあるので、憎めないどころか非常に魅力的。結末も味がある痛快な作品。

No.17 7点 ゼロの迎撃- 安生正 2018/08/05 10:06
超大型台風が迫る東京を、さらに大きな脅威が襲う。サイバー攻撃の後、銀行の爆破事件、マンションと商業施設の占拠事件など正体不明のテロ組織が東京を破滅しようと大掛かりな攻撃を始める。
東京の街が謎のテロ集団から重機関銃や爆弾などによる攻撃にさらされたら日本国はどう対処するのか。作者はそんな大胆な「もしも」を見事に描き切っている。
このスケール、この迫力、この現実感、いずれも超弩級といえる凄味をたたえている。

No.16 5点 もう年はとれない- ダニエル・フリードマン 2018/07/27 20:53
ブラックな皮肉を飛ばすバックと現代っ子のテキーラの掛け合いが痛快。バックは「遠慮なく他人に面倒をかけられるのは、年をとる三つの楽しみの一つだ」と放言し、老人であることを逆手にとって、とことん楽しんでいるように思える。その一方では抗凝血剤を飲み、認知症におびえ備忘録を作ってもいる。
避けられない老いを淡々と受け入れながら、人生の終末期を謳歌するバックの生きざまは共感を覚える。

No.15 5点 葡萄園の骨- アーロン・エルキンズ 2018/07/21 09:24
イタリアのワイナリーが舞台。このシリーズの魅力はなんといっても、ギデオンのキャラクターと、骨についての深い造詣。ちっぽけな骨片から驚くようなことが判明する過程が知的な興奮を与えてくれる。また今回はおいしそうな料理が次々と登場し、ワインと美食とミステリは実に魅惑的な組み合わせだと再認識させられた。

No.14 5点 青空と逃げる- 辻村深月 2018/07/12 20:16
父親がスキャンダルに巻き込まれた影響で、全国を転々とすることを余儀なくされた小学生の本条力とその母・早苗の逃避行を描いている。
父親は本当に世間から非難されるようなことをしたのか、自分たちは一体何から逃げているのか、10歳の力には分からないことだらけ。高知・四万十や兵庫・家島など、訪れた地で信頼できる大人や友人を見つけたと思った途端に大人の都合で引き離される。そんな旅を続ける中で、親子の関係も変化し・・・。
湿っぽくなりがちな話題を爽やかな筆致で描き切り、清々しい読後感を残す。

No.13 6点 マリーンワン- ジェームス・W・ヒューストン 2018/07/05 19:45
政治的に入り組んだ状況に置かれた弁護士の活躍を描いたリーガル・サスペンス。
米大統領を乗せたヘリコプターが墜落。パイロットのミスか、ヘリの欠陥か?世論が沸く中、弁護士のマイクはヘリを製造した企業の弁護を引き受ける・・・。
事故の原因を調べるうちに巨大な陰謀が浮かび上がる。緻密な法廷シーンで読ませる、手堅いつくりで楽しめる作品。

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