皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ねここねこ男爵さん |
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平均点: 5.65点 | 書評数: 172件 |
No.5 | 2点 | ノッキンオン・ロックドドア- 青崎有吾 | 2018/02/08 21:03 |
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トリック担当とロジック担当のコンビ探偵という発想は斬新で期待したのだが、表題作以外は設定の意味が非常に薄い…というか、企画倒れの普通のミステリになってしまっている。多分、表題作以外のアイデアが浮かばなかったのだろう…
もう少しうがった見方をすると、タイプの異なるイケメンのコンビということから、同人など二次創作(ひょっとしたらTVドラマ化などメディアミックス)を強く意識したと思われる。それならそれで構わないので設定を活かして欲しかった。その意味で高評価は与えづらい。 それから、見破られないように証拠を提示したりどんでん返しする筆力が不足。具体的には、警察やちょっと観察力がある素人なら気づく痕跡を(書くとバレるため)解決編まで書かない。そもそも服を脱ぐ順番なんて人それぞれだってば。 この作者の他作品を読んでいても強く感じることだが、この作者は論理を勘違いしていて、探偵役がすべてのケースで「シャンプーが一番手前に置いてあるということは、この人物は頭を最初に洗っているのだ!!」とか「3階までよじ登れば犯行が可能。だから趣味でボルダリングしてるコイツが犯人だ!!」みたいな展開をするのだが、それは蓋然性を高めているだけで論理ではない。実際、友人を家に泊めたときに「風呂場でシャンプーよりボディソープのほうが取りやすい位置に置いてあったから、お前って身体を一番先に洗うタイプだろ!」って言われたら何いってんだコイツって思うでしょ? あまりボロクソに言いたくはないのだけれど、論理の看板を掲げ物凄く細かいことを論拠にする割に別箇所でこれだけ破綻が多いのはまずいだろう。 以下少しネタバレを含む書評。 ①ノッキンオンロックドドア:設定が唯一活かされていて、このクオリティが維持されるなら文句はなかったのに…。多分、こういう意外な動機メインでシリーズを展開したかった(けどアイデアが追いつかなかった)のだろう。 ②髪の短くなった死体︰もうめちゃくちゃだよ〜。まずコンセプトが早くも破綻。二人探偵がいる意味なし。以下ボロクソにツッコむ。 「水では化粧はほとんど落ちない。というか、化粧を落とそうとした痕跡がある、で十分だろ。鑑識は化粧の痕跡くらい見つけろよ。まぁ、化粧に触れると一気に真相までたどり着くのでわざと書かなかったんだろうけどさ」 「結局実行しなかったにしろ、華奢だといっても50キロはある体を入れて取っ手を持っても破れないダンボールなんて存在しない(取っ手以外を持っても底が耐えられない)。引っ越しやゴミ屋敷処理を一度でもやったら分かる。そもそも男でも女でも一人で持ち運ぶなど不可能だ」 「あの首の絞め跡から何故『髪で絞めた(ドヤァ)』になる?言いたかっただけでしょ。『絞めてから髪を切ったのではなく、髪を切ってから絞めた』が最初からの論理的な帰結だ」 他に服を脱ぐ順番などツッコミどころ。あとこの世界の警察は、取調べ時に俯いてると首の締め跡に気付かないらしい…。「服に合わないストールを巻いてる」とかあったでしょうに。本来この話は、警察が犯人の事情聴取したときに「おや?あなたの首には締められたような跡がありますね?」で解決してしまうんですよ。髪を切ったアイデアは素晴らしい(作中で触れているように他作品のパクリのようだが)。 ③ダイヤルWを廻せ:とてもよく出来ている。 ④チープトリック:鑑識が「死体を移動した痕跡がある」で終わってしまう。メイドが後始末したにしろ柔らかい絨毯である以上死体移動の痕跡を消し去るのは困難(引きずった跡を消しても死体の下の絨毛で一発)。入射角を見切るメイドも…。アイデアはいいし虫の死骸の手がかりもいいのに。 ⑤いわゆる一つの雪密室:悲しくなるほど問題外。批判されるのは分かっていただろうにこれを載せたということはよっぽどネタ不足で困っていたんだろう… ⑥十円玉が少なすぎる:よいのでは。本家もこんな感じだし。 ⑦限りなく確実な毒殺:「毒が混入出来ない!凄まじい謎!⇒事前服用!衝撃の真実!!」としたいらしく、ずーっと的外れの議論をしている。服用から作用までインターバルがある毒(確か30分)だと明記されているのに直前に毒を混入する方法ばっかり検討してアタマ痛い。 警察が「どんな毒?」「飲んで死ぬまで30分」「ほーん、30分前のアリバイ調べたろ!」で終わる話では… どうもこの作者は「ギリシャ棺の謎」のポットや「中途の家」の痕跡からの推理のような「些細な事から立て続けに推理を展開して圧倒する」をやりたいようなのだが、ほぼ万人が納得するであろうクイーンの論理と違って前述の通り蓋然性の話しかしてない。「コイツが怪しいからコイツが犯人!」と言ってるのと大差ない。別の言い方をすると、「目玉焼きには塩コショウが最も美味いから醤油なんてありえない。よって醤油をかけたコイツが犯人だ」と同レベル。んなもんオマエの好みの問題だろうが。 この作者は短編ではエラリークイーンを意識せず、むしろチェスタトン系統を目指した方が良いと思う。「平成のエラリークイーン」は出版社が宣伝のためにつけたものなのだろうから、無視してもいいのでは? 少なくとも現状では短編に全く向いていない。 |
No.4 | 3点 | 風ヶ丘五十円玉祭りの謎- 青崎有吾 | 2017/11/04 23:01 |
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ん〜〜〜〜これはちょっと…擁護できない。ミステリ的でない話のほうが良く出来てます。ミステリ的なものだと二色丼の話かな。
表題作があまりにも酷くてびっくりした。『五十円玉二十枚の謎』に挑んでものの見事に滑っている。違った意味で衝撃の真実。 この作者の作風というか悪癖で、解明の論理を先に作り、論理に合うように舞台をオーダーメイドするため、舞台設定が歪んで不自然と言うのがあります。例えば二色丼ってのは「こういう推理をしたいから二色丼ってのがないと困るから作った」んでしょう。時間的人的に高コストな二色丼が現実の学食にあるとは思えない。いや二色丼の創造くらいは別にいいんですが、表題作みたいに舞台不自然、論理強引、真相は意味不明なまでに歪んじゃってると… ロジックものの名作は、例えばポットに残った湯の量みたいな些細なことから見事な論理を構築することに素晴らしさがあるわけで、「ボクはこういう公式を作りたい!とにかく作りたい!だから公式として成立するように定義を変えちゃえ!」なんてダメのダメダメです。 以下表題作のネタバレと批判。 祭り後に落ちてるお金を拾っていた連中が、もっと利益を上げようとして①使用硬貨を50円に限定→②流通量増加→③落とす確率増加→④ウマーということ。カウントや運搬に大支障が生じるので猛反発を食らうはずというのには目を瞑るとして、②→③って因果関係あるのか?(この作者はとにかくこういう独りよがり疑似論理が多い)。そもそも一人あたりの流通量の増加じゃなく人の増加そのものが原因じゃね?ってのと落としても祭りの人手では回収困難ってのが落ちてる理由じゃあ。さらに③→④が?実際の祭りのあとだと500円玉も結構落ちている。当たり前だけど50円玉10枚分だ。作者の大風が吹くと桶屋が儲かる論理なら誰かが500円玉1枚落とす確率より複数人が50円玉合計11枚落とす確率と頻度のほうが大きいということになるが…? |
No.3 | 6点 | 図書館の殺人- 青崎有吾 | 2017/09/30 23:25 |
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館シリーズ3作品の中では一番のおすすめです。
登場人物のキャラ設定も落ち着き読みやすいです。 ただ気になるところもあって、(①にネタバレを含みます) ①論理で犯人を特定するゥーンだ!!が強すぎて、犯人の行動が証拠を置きにいっているようにしか見えず不自然。 カッター周辺が特に。探偵がかなり細かいことを根拠にしているのでそれに習うと、 『それが現場に落ちるのを極力避けるために、とのことだがトイレまで移動する間はどうする?2階のトイレにしてもそれなりに移動しなくてはならない。どうにかして現場をトイレに隣接させたほうがよかったんでは』 『行動の言い訳として他に心理的理由があるかもと言っているが、探偵の推理どおりなら恐ろしく冷静にロジカルに行動する犯人であり、これは読者へのエクスキューズでしょう』 『ハサミなら最小限の切断が可能だろうが、カッターで紐状のものの先端だけ切るのはとても難しい。切断したい部位の両端を押さえなければならず、そうするとかなりの長さを切断する羽目になる。目撃されたら相当印象に残るし、後日長さを揃えるにしても店に行くわけにもいかない。さらに確実に現場に細かく舞うのでかえって証拠品を増やすことにしかならないのでは?』 2階のトイレまで落ちない事を前提にするなら、張り紙のテープの粘着力が残っている部分を破って抜け落ちそうな部分に貼り落ちないようにすることも可能では、とか色々あります。 おそらくクイーンの超有名作の『トラブル回避の些細な痕跡から特定』をやりたかったんでしょうが、それにオリジナリティを加えたろ!としてひねりすぎた結果かなり行動も推理も不自然で苦しい。 ②他の方も指摘済みの通り、①を優先したため動機が?? 個人的にミステリの動機はどうでもよい派(過去の復讐とか実は親子とかあとづけされてもなぁ)なのだが、ロジックと意外性を優先したため本作の場合とってつけた感が。 ③ラストで一対一を書きたいのは分かるが、今作は特に無理やりじゃないか? この辺気にならない向きは7〜8点の作品だと思います。面白かった。 |
No.2 | 7点 | 体育館の殺人- 青崎有吾 | 2017/09/21 12:37 |
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推理部分はかなり良くできています。
全体のテンポもよくサクサク読めます。 続編だとかなり鼻につくテンプレラノベ臭も、今作は気になりませんでした。 ただ、他の方も書かれているとおり放送室のロジックに穴があります。 それから、物証が『そのものずばり犯行の痕跡』なのか『犯人のミス』なのか『犯人の仕掛けた罠』なのかの判断基準がご都合主義的なのがほんのちょっと気になりました。 この作品に限らないやむを得ない部分だとは思うのですが、少し気を使って欲しかったかも。 全体的にはおすすめです。面白かった。 |
No.1 | 5点 | 水族館の殺人- 青崎有吾 | 2017/09/21 12:13 |
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本体である推理のロジック部分はよくできていて楽しめる(他の方も書かれているが足跡が入り口まで続いているのが意味不明。作画のミスか?)。
問題なのは小説部分で、個人的には読むのがなかなか苦痛だった。 この作者はメディアミックス欲が先行するあまりアニメウケするテンプレに沿わなければいけない強迫観念が強すぎる。 こういう『ノリ』なのは前作で分かっていたけど、今作はそれが前面に出すぎていて、 ①会話やドタバタの大半が無意味(いわゆるテンプレばっかり) この作者は『普通の人物』を書くつもりがないのか書き分ける力量がないのか、登場人物が見事にテンプレそのままで、会話やドタバタもありがちな『オイシイ場面』のオンパレードで不要なものばかり。「こういうのいいでしょ?楽しいでしょ?」の押し付けがキツイ。 ②作者が①を書きたいあまりに登場人物が人格障害としか思えない テンプレ通り『頭が固く物わかりの悪い大人』が『生意気で変人だけど有能すぎ俺つえーw』に振り回される様子を書きたすぎて無理やり突っ込んだためかなり不自然。警部さんが人格障害レベル。自分で呼んでおいて「とっとと帰れ!」って、アタマ大丈夫か?さすがに不自然だと思ったのか作中でも「呼んでおいて扱い悪くない?」「お前に頼んだのはアリバイ崩しだけ」と言ってフォローはしているけどね。 あと、ドタバタを書きたいのは分かるけど、乱暴にエアコン(のリモコン)壊したりスマホを叩き落しておいて逆切れする刑事妹はさすがに頭おかしい。作中だと変人扱いの探偵役だが実はだらしない以外は結構まともで、警察陣営と刑事妹がかなり異常者。 ③最後の一対一が白々しい 多分作者が「テンプレばっかりじゃなく俺ってこういうのも書けちゃうんだぜ!」ってやりたいんだろうけどね。最後だけまじめに手品するマギー司郎か。 ④続編に登場させる気満々なのはいいが不要な登場人物+章が多すぎ 卓球の試合のくだり丸々いらん。なんだこれ? あるあるの集合体ゆえ話がとてつもなく不自然なこと、あるあるに当てはまらない人物を登場させると途端に影が薄くなることが目に付くかつかないかで評価が分かれるだろう。 繰り返すが、推理部分はよくできている。物理的に苦しいのは目をつぶろう。…理系学部を出た人間なら分かってもらえるだろうが、再現性の厳しい現象は本来採用しないんだけどね。 |