皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ALFAさん |
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平均点: 6.67点 | 書評数: 190件 |
No.5 | 7点 | ブラウン神父の不信- G・K・チェスタトン | 2018/04/29 18:32 |
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個人的な好みでいえばブラウン神父は夕暮れのロンドン郊外やイングランドの田園やスコットランドの荒野で活躍してほしい。「不信」の中のいくつかではブラウン神父をハリウッドのTVドラマの中にポツンと立たせたみたいな感じがする。まあチェスタトンのことだからアメリカ文明批評を書いてみたくてブラウン神父を「赴任」させたのだろう。
とはいえ派手目なストーリーはそれはそれで楽しい。 尺は短いが意外と大仕掛けな「ギデオン・ワイズの亡霊」がフェイバリット。 「犬のお告げ」も短編ならではの味わい。 有名な「ムーン・クレサントの奇跡」はトリックだけが突出気味。 それにしても翻訳はひどい。ちくまやハヤカワの新訳が待ち遠しい。 |
No.4 | 7点 | ブラウン神父の秘密- G・K・チェスタトン | 2018/04/25 10:08 |
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プロローグとエピローグにブラウン神父とフランボウのそれぞれの「秘密」話を振ってまとめた構成は巧み。しかし中身は「無心」「知恵」から順を追ってにフツーになってくるのはやむを得ないことか。
中では「マーン城の喪主」が舞台設定や宗教観も含めて印象深い。トリックそのものは簡単に推測できるが。 「大法律家の鏡」は「知恵」の同トリックの収録作よりもミステリらしく楽しい。 それにしても「メルーの赤い月」をはじめ時々見られる作者の「神秘の東洋」感にはうんざりする。アメリカ人への偏見もそうだが、この時代のイギリス有数の知識人チェスタトンにしてこれかと思ってしまう。 |
No.3 | 8点 | ブラウン神父の知恵- G・K・チェスタトン | 2018/04/24 09:24 |
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象徴性に満ちた「無心」と比べるとトリック一発の小粒感はあるが楽しい短編揃い。
やはり重厚な「ペンドラゴン一族の滅亡」が読みごたえがある。勝手に芸達者なイギリス俳優をキャスティングして脳内ドラマをイメージするのも楽しい。 とぼけた味わいの「グラス氏の不在」も気に入った。 訳文は生硬で読みにくい創元版よりちくま版がおすすめ。 |
No.2 | 7点 | ブラウン神父の醜聞- G・K・チェスタトン | 2017/04/22 17:48 |
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「童心」にみられるような鮮やかなトリックや大掛かりな反転はないが、チェスタトンらしい逆説に満ちた短編集。
多くの短編に共通するテーマは「人は見かけ通りではない」ということ。 (以下ネタバレ) ロマンチックな風貌の人物は詩人ではなく、カウンターの中にいる人物はバーテンではなく、押し出しのいい紳士は業界の大物ではなく、白髪の聖職者は・・・・・ 多くの人が思い込みや錯誤に陥るなか、純真なブラウン神父の目は正体を見抜いて犯罪を暴く。 ワンパターンといえばワンパターンだが、チェスタトンらしさを味わえる。 「共産主義者の犯罪」は一種の社会風刺にまで踏み込んだ異色作。 それにしてもこの読みにくさはチェスタトンの原文のせいばかりではないだろう。「童心」の旧訳と新訳二編を読み比べるとよくわかる。 創元社は文字の大きさやカバーの変更でお茶を濁すのではなく新訳を出すべきだった。創元社には悪いがハヤカワ版が待ち遠しい。 |
No.1 | 9点 | ブラウン神父の童心- G・K・チェスタトン | 2017/03/14 17:03 |
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初めて読んだとき、ルパンとホームズしか知らなかった中学生は「大人のミステリとはこういうものか!」と感激した。
十分な大人になって再読すると、メルヘンな味わいを持った、とてもよくできたミステリという感じがする。 近年新訳が二つも出たので比較を。 「オリーブとシルバーの色にとざされた嵐模様の夕暮れがせまるスコットランドの灰色の谷、そのはずれにやって来て、なんとも妙なグレンガイル城をつくづく見やっていたのは、これも灰色のスコットランド式肩掛けにくるまったブラウン神父であった。」(創元) 「オリーブ色と銀色の嵐の夕暮れが迫る頃、ブラウン神父は灰色のスコットランドの格子縞羅紗服にくるまり、灰色のスコットランドの谷のはずれへやって来て、奇怪なグレンガイル城を見やった。」(ちくま) 「オリーブ色と銀色の嵐の夕暮れが迫る頃、ブラウン神父はスコットランド風の格子縞の肩掛けをまとい、灰色のスコットランドの谷の外れにやってきて、奇怪なグレンガイル城を眺めやった。」(ハヤカワ) いずれも「イズレイル・ガウの誉れ」の冒頭。 旧訳が英文の逐語風で読みにくいのに対し、新訳はいずれも日本語としてこなれている。ちくまがあえて漢語表現を多くして、一種の風格を感じさせるのに対し、ハヤカワは圧倒的に読みやすい。(活字もいちばん大きい) 12編中のフェイバリットは「折れた剣」。初めて読んだとき、映画にしたらさぞ見ごたえがあるだろうと思った。 また「木の葉は森に隠す」「森がなければ森を作る」というフレーズなど、その後の行動哲学に影響するくらい心に残った。 |