海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

パメルさん
平均点: 6.14点 書評数: 572件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.172 6点 黒龍荘の惨劇- 岡田秀文 2017/09/27 01:19
探偵の月輪龍太郎と友人の杉山潤之助が難事件に挑む時代ミステリの第二弾。
元首相の山縣有朋の金庫番ともいわれる漆原安之丞に脅迫状が届き、その数日後、漆原が首を切られた死体となって発見される。
やがて事件は連続殺人事件に発展し、被害者は漆原の故郷に伝わるわらべ唄に見立てられ、首や手足を切断されるなど、物語は本格ミステリの王道ともいえる道具立てを使いながら進む。
本当に解決するのかと思わせる終盤まで殺人が続き、月輪は16もの疑問点に頭を悩ませる。
事件が複雑怪奇なだけに、たった一つのカギで謎が一気に解ける最終章には圧倒的カタルシスがあり満足。
驚くべきどんでん返しから浮かび上がるのは法律やモラルなど歯牙にもかけない怪物の存在。この怪物は、現代とも共通する虚無を象徴しているので背筋がゾッとする。
ただプロットに関しては他作品での既読感があるのが残念。

No.171 6点 妖婦の宿- 高木彬光 2017/09/21 01:06
四編からなる短編集だが「妖婦の宿」の出来が抜きんでている
被害者が殺される前に人形が殺されるという設定といえばこの作者の「人形はなぜ殺される」が有名ですが、この作品では違った意味で人形が重要な鍵を握っている
犯人を一人に絞る緻密なロジック、心理的盲点を巧妙に突く仕掛けがお見事
密室殺人を扱った短編では必ずと言っていいほど取り上げられるのも納得
ただし他の三編を合わせての総合評価となるとこの点数になってしまう

No.170 5点 コンピュータの熱い罠- 岡嶋二人 2017/09/15 13:11
まだパソコンもあまり普及していなかった時代に書かれたとは思えないほど、コンピュータや情報に関わる事件の先見性に驚かされる。
ただ彼らの良さが発揮されているかといえば疑問が残る。
トリックなど謎解きの面白さは味わえないし、サスペンスのジャンルにしては肝心の緊迫感が足りない。
ストーリーの構成も冒頭部分では引き込まれるが、起伏が少なく淡々と進行するため、展開力に不満が残る。
真犯人に意外性はあるが、推理する余地は無いし登場人物が少ないこともあり、ピンとくる人も多いでしょう。

No.169 6点 消失!- 中西智明 2017/09/10 01:06
今現在の採点が2点から10点と幅広い評価を受けている作品
好き嫌いがはっきりする作品だとは思うが、個人的には絶賛するほどではないと思う反面、酷評するほどでもないといった感想
違和感はあると思いながらも、不可解な消失と事件の真相は看破できなかったのも事実
再読すると所々に散りばめられた伏線や、巧みなミスディレクションが使われているのがわかる
一種の叙述トリックだと思うが、単なる叙述トリックにおさまらない鮮やかさに驚かされる

No.168 5点 死体を買う男- 歌野晶午 2017/09/04 01:15
松の木で首を吊って自殺している人物を発見するが自殺に疑問を抱いていた江戸川乱歩と萩原朔太郎が真相を追及していくという探偵小説「白骨鬼」の内容が現実の世界の事件に繋がっていくという構成
乱歩風の文体で描かれ江戸川乱歩・萩原朔太郎の推理合戦は楽しませてくれたがミステリとしての驚きは残念ながら小さい

No.167 8点 造花の蜜- 連城三紀彦 2017/08/29 01:01
嘘なのか?真実なのか?敵なのか?味方なのか?
複雑な人間関係が露になる中犯人は身代金を減額してきたりして意味がわからなくなってくる
犯人の真の目的は何か?この犯罪の裏に隠されたものは何か?と先の読めない展開に読み進めていっても頭の中はクエッションだらけになる
また大胆かつ緻密な劇場型犯罪にアッと驚かされるしどんでん返しの連続で翻弄される快感が残る
最後の最後まで気の抜けない展開に楽しめました

No.166 4点 親しい友人たち- 山川方夫 2017/08/23 01:08
「三田文学」の編集に携わり自作5編が芥川賞の候補作となるなど純文学に大きな足跡を残した作者のショートショート集
早世の天才の才気を示す傑作選と紹介されているが星新一氏のような切れ味鋭い作品は少ないためそれを期待していると肩透かしを食らうことになるでしょう
全体的な出来からするとこの点数だがSFありホラーありとジャンルも多岐にわたっている
奇妙な味わいを楽しめる作品や人生の根本的な在り方を探求する哲学的な作品
そして独特な感性が光る作品があり埋もれてしまうには勿体ない作品集と言えるでしょう

No.165 7点 殺人方程式- 綾辻行人 2017/08/17 13:15
犯人は何のために死体の首と腕を切断したのかという謎の理由に必然性があり説得力もある
また大掛かりな物理的トリックも実現性に関し身体の部位の重さまで慎重に調べられ図で示しながら論理的に解説されている点が好印象
またなぜ死体を移動させなくてはならなかったのかのホワイダニットや意外性のある犯人の正体のフーダニットも十分に楽しめる
何といっても一番驚いたのはこのサイトでの平均点の低さです

No.164 6点 盲目の鴉- 土屋隆夫 2017/08/09 01:13
長編では「妻に捧げる犯罪」から8年ぶりに発表された作品・・・あまりにも間をあけすぎでしょう(寡作にも程があるが好きな作家の一人なので許します)
田中英光・大手拓次など文学者たちの詩を紹介しながら文学的ロマンと謎解きの面白さを巧みに融合している
行方不明事件と不可解な殺人事件の二つを結ぶ鴉の謎が興味をそそられる
男?女?怨恨?憎悪?復讐?と動機ははっきりしないし犯人像さえも浮かんでこない展開で楽しませてくれる
ただ毒殺トリックは成功するとは思う反面たわいもないトリックだったのが残念(期待しすぎた)

No.163 6点 ノッキンオン・ロックドドア- 青崎有吾 2017/08/03 13:33
七編からなる短編集
「不可能」担当と「不可解」担当の二人が主人公でそれぞれ得意分野を活かし補い合いながら真相に迫り事件を解決していく
それは無いだろうという部分もあるがそれ以外はトリックのアイデアには唸らされるし新しさを感じる
特に「髪の短くなった死体」はどうしてこのような状況が生まれたかを現場に残された手掛かりから再現してみせ犯人を特定するところなどパズラーの傑作といえるでしょう
このシリーズは続くようなので次回作も非常に楽しみだ

No.162 7点 満願- 米澤穂信 2017/07/29 01:04
切りつけてきた男を交番勤務の巡査が射殺した事件の真相に迫る「夜警」
いわくつきの温泉宿で拾った遺書の謎を解く「死人宿」など一作ごとに舞台や設定は異なるがいずれも奇妙で不可解な出来事とその真相を解くロジックが丁寧に書き込まれた六つの短編が収録されている
表題作「満願」は周到な伏線がしかれたうえで驚きの真相が最後に明かされる
「柘榴」・「万灯」は生身の人間が持つ心理をしっかり描きつつ思いも寄らない展開を用意している
個人的には「関守」が一番好みだが全体的に上質で読み応えのある作品が揃った一冊

No.161 6点 夜歩く- 横溝正史 2017/07/24 13:24
旧家で発生する連続首無し殺人事件に複雑な血縁関係と男女関係が入り乱れ真相をなかなか掴ませてもらえない
その登場人物も夢遊病者・酒乱で刀を振り回す老人・淫蕩な未亡人・佝僂(「くる」せむしの意)など個性派揃いで申し分ない
またケレン味に満ちた道具立ても揃っておりワクワクさせてくれる要素が満載
そして誰もが開けられるはずのない金庫に保管していた刀が凶器として使われていたという不可解さに惹きつけられる
ただ死亡推定時刻の解釈には不満が残るし佝僂に関しては身体的差別用語を文字面だけ残し読み方も意味も記述していないのは不親切に感じる

No.160 5点 イニシエーションラブ- 乾くるみ 2017/07/18 13:49
1980年代後半の静岡と東京を舞台に若い男女の恋愛を描く作品。
「クリスマスイブのシティーホテル」「ソフトスーツ」「男女七人夏物語」・・・と当時の世相を思い起こさせるキーワードが散りばめられ携帯電話が無い時代状況が恋が始まるじれったさやもどかしさを加速する
若さゆえのまっすぐさ・愚かさ・残酷さもストレートに描き引き込まれる
「これは伏線か?」と思う部分はあるが「次はどうなるんだ?」とページをめくるうちに疑問は薄れてしまう
読んでいる最中は素直でほろ苦い恋愛小説にしか思えない
最後の数行に差し掛かるまでは・・・
それにしてもあれだけ「必ず2回読みたくなる」と煽られ気をつけて読んだのにまんまと術中にはまってしまった
「再読のお供に」と題された解説・80年代の風俗を紹介した用語集もしゃれている
ただ上手く騙された感はあるがミステリとしてはどうかと思う

No.159 5点 アムステルダム運河殺人事件- 松本清張 2017/07/13 23:43
1969年の中編2編を収録
表題作は実際に起きた事件をもとに作者が再構成し推理を加えた作品
被害者は行方不明の被害者なのかと前半はドキュメンタリー調に事件を紹介している
後半になると主人公と医者の二人組で現地で迷宮入り事件を再調査していく展開
「死体が首と手首を切断されたのは何故か」の意表を突く真相には驚かされる
ただ作品の性質上仕方がないといえば仕方ないのだが盛り上がりに欠ける点は残念
セント・アンドリュースの事件はアリバイ工作には鮎川哲也氏の前例あるトリックと江戸川乱歩氏ばりのトリックが融合している

No.158 6点 黒い白鳥- 鮎川哲也 2017/07/08 23:41
前半は疑わしい人物を多く配置し第二第三の事件が発生しフーダニットとして興味を抱かせてくれる
また労働争議と新興宗教という社会的題材が扱われておりその状況がミスディレクションを容易にしている点が実に巧妙
ただ中盤になると容疑者は一人に絞られメインは時刻表トリックなどアリバイ崩しとなっていくためこの時点で個人的にはトーンダウンとなってしまった

No.157 7点 殺人ドライブ・ロード- 井沢元彦 2017/07/04 01:12
第一部では犯人による殺人計画の遂行課程そして第二部ではそのルートにそって探偵役が捜査し終幕にすべての事柄が暴かれるという最後まで息もつかせないようなテンポで進む展開に惹きつけられる
トリック自体はある程度地理に詳しい方ならすぐにピンとくると思うし少し無理があるため感心は出来ない
ただ冒頭のある部分と序盤に描かれた事実が後半に大きな意味を持ってくるという構成力は素晴らしい
これですべて決着がついたと思わせておいての最後のどんでん返しは驚かされるしフーダニット・ホワイダニットとも十分楽しめる

No.156 6点 轢き逃げ- 佐野洋 2017/06/27 01:02
小紙文化面に掲載された追悼文で「骨法正しい謎解きミステリを現実社会と緊密に結びつける作風を松本清張氏より引き継ぎ発展させた第一人者は佐野洋氏にほかなりません」と宮部みゆき氏が語っている
この作品も思いも寄らない事件により被害者・加害者またその周りの人物の人生が変容しそれによりフーダニットとしての面白さが増していく
本格ミステリであると同時にサスペンスでもあり新聞記者出身らしい社会派の視点も備えており現代社会の深淵をとらえた感性が光っている

No.155 7点 赤い帆船(クルーザー)- 西村京太郎 2017/06/22 01:07
スケールの大きな企みが仕掛けられた海洋ミステリ
毒殺された被害者には彼を恨んでいた人物が数多くいた
ただ真犯人は早い段階で想像がつくと思う
しかしアリバイ工作はレベルが高く十津川警部補もいくつかの方法を思いつくが容易にアリバイは崩れず犯人の仕掛けた罠に嵌っていく展開
脇役の使い方も上手く被害者が犯人に●●●●●●を●●●●●●というのも面白い
余談ですが松本清張氏の短編「火と汐」のネタバレがあるので要注意

No.154 5点 ジークフリートの剣- 深水黎一郎 2017/06/17 01:09
怪しげな占い師は主人公には不気味な宣告をしそして婚約者には非情にも死の宣告をする
この後この言葉がどう繋がっていくのだろうと惹きつけられる
ただ婚約者は呆気なく死亡してしまうし最後の最後まで全くと言っていい程事件は発生しない
舞台の閉幕が近づいていく中オペラの蘊蓄とナンパな主人公が女性を口説き落とすという展開で物足りなさを感じる
ミステリとしての魅力は少なく極論を言えば序章と終章で成立してしまうストーリー
ラストの数ページでの構成は見事で結末も美しく巧さは感じられたが面白いとは思わなかった

No.153 6点 房総・武蔵野殺人ライン- 深谷忠記 2017/06/12 19:30
タイトルからするとトラベルミステリのように思えるが実は本格的な法廷ミステリ
それにしてもこの作者は●●・●●殺人ラインという安易なタイトルが多いですね
「もう少し考えれば」とお節介を焼きたくなる
旅情味は無くそしてアリバイ崩しやトリックで楽しめるわけでも無く地味な印象は否めない
事件の様相が新証言により次から次へと変化していく展開で巧みなミスリードにより真犯人に中々たどり着けないように仕組まれている
ある人物の関係性が突然露になり推理する余地が無い点は残念だが意外性には驚かされる

キーワードから探す
パメルさん
ひとこと
7点以上をつけた作品は、ほとんど差はありません。再読すればガラリと順位が変わるかもしれません。
好きな作家
岡嶋二人 東野圭吾 
採点傾向
平均点: 6.14点   採点数: 572件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(30)
岡嶋二人(20)
有栖川有栖(19)
綾辻行人(18)
米澤穂信(16)
歌野晶午(15)
西澤保彦(15)
松本清張(14)
法月綸太郎(14)
横山秀夫(14)