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ロマンさん
平均点: 8.08点 書評数: 177件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.13 7点 Zの悲劇- エラリイ・クイーン 2015/10/29 19:05
前二作とは違い、近い将来刑に服する事を定められた人物の無実を証明すると同時に、真犯人を割り出すという、のっぴきならない展開。そんな中でもサムの娘であるペイシェンスは鋭い推理力を発揮しながらも、おなじみのドルリー・レーンに力を借りる訳だが、前二作とは違った味わいがあり、ドラマ性が強くなっていることも見逃せない。個人的にはレーン氏の活躍ぶりがあまり見られなかった事がやや残念。

No.12 8点 フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン 2015/10/22 21:22
推理小説としては非常にシンプルかつ地味。クイーン流の論理的な推理は確かに見られるのだが、初期~中期の作品ほど緻密であるものとはとてもじゃないがいえない(19章結尾の訳注が特にそれを印象づけている)。ただ結末の意外性は良い意味で期待を裏切らなかった。犯人のいない殺人。結局のところフォックス家に救いがあったのかなかったのかは読者に委ねる、というのがクイーンの真意なのかもしれない。

No.11 8点 エラリー・クイーンの新冒険- エラリイ・クイーン 2015/10/21 12:11
「神の灯」を読んだのだが…結構力技だなという印象。しかし、題名が暗示した手掛かりなど、やはり本作は傑作だった。また、前短編集がどちらかと言えば、物証を核とした論理を主体としていたのに対し、本書は人間の動き方を重視した作品が多いように感じる。「神の灯」にしても、ある人物の○○に対する動きがヒントとなっているのだ。クイーン中後期の特徴も見られる、なかなかお得な作品集であろう。その他お気に入りは「血をふく肖像画の冒険」「人間が犬をかむ」。

No.10 6点 十日間の不思議- エラリイ・クイーン 2015/10/21 10:00
時々記憶を失う旧友ハワードの頼みに応えて、彼の屋敷に滞在することを決めたエラリイ。そこでエラリイはハワードからある秘密を告白され、脅迫事件に巻き込まれていく。緊張感のある家族関係を綿密に描いた人間ドラマと、エラリイの人間くささに読み応えがあり面白く読んだ。思うことをまとめると、探偵は起こった事件を問題文として、論理的に解を導くことはできても、まだ事件が起こってない(どれを解くのか決めていない)ようなときには、推理をしても問題文が全文ではないので正しい解を導けないのではないか、と思った。

No.9 7点 スペイン岬の秘密- エラリイ・クイーン 2015/10/21 00:12
スペイン岬と呼ばれる場所の邸宅で招待客の1人が殺されていた。しかも裸で。どうして裸にされたのか?それと同時にローザと叔父が誘拐される。読者への挑戦状としては易い難易度。動機の無い無人の場所での通り魔が最も完全犯罪に近くありながら、我々は論理的思考への挑戦に強く傾倒する。その不可能性と可能性との狭間に、希望の光を見出している。そしてそれ故に、完全犯罪は偶然によって破られ、同様に探偵も偶然によって惑わされる。破られてなお犯罪を行う犯人と、惑わされてなお偶然と必然のハイブリッドたる現実に完全な論理を形作るを求める探偵に、我々は心酔する。これぞ本格。これぞミステリ。

No.8 9点 災厄の町- エラリイ・クイーン 2015/10/20 20:33
狂気と沈黙が生むすれ違いの悲劇。事件そのものよりも、事件によって昨日の友が今日の敵となるムラ社会の閉鎖性と、犯人が犯人となるに至った心理に焦点がある。この事件においては、クイーン氏はほとんど傍観者に過ぎず、真相の解明に至っても、残酷な運命のいたずらと自らの無力にうちひしがれるのみだ。長い長い裁判の描写も、いくら策を尽くそうが、変わることのない運命を前にして無駄な抵抗を繰り返すライト家の人々の努力のむなしさばかりがにじむ。

No.7 7点 エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン 2015/10/20 16:18
十編からなる短編集。謎自体が魅力的だっのが『七匹の黒猫の冒険』猫嫌いのお婆さんが毎週一匹おなじような黒猫を購入するという、地上から30センチだけ浮いたような、奇妙なお話。それを解き明かすエラリイの論理、発想は、こちらもいちいち現実感が薄い。なのに、やっぱり、手がかりから一番現実的に推論するとそれしかないから、奇妙な味わいがある。また、謎の真相=犯人ではなくその二つをきちんと論理で繋いでいるところが好印象。『アフリカ旅商人の冒険』はロジックが美しかった。三人の学生たちの間違い推理も愉しい。

No.6 9点 ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン 2015/10/20 16:15
格段に複雑な構成の作品。『論理』を軸にして、このように展開が二転三転する長大な作品を組み上げるのは流石としか言いようがない。また、読者への挑戦状でも自信をのぞかせているように、犯人の意外性という点でもトップクラスだと思う。ただ、複雑であるがゆえに、全体を通した論理の明快さには欠ける印象も受けた。

No.5 8点 エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン 2015/10/20 15:08
愉しく読み終えて振り返ったときに、総じて緻密な構成力に唸らされる傑作。国名シリーズ既作と比して外連味のある事件立てだが、そのこと自体がトリックの重要な要素として機能する無駄の無さ。首なし死体から想起される詐術も二段構えで手強い。にも関わらず、解決編での単純にして明快な指摘が意外な犯人を明らかにするスマートさ、複雑な全貌を一瞬にして解きほぐす爽快感が素晴らしい。

No.4 9点 九尾の猫- エラリイ・クイーン 2015/10/20 13:24
ニューヨーク市中をじわじわと連続絞殺魔の恐怖が襲い、市民は見えない犯人に怯えていた。かつての推理の失敗のためもう二度と事件には関わらないつもりでいたエラリイだが、クイーン警視の懇願もあり重い腰をあげる。ヒステリーとパニックの気配が充満していて、何の共通点もなさそうな被害者からミッシングリンクを見つけ出すまでの手に汗を握る展開、その後の急降下も含めて、とても面白かった。論理と知性を鼻にかけ、それを自分のために磨くいけすかないエラリイは、ここにはいなかった。

No.3 10点 オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン 2015/10/20 12:39
国名シリーズ第三作目。数々の著名な本格ミステリ作家陣からフーダニットの最高峰と呼ばれる本作、果たしてどのような道筋で犯人を導きだすのかと期待に胸を膨らませたが事実と論理を組み合わせた予想を遥かに上回るフーダニットだった。概ね犯人の特徴に感づくことはできたがエラリーの様に確信を持って1人に絞り込むことが出来なかった。驚くべきは物的証拠を一切用いずに容疑者一人一人の信頼性と俯瞰した状況を突き合わせて確実性を増した証言のみを検討してたった1つの真実へと辿り着いていること。ミステリ好きならばたまらない作品だろう。

No.2 10点 Yの悲劇- エラリイ・クイーン 2015/10/20 12:04
(ネタバレ)誰もが怪しいと思えるハッター家の奇異な人々。物語が進んで行くと犯人は絞れてくるのだが、なんとも後味が悪い。捜査が迷宮入りしていく中で犯人はいったいどんな気持ちでいたのだろうか。13歳という大人でも決して幼い子供でもない微妙な年齢の設定は見事だ。犯人の悲劇の結末は『誰にも』予期せぬことだったのだろうか。

No.1 10点 Xの悲劇- エラリイ・クイーン 2015/10/20 11:43
電車の中で殺人事件が起きる。その中でドルリー・レーンは犯人を予想するもそれを明らかにしない。その後更なる事件が起きて、一人の人物が疑われる。  物語の節の一つ一つに日付と時間が書かれていて、舞台の把握と時間の流れが丁寧に読み取りやすくなっている。  レーンが最後に犯人を指名する場面は驚いた。なぜなら、物語が進んでいく中で犯人というのは舞台からは予想つかないような人物であるのに、実際には意外なところにいたからである。

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