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了然和尚さん
平均点: 5.53点 書評数: 116件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.10 6点 疑惑の影- ジョン・ディクスン・カー 2016/02/08 19:14
ミステリーとしての基本構想だけを取り出せば、ここ1年で読んだ最高作に近いものと言えるのですが、物語としては不出来な部分が多く、残念な作品になってしまいました。
2件目の殺人に関して、犯人の完璧なアリバイ(別件裁判で勾留中)、1件目の無罪を主張できない裏事情は、すごく好きなのですが、本作の内容では、(共犯?)女中の役割が大きすぎ、1ヶ月放置した水を飲ませるという可笑しさが、トリックの偉大さを消してます。何かもうちょっと、どうにかならんかったのかと、もどかしいですね。
事件の背景として、さらっと殺人クラブによる交換殺人ネタが出てきてますが、毒殺入手の方法等は、これで1作書けるぐらいで、惜しげなく使っている点で+1点
悪魔崇拝ネタは、正直イマイチなのですが、第二次世界大戦の終戦4年後という雰囲気がわからない読み手にとっては、評価は保留になりそうです。

No.9 7点 眠れるスフィンクス- ジョン・ディクスン・カー 2015/11/23 12:25
本作のトリックについて考えたのですが、完全犯罪ですね。服毒心中をはかり(男女は別の場所で)、しかし被害者は狂言自殺のつもりで、服毒後に助けを呼ぶつもりであったが、相手の方が、こっそり麻薬を混ぜておいたために助けを呼べずに絶命。この場合相手のアリバイは完璧ということになる。被害者の自作自演を強調すればいくらでも不可能犯罪になりそうです。(密室とかからめて)
で、カー先生は解けない謎は本格ミステリーではダメと言わんばかりに、多くの手がかりを残しながらわざわざ犯人が被害者に一撃食らわしにやってきます。この辺の古臭さがいい味ですね。
(いつものように、細かく手がかりをまいてますね)
結末について、プラス1点です。この時代の小説なら若い二人のハッピーエンドでちゃんちゃんかと思うのですが、ドリス・ロック嬢の犯人擁護の発言は真犯人より意外で、結末にある種の苦さを与えています。最近の作家さんの作品ならよくありそうなのですが、1947年の作品なのですからね。
全く、若いやつは何を考えてるのかわからん。

No.8 6点 囁く影- ジョン・ディクスン・カー 2015/10/03 16:22
過去の事件も、今の事件も動機が隠されてたりして、なんとも入り込みにくい内容で4点。犯人が(その正体がと言うべきか)以外で+1点、その後の謎解きでパズルを組み上げるような見事さに+1点と、尻上がりに評価が上がる作品でした。自分の眼の節穴ぶりが情けなくなります。
本作はいかにも本格推理という感じで、90%つまらなくても、最後の10%で見事にやってくれた感じです。非本格の犯罪小説である松本清張の作品では90%楽しく読めて、最後の10%の仕上げでがっかりするのと対照的なのが面白いですね。作品の娯楽量とでもいう指標があるならば、両者は同じなんだなと感じます。

No.7 6点 死が二人をわかつまで- ジョン・ディクスン・カー 2015/08/13 16:46
最初に毒殺話をしたおっさんですが、誰でも嘘話だとわかりますよね。(偽モンとは思わなかったけど)なぜなら、フェル博士が、しかも密室の事件において、犯人にしてやられて未解決なんてありえないです。(ハハハ)
 まあ、平均点ぐらいかなという感じです。皆さんご指摘の通り、後半の殺人は不要ですね。犯人の動機面について、とってつけたというか、物足りなさはありますが、最も意外な犯人という結論ゆえにしかたがないかなと思います。これらの不満点についても本格の手がかりを細かく提示しているところは、カーはさすがです。
 

No.6 7点 皇帝のかぎ煙草入れ- ジョン・ディクスン・カー 2015/07/03 15:18
手がかりもよく示されて、無駄な登場人物もない、よくできた作品なのですが、私には物足りませんでした。クリスティーの「そして誰もいなくなった」、クイーンの「Yの悲劇」、クロフツの「樽」(これはちょっとこじつけ)カーの本作や「火刑法廷」と作家のベストと言われる作品にレギュラー探偵が出てこないのは偶然でしょうか? それぞれにでてこない理由が存在するのですが、本作ではフェル博士でも問題なさそう。フェル博士は「そうか 私はとんだ思い違いをしていたんだ」とは絶対に言わないので、探偵役が最初に「ロウズ家内部の犯行」と言わせたいための探偵変更か?

No.5 9点 猫と鼠の殺人- ジョン・ディクスン・カー 2015/05/21 13:18
この作品はカーが好きかどうかで評価がはっきり分かれるでしょうね。物語の出だしから犯人は判事以外にあり得ないわけで、別人なら作品として成り立たないでしょうね。一旦、別の容疑者に振って、やっぱり戻ってくるあたりは予想どおりなのですが、最後に予想外の事態が発生! 普通、自殺していただきますよね。(ま、平凡ですが)自殺により結末をつけることさえ許されず。。。これは犯人が人を裁く司法の頂点であるゆえに、最高の結末ですよね。カーの超法規決着が極まりました。トリックはまあ、ゾンビはいただけませんが、犯人が何もせず、被害者がわざわざ不可能状況を作るというのは好きなネタです。

No.4 6点 連続殺人事件- ジョン・ディクスン・カー 2015/05/20 18:19
全体的には物足らない気がしますが、カーの好きな人は、らしい作品なので+1点という感じです。他殺に見せかけた自殺というテーマであれば、方法や結果が混乱した感じですが、続く2つの自殺(にみえる)事件で、原題どおり連続自殺事件が説得力のあるドラマになっています。結末もカーらしい超法規が出てきて、うまくまとまってました。

No.3 6点 震えない男- ジョン・ディクスン・カー 2015/04/06 14:11
本作の評価は2段返しの2段目の結論の評価によると思うのですが、十分本格として手がかりが示されており、私は好きです。(この採点ではネタバレありですが、さすがにこの結末は自重しておきます)なんか、シンプルな見取り図がついてるなとは思いましたが、重要な手掛かりでした。
大仕掛けの機械的トリックについてですが、トリックそのものよりフェル博士によって放火されて隠滅してしまうというのが、また私好みです。最近の小説やドラマは遵法精神が旺盛すぎて、このような暴挙は認められないとか言われそうですが。
難点を言えば、ポケミスは読みにくい! 2段で活字が小さくぼやけていて、苦戦しました。他の大御所に比べてカーの未文庫作品は多すぎるようです。本作も新訳、文庫版でもう一度読んでみたい。

No.2 6点 テニスコートの謎- ジョン・ディクスン・カー 2015/03/15 18:16
不可思議な状況のトリックとしては、まあイマイチかなという感想があるのですが、なぜそのような状況に至ってしかるべきかという構成は、細かく構築されていて本格推理として、素晴らしい。(とでも言わなければ、殺されるものがわざわざ自分の首にロープをまかない)フェル博士にあれだけヒントを頂いても、私には犯人の見当はついても詳細は?でちょっと情けなかった。それにしても、70年前の作品で自動テニス練習ロボットとは、なんか怪奇屋敷並みに怖いぞ。

No.1 8点 緑のカプセルの謎- ジョン・ディクスン・カー 2015/02/12 18:47
 ちょっと出だしがクリスティーっぽいですが、手がかりがよく示されている、出来の良い本格でした。
 75年ぐらい前の作品ですが、犯行の様子がフィルムで撮影され、しかもその中に偽装が含まれるという内容は、さすがカーです。見たものは録画されたものでも信用できないとは。
 

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了然和尚さん
ひとこと
本格ミステリーを中心に研究しています。
古典のビッグ4である クリスティ、クイーン、かー、クロフツを再読を含めて全部読破が目標です。

「気ちがいじゃが仕方がない。」
好きな作家
採点傾向
平均点: 5.53点   採点数: 116件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(30)
カーター・ディクスン(15)
松本清張(13)
ジョン・ディクスン・カー(10)
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