海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

斎藤警部さん
平均点: 6.70点 書評数: 1307件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.14 6点 シタフォードの秘密- アガサ・クリスティー 2016/01/05 11:21
探偵役は二組三人(ポアロ等有名人は不在)。登場人物表に書ききれない程のキャラクター群が雪深い静寂の郷に賑わいの空気を震わす。寒空の冬を舞台とした古典ミステリは素敵にcozyな味わい。真相糾明に驚きも無し。それでいい。呆気ない尻すぼみは飽くまで謎解きの領域だけ。
しかし、真犯人当てられなかった。。登場人物表瞬殺でまず間違いないと思ったんだがなぁ。。まさかの動機まで一瞬で思い当たったのに。。’意外な結末’にも騙された感まるで無し。それでいい(w)。 '負け手’を数えた馬鹿話のくだり、これはただの小休止だろうか? まさかね。。と思えば直後、二手の探偵役が合流、かと思いきややはり三人二組のまま、一人がサイドを乗り換えただけ.. これはいったい結末の何に繋がる動きなの? と気を引くプロットのギミックも効いた。
真犯人弾劾とはまた別の、意外な結末もある。真犯人ならぬ真探偵が最後は物語の襞に埋れた形になるを潔しとするも粋だ。予想外の二人による最後の会話がキラキラ素敵で、雪焼けしそうだったぜ。。

裕次郎のデビュー年、昭和三十一年初版の創元社世界推理小説全集(箱カバー)で読みました。巻末解説、中島河太郎先生の”そして誰もいなくなった”に託す推理小説の未来への期待が眩しかった。まるでロックンロールの未来をスプリングスティーンに見たジョン・ランドーの時めきの様な、されど胸中に鎮めた深い興奮が垣間見えて、泣けました。

No.13 5点 三幕の殺人- アガサ・クリスティー 2015/12/07 13:48
ジュブナイル版以外で初めて読んだ「大人の推理小説」は、クリスティファンの母親から譲り受けた古~い創元推理文庫(白帯)の本作でした。何しろ小学生が無理して読んだものでなかなかに理解しきれず、高校か大学の頃再読して内容はひとまず理解、しかし、詰まらなくは無くも、特筆したくなる面白味は感じませんでしたなあ。とは言えクリスティらしい企画性豊かな長篇ですよね、なかなかにあざといけど(HORNETさん仰る通り「ABC」と通ずる着想が匂ってます)。俯瞰を気取るのもいいけど俯瞰方向を間違えると何も見えませんよ、的なね。やっぱり明るい雰囲気が良いですね。点数は辛目だけど、自分にとって節目というか思い出の一冊です。

ネタバレを言えば、この犯人って無差別テロリストみたいなもんじゃないですか。部分的にではあるけれど。ひどいなあ。

No.12 5点 七つの時計- アガサ・クリスティー 2015/10/14 12:33
眞犯人を記録的秒殺で当てた事以外、何も憶えてません。透けて見える様な叙述トリックでした。
読んでる間は割と面白かった筈です、青春サスペンスってな風情だけど、若くして殺されちゃっちゃあ人生もあったもんじゃないね。まぁ最後の反転はなかなかの物だけどね。何故かびっくりしないの。わざわざ人に薦めはしませんよ。題名で鮎哲の「五つの時計」を思い出す分0.14プラスしますが、四捨五入で6点まで行きませんね。

No.11 5点 ABC殺人事件- アガサ・クリスティー 2015/09/30 00:53
ちょっとした叙述や構成のミスディレクションもあって興味深そうなんだけど、決して詰まらないわけじゃないんだけど、犯人も意外な陰から出て来るんだけど、ん~~なかなかに緩い結末だねえ、ABC順に殺人を重ねるなんていかにもアガさんらしい企画性の高いネタを提示して来る割にどうもガツンと来る豪快さを感じない。いとも簡単に舞台の裏側は見えちゃうし、かと言って諸々の弱点を補うほどの中盤のサスペンスやら何やらは求め得なかった。なのにどこか憎めない。「まぁ面白かった」くらいは言える。

と言ったわけで個人的にさほどの高評価も出来ませんが、これからの世代のミステリ好きにも読んで欲しい一冊ではあります。やはり憎めない作品って事です。

↑ まさかこんなに長く語るとは思わなかった

No.10 8点 そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー 2015/09/30 00:36
世に屹立する、特別な推理小説。

犯人設定にあと一歩、動機の意外性にあと二歩、更なる強烈なダメ押しがあったなら、個人的にも10点は間違いなかった。 結末の意外性がちょっと薄かっただけで2点も損した。それだけ中盤の分厚さに圧倒されたってわけだ。

とにかく、激しく面白い必読の名作に変わり無し。アガサクの異色作にして代表作。外界から隔離状態での不思議と抒情あるサスペンスは唯一無二の窒息感覚。

そうそう、このお話は終わり方がとても印象的です。 ”フランス白粉”とは違うけど、犯人の名前で最後を締めるしね。  

No.9 5点 ポワロの事件簿2 - アガサ・クリスティー 2015/09/26 01:30
戦勝舞踏会事件/料理女を探せ/マーキット・ベイジングの謎/呪われた相続/潜水艦の設計図/ヴェールをかけた貴婦人/プリマス急行/消えた鉱山/チョコレートの箱/コーンウォールの謎/クラブのキング
(創元推理文庫)

小粒なクセに切れ味の甘い退屈めの作が並び、その緩い雰囲気が絶妙に憎めない短篇集。
全体的に締まらない小説群の中で目を引くのが、所謂「十戒」の中でも比較的目立たない某条項を逆手に取って随分大胆に料理して見せた一作。このカウンターパンチぶりは何とも印象的。

No.8 7点 アクロイド殺し- アガサ・クリスティー 2015/08/10 18:35
ご他聞に漏れず、先に犯人と言うか仕掛けを知ってから読みましたが、物語が終盤に及ぶに連れ、仕掛けを知っているからこそのスリルがじりじりと突き上げて来、ポアロが眞犯人を追及する件(くだり)では本当に手に汗握るどころが汗かき過ぎで滑っちゃって握れもしない程でした。 逆に、もし仕掛けを知らずに読んだら(個人的にですが「幻の女」の場合のように)あのポワロによる眞犯人追い詰めのシーンの途中で「まさか!」と勘付いて急性のスリルに一気に襲われたのだと思います。 結末以外の部分がどうにも凡庸に感じられただけに、仕掛けを知ってしまってから読んで意外と正解だったかという気もしますなあ。


ところで、初読時全く気付かなかったのが、クリスティ再読さんご指摘の「死亡推定時刻」の件です。

(ここからはっきりネタバレ)

眞犯人が死亡推定時刻を決める医師であり、尚且つ物語の語り手でもあるという事は、当時まったく見過ごしていましたが、実は私が常々求めて止まない「悪魔的アリバイトリック」にかなり際どい所まで迫った怖るべき作品だったのではないか、と思われてなりません。 こりゃ再読しろという神のお告げでしょうか。

No.7 3点 愛国殺人- アガサ・クリスティー 2015/06/24 06:02
数年前のこと、評判がいいので勇んで読んでみましたが、う~~ん、いったい何処が合わないんだろう、不思議だ! トリックもミスディレクシションも何だかなあ、悔しい事にさっぱり面白くなかった! 時を置いて再読したい。

No.6 7点 青列車の秘密- アガサ・クリスティー 2015/06/16 04:50
かなり若い時節、「オリエント」に続けて手にした記憶が。 大仕掛けでちょっと大味なかの作と違い、じっくり味わって読めました。
あらためてストーリーを思えば随分と陰惨な物語ですが、どういうわけか妙にcozyな味わいのある作品だと思います。
これは私にとって相性の良いクリスティ。 列車内という揺れ動く密室感がまた良いのかも知れません。

No.5 6点 雲をつかむ死- アガサ・クリスティー 2015/06/16 04:42
謎解き物語として深くはないし、サスペンスも緩いですけど、全体的に憎めない作品です。
クリスティと自分との相性を考えると、ミステリーの骨組とはまた別の所にあるちょっとした何かで好き嫌いが大きく分かれてしまうなあ、といつも思うのですが、これはまあ相性がいい。 航空機内という浮遊する密室感がまた良いのかも知れません。
邦題は「大空の死」が好きだ。

No.4 6点 邪悪の家- アガサ・クリスティー 2015/06/01 13:53
いかにもアガサ女史の企画意図が透ける様で犯人は見え見えですが、、楽しく読みました。 やっぱり雰囲気が良いのです。 何なんでしょうねこの、事件が連発してるのに明るく爽やかなムードという不思議な空気感は! 邦題は「エンド・ハウスの怪事件」が好き。

No.3 7点 オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー 2015/05/26 12:13
幸いにもネタバレ無しで、同じ中学の友達から借りて読んだものです。

(ここから微妙にネタバレ的)
ところが創元推理文庫さんの冒頭惹句の無神経な(?)言葉選びでピンと来てしまったのですね、もしやこれは。。と。 本当にそうなんだろうか。。と緊張感たっぷりに楽しく読めました。となると様々な伏線がいちいちいかにも怪しく見えて、面白かったなあ。でも開けっぴろげ過ぎる手掛かりと言いきめの粗い話の展開と言い、そんな大傑作とまでは思いません。 もう少し真犯人ミスディレクションや、それと直結する詰まったストーリーテリングに心を砕いたらもっと驚愕の、そして深みのある感動の結末になるだろうに、物語の終着駅までまっすぐ飛ばし過ぎなのでは。。 

でも、やっぱり代表作には違い無いですよね。んで子どもにミステリーを勧めるならとりあえずこれとかアレとかは後回しにするのが大人の責任でしょう。 あとこの大ネタは長編小説や映画の中だからこそ活きるんであって、安易に推理クイズに流用するのは大罪の上にアホの骨頂だと思いますよ。 それにしても、何か語らずには通り過ぎられない問題作。 流石、企画の女王アガサです。

No.2 3点 ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー 2015/05/21 10:59
それなりに期待して読み始めたんだけど、最後までずっとピリッとせず、あまり面白くなかった記憶しか無いなあ。

No.1 8点 スタイルズ荘の怪事件- アガサ・クリスティー 2015/05/20 16:34
日本の某古典名作を先に読んでいましたが .. それのヒントもあって真犯人は途中でピンと来ました。 それでも充分にエキサイティングで面白かったなあ。。 女史はデビューから既に「企画の女王」だったんだなと納得しましたよ。
もし彼女に文才が無かったとしても、きっと周りの作家に「これこれこういうアイディアがあるから、あんたふくらまして書いてみなさいよ。」ってやってたんじゃないかしら。 或いはクイーンみたいに誰かと組んで二人一役。

キーワードから探す
斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.70点   採点数: 1307件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(57)
松本清張(53)
鮎川哲也(50)
佐野洋(39)
島田荘司(36)
西村京太郎(35)
アガサ・クリスティー(34)
島田一男(27)
エラリイ・クイーン(26)
F・W・クロフツ(24)