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ミステリーオタクさん
平均点: 7.06点 書評数: 143件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.9 7点 アルテーミスの采配- 真梨幸子 2022/12/17 18:20
 AV業界の生々しい実態を舞台にした、作者らしいサスペンスフルなイヤミス。

 作者の多くの作品と同様に、グイグイ話を広げていき、ボカスカ登場人物を乱立させるが最後は見事に収束させる。

 しかし本作の主人公は一体誰だったのだろう?

No.8 7点 初恋さがし- 真梨幸子 2022/09/24 22:31
 今年に入って文庫化された作者お得意の連作短編集。

《エンゼル様》
 相変わらずのリーダビリティの高さで始まるが、オチは大体見えてしまう。お下劣描写も健在・・・などと思いながら読み進めたが、最終章のある一文が琴線に突き刺さって涙が出そうになった。そりゃないよ、マリ先生。

《トムクラブ》
 メインの捻りは斬新とは言えないが軽妙で悪くはない。でもストーカー絡みの話はイマイチピンと来ずスッキリしない。最後もさほど驚くべき展開とも思えない。

《サークルクラッシャー》
 これはアクの強さはあまりないが、サスペンスミステリとして普通に面白い。初めは全く解らなかった2つの物語のつながりが段々見えてくる展開も作者らしくて小気味いい。エンディングも意表を突く形でまあまあ。

《エンサイクロペディア》
 これも面白い読み物だが、いかにも「続く」という形で終る。

《ラスボス》
 このふざけた話のような中の緻密さとバカっぽくも感じられる心理描写こそはマリちゃんの真骨頂の一角だろう。これも露骨に「続く」で終る。

《初恋さがし》
 これは表題作に相応しく、いかにも作者らしいショートミステリ。単品でも問題なし。

《センセイ》
 本短編集のマトメになるが、いつもの連作短編集同様目まぐるしいアンサーディスプレイ、そしてラスボスの正体。
 

各種書評サイトでは「今までに比べてパワーが落ちている」などというニュアンスの感想が多かったような気がするが、確かに「エログロ」や「生臭さ」のグレードは昔の作品に比べると高くないかもしれないが、作者の長年の創作活動に裏打ちされた技巧性はかなり高い連作短編集だと個人的には感じた。というか、こうも「引っ掻き回して回収する」連作短編集を書くのはこの人ぐらいではないだろうか。

No.7 7点 ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで- 真梨幸子 2020/10/15 23:59
この春文庫化された、真梨先生の何冊目かの短編集。
大手百貨店の外商部が絡んだ奇妙な話が並ぶ連作作品集になっている。


《タニマチ》 全く前情報なしで入った本なので、どんなものかとチョットわくわくしながら読み進めたが・・・うん、途中少しダラついている感も否めなかったが、小気味いい「トリック」が効いている。

《トイチ》 これも凶悪犯罪が起こるわけではないが、それなりにミステリーしている。 
おひい様はだーれ?

《インゴ》 何という展開。

《イッピン》 ちょっとグロい描写もあったりして、大部いつもの真梨ミステリーになってきた感じ。

《ゾンビ》 なるほど、そう来たか。でも、なぜかさほど斬新さを感じないんだよな。

《ニンビー》 没落、意外な人間関係、凝った構成・・・前作と少しテイストが似たストーリーで、コレもよくできているとは思うが、やはり個人的には大きなサプライズはもたらされなかった。

《マネキン》 面白くてバカバカしくて、かつ本書の真髄も垣間見られるが、まとめずに最終話へと続く。

《コドク》 いくら何でもソリャネ・・・いや、マリワールドならアリか。そして、ある意味マリらしくまとめたね。


大体「薄→濃」の順に並んでいると言っていいだろうか。でもって「グロさ」や「不快感」といった調味料をドバっとかけることなくストーリーの素材と捻りで勝負している。
今まで読んだ作者の短編集の中では最も高い完成度を感じた。

No.6 7点 お引っ越し- 真梨幸子 2020/06/17 17:45
作者の得意分野の一つ、「怖い系」の短編集。


[扉] 並みの(よりちょっと捻りの効いた)ホラーサス。

[棚] なかなかトリッキーなホラータッチミステリー。

[机] こういうのはあまり好きじゃない・・・が、さすがマリ先生、テクニシャン、凡作は書かない。

[箱] 凡作。
   陰湿なババアどもがいいねえ。

[壁] 怖いね。

[紐] 最終話らしいと言えば、らしいが、もう一押し欲しかったかな。


全編通してとにかく読みやすい。スナック菓子をポリポリつまんでる感じ(たっぷりマリ味つき!)で読め、気がついたら読了している。
ホラーダメじゃない人には一読オススメ。

No.5 7点 あの女- 真梨幸子 2020/04/15 17:23
エログロはさほど強くないが、現実と夢と妄想をモヤモヤグルグル行ったり来たりする展開は真梨ワールドの真骨頂の一つと言えるだろう。しかし主役級の一人のコメント「でも私はパス。ああいうの、・・・・・・・・頭がおかしくなりそう。現実と幻想がごっちゃになっていくあの感じ。薬漬けの人のたわ言を聞いているみたい。わけわかんない」には笑った。

ネットとかで本書の感想を見ると「辻褄が合ってない」とか「無理矢理」とか「尻切れ」とか酷評が多いけれど、そんなんどうでもいいんだよ、読みやすくて入れ込めれば。犯人が誰だろうと知ったこっちゃない。
まあ、全うな本格ファンは手を出さない方が無難でしょうね、マリちゃんには。

ところで主役の二人の女性作家は、もしかしてマリちゃん自身とカナエちゃんがモデルの思いっきり歪曲したデフォルメ?
カナエちゃんと珠美の人物像は全く違うけれど、二人の位置関係が何となくそう連想させるんだよね。

No.4 7点 カンタベリー・テイルズ- 真梨幸子 2020/03/18 23:50
「聖地巡礼」というタイトルで講談社ノベルスから刊行された作品を、改題して文庫化された短編集。

マリちゃんの短編集といえば連作がお約束で、本作も連作短編集といえなくもないが各々のストーリーの関連性は申し訳程度なのでバラで読んでも全く問題なし。
その各々のストーリーも決して悪くはないが、マリちゃんミステリとしてはさほど悪臭度が高くない。でも文章はとても読みやすいので余剰時間の消費には最適。
少しビクっとしたのは、ノベルスは2011年発行なのに最終話で「新型糖尿病」や「テセウスの船」というワードがキーになるところ。

No.3 7点 人生相談。- 真梨幸子 2020/02/17 22:43
連作短編集の体をとっているが実質長編。

理屈ぬきで読みやすくて面白い。

ただ全9話のうち7話目ぐらいまでのリーダビリティは絶大だが、終盤はそれまでに出てきた人物や後出し人物やエピソードが時系列のボードにおいてモグラ叩きのように出てくる。作者としては多くの事象の混乱の糸をほぐしている「解答編」のつもりなのだろうが、こちらとしては記憶を掘り起こす作業を強いられるため結構エネルギーを要することになる。
読後も「ん?、これで全部解決したんだっけ?」とイマイチすっきり感に欠ける。
でも相変わらず多かれ少なかれどこかバカっぽい登場人物たちの言動は笑えるところが多いし、俗物心をくすぐりながら進むストーリーはマリちゃんならでは。

No.2 7点 鸚鵡楼の惨劇- 真梨幸子 2019/08/30 12:46
さすがマリちゃん、読ませてくれる。
ただミステリーとしての完成度は初期の作品に比べて高くなっていると思うが、個人的には「フジコ」や「孤虫症」のような比類なき生臭さと絶大なリーダビリティをもう少し期待したかった。

No.1 7点 イヤミス短篇集- 真梨幸子 2019/08/06 21:58
この作者でこのタイトル・・・当然期待値が跳ね上がり、小汚ない雑多料理屋の裏の特大生ゴミポリバケツの蓋を開けた時のような生臭さが味わえるかと思ったが、せいぜい腐りかけた青カビチーズ程度だった。
マリちゃんにはもうデビュー作やドロドロ三部作の頃のパワーはないのだろうか。

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γーが3桁に突入してから週3日禁酒すると強く心に決めているが、なぜか週2日あるいは1日になってしまうことが多い。(仕事上週1で「泊まり」があるため0にはならない、ていうか休肝目的で泊まりを始めました。貴...
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