皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ミステリーオタクさん |
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平均点: 6.97点 | 書評数: 155件 |
No.3 | 6点 | ミハスの落日- 貫井徳郎 | 2021/01/27 22:39 |
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海外の、名前は誰でも知っている5つの地(表題作もメインステージは下記のとおり)で繰り広げられる5つのヒューマンミステリー。
すべてのストーリーにとびきりの美女が絡んでくる。 《ミハスの落日》 真相は特段驚きが大きいものではないし、トリックに至っては残飯もの。 まあ、バルセロナが主舞台のセンチメンタルストーリー・ミステリー風ということで楽しく読めた。 《ストックホルムの埋み火》 前半はいかにもミステリチックな展開でそれなりの捻りもあるが、結局心情描写が強い作品になっている。 《サンフランシスコの深い闇》 これ、保険会社と警察のスタッフは間違いなく記憶にあるが、ストーリーは全く思い出せず。 登場人物たちのキャラクターがやたら濃い割にミステリーとしては薄味のため忘れてしまったのか、別の話だったのか判然とせず・・・と思っていたら、解説に「別の中編集のある作品の続編」であることが書かれていて、ようやく思い出した。 《ジャカルタの黎明》 ミステリーとしてはこれが一番面白かった。 しかし動機は苦しい。 ところでこの国って人の頭を撫でるのはNGじゃなかったっけ? 《カイロの残照》 これはキツい。 あまり貫井らしさが出ている作品集とは言い難いが、押し並べて読みやすいので異国情緒が気分転換にはなる。ただし、いい転換になるかは保証できない。 |
No.2 | 8点 | 光と影の誘惑- 貫井徳郎 | 2020/05/04 19:19 |
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作者の『崩れる』に続く第2非長編作品集。
・長く孤独な誘拐 序盤を読みながら「普通ゼッテー警察に連絡するだろう」とソリャネー感満載になるが、もし当事者になったら常識的な思考などブっ飛んでしまうのかもしれない。 デビュー間もない頃の作品だと思うが読後感も『慟哭』に酷似・・・辛すぎる。 ・二十四羽の目撃者 なかなか魅力的な設定だがトリックは割りと、いやガチガチの正統派。だが実際にやったら成功率は極めて低いと思う。 事件の終わらせ方は(批判派も多そうだが)個人的には好き。 ・光と影の誘惑 最初の一行、いや一句で「これは性別誤認トリックに違いない」と確信したが、もちろん全くの的はずれ。 タイトルからはオシャレなミステリも期待したが貫井さんにそんなものを求めるバカさ加減を痛感させられる。 メイントリック自体は、後半に入ってから作者がバラまくクルー(及び作者がヌックであるということ)によって大体分かったが、なんか矛盾してるところがなくない?(読み返すのはメンドい) ・我が母の教えたまいし歌 「陰鬱で読み止まらないストーリー」の中に仕掛けられたチェスタトン張りの企み・・・正にヌックの真骨頂。 四編とも貫井色がよく出ているハイレベルな中編集だと思う。 つーか、本音は「ヌックも飽きずによーやるよ」 |
No.1 | 8点 | 女が死んでいる- 貫井徳郎 | 2020/04/01 19:10 |
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かなり前に『崩れる』を読んで「もうヌックの短編を読むのはやめよう」と思っていたが、ふとしたキッカケで本書を読むことになり、「食わず嫌いしなくてよかった」と感じさせてくれた一冊。
『女が死んでいる』 無理があるが設定が香ばしいし、とにかくグイグイ読ませてくれる。 身に摘まされる話でもある・・・「酒」の方だよ。(暴力沙汰は起こさないけどね) 『殺意のかたち』 いかにもヌッキーなツイストが小気味よく効いている。 『二重露出』 これもちょっとムリがあり、また既視感もあるが30ページ強に纏められていて貫井ミステリのエッセンスの一面をサラっと味わえる。 『憎悪』 貫井作品の特徴の一つに「主要人物のそれまでの人生を叙情的に生々しく描き出す」というのがあるが、本編ではそれが少々食傷気味・・・と思っていたら・・ 『殺人は難しい』 これはチョットねぇ~、まぁお遊びということで。 タイトルはクリスティ作品の捩りだろうね。 『病んだ水』 トリックだけ切り取って言及すれば「え~~~」って感じだが、一応それを納得させるところまで掘り下げて書かれているのは流石。身代金の安さの理由にも舌を巻いた。(だが当たった刑事が鋭敏だったら、「それでも」違和感を抱くのではないだろうか) 『母性という名の狂気』 今度はその手か。その手はあまり好きではないが、それ以外のヒネリもあるから許せる。 平成9年の作品だが、前半の描写はいやが応でも野田の事件を彷彿させる。 『レッツゴー』 貫井のライトタッチも好きではないし、終盤まで「これはホントにミステリーになるのか」という気分で読まされるが、そこはヌック、しっかり騙してくれる。しかし平成15年頃の女子高生ってこんな感じだったっけ? それに最後のページは今では絶対書けないよね。 先述したとおり、少しムリ目な話が多い(いつものことか)が、全編貫井らしい企みが仕掛けられているハズレのない好短編集。 |