皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 541件 |
No.13 | 4点 | 乱鴉の島- 有栖川有栖 | 2023/03/28 18:48 |
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まず、相応の紙幅を割いているにもかかわらず、その造形がまるで描けていない登場人物が多く、そうした人物が犯人と指摘されても、何らの感慨も呼び起こされない。
次に、登場人物たちが本島に集まっている理由は、端的に言ってリアリティに欠けるが、それをカバーするような雰囲気づくり、舞台装置の準備が不十分であり、まして、それが犯行動機とは無関係という点に至っては脱力モノと言わざるを得ない。 最後に、犯行プロセスは一貫して偶然の産物であり、真相解明プロセスにも見るべき点が乏しい。 プロット・叙述の双方において、著者の作品としては最低クラスの出来栄えであり、4点の最下層と評価 |
No.12 | 3点 | 幽霊刑事- 有栖川有栖 | 2021/11/29 20:23 |
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見るべきところがなく、これほど特殊な設定を導入している点を勘案すれば、さらに厳しい評価にならざるを得ない |
No.11 | 6点 | スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 | 2020/01/21 17:38 |
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足跡のトリックは、フィージビリティにこそ難があるものの、シンプルで鮮やかな斬れ味を評価。
折れた煙突の謎は、あまりにもシンプルで身も蓋もない真相だが、だからこそリアリティは強い。 真犯人は、本作のプロット・人物造形から、まるで意外性がなく、サプライズの点で強く物足りなさが残る。 以上、作者らしさが発揮された硬質な作風で、突出した美点はないものの、水準以上に達していると評価 |
No.10 | 5点 | 鍵の掛かった男- 有栖川有栖 | 2016/09/26 19:48 |
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Yoshiさんのご意見にほぼ同感。
長く地道な捜査が、新たな事実の発見それ自体を目的としており、最終盤までは直接的に謎の解決に向かわないプロットなので、盛り上がりや緊張感に欠けるのは確か。 それを考えると、ここまでの尺が必要であったか、やはり疑問が残るし、それでいて括目するほどの真相でもない。 読者を結末まで引っ張っていく求心力や、展開の手堅さには見どころがあり、作品全体として決してつまらない訳ではないのだが、これ以上の評価は難しい |
No.9 | 3点 | まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 | 2016/07/11 20:32 |
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当代を代表する一流の作家を揃えながら、あまりにも冴えない作品ばかりの本シリーズ。
本作に関しては、みなさんがすでに指摘されているとおり、サスペンスタッチは買うものの、明かされた真相と解決があまりにもひどく、この評価 |
No.8 | 6点 | 江神二郎の洞察- 有栖川有栖 | 2015/07/02 18:40 |
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“日常の謎”を取りあげたコンパクトな作品でありながら、強固な先入観を打破し鮮やかな真相に導いた「ハードロック・ラバーズ・オンリー」のカタルシスが断然。
「除夜を歩く」は作品部分よりも評論部分の方がはるかに秀逸で、トリックに関する悪魔の証明問題が非常に含蓄に富んでいる。 ただ、この2作を除けばミステリとしてはやや小粒と言わざるを得ず、この評価 |
No.7 | 7点 | 女王国の城- 有栖川有栖 | 2015/05/21 19:05 |
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前作からの15年間の歳月の中で、ストーリーテリングの腕前は格段に上がっており、エンタテイメントとしてはシリーズ最高のデキだろう。
クローズド・サークルが形成された(警察への通報を頑なに拒んだ)理由、江神が訪れた理由、犯行動機の合理性のいずれも、非常に堅固で完成度は高い。 しかし、いかんせんボリュームに比してミステリの核が小さすぎる。 凶器に着目したシンプルで鮮やかなロジックは面目躍如たるところだが、逆に言えばそれだけの作品。 第一の犯行で残された痕跡から、作品の急所が見えやすくなっているのも残念なところ。 前段の加点要素でかろうじて7点には届いたが、ミステリとしてのスケール感において、「双頭の悪魔」「孤島パズル」に遠く及んでおらず、本シリーズに求める高いハードルを華麗に超えたとは言い難い |
No.6 | 6点 | マレー鉄道の謎- 有栖川有栖 | 2014/08/29 16:43 |
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核となる謎の不可解さは相応のものだが、フィージビリティには疑問も残り、目を見張るほどの解決ではない。
犯行はかなり場当たり的で、しかも相当な強行軍。 犯人は意外性に乏しいうえ、致命的なミステイクを犯し、必要のない殺人に及ぶなど軽率な行動が散見。 ある登場人物の愛称を使った伏線は上手さを感じたが、未回収の伏線や挿話も多くアラが目立つ印象。 作品全体の骨格はまぎれもなく本格なのだが、短編向きのコアを長編に仕上げたのが敗因だと思う |
No.5 | 9点 | スイス時計の謎- 有栖川有栖 | 2014/04/07 17:29 |
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表題作以外の3作は見るべきものがない「凡作」。
表題作はロジックの比類なき切れ味と、無駄を削ぎ落としたストイックなプロット・構成が光る傑作。 中途半端なボリュームだけに、長編にも短編にもカテゴライズされず、随分と損をしているだろうが、長編に水増ししてもクオリティが低下するだけだろうから、やむを得まい。 それでも短編のオールタイムベストの常連にランクインしている事実は伊達ではない |
No.4 | 6点 | マジックミラー- 有栖川有栖 | 2012/02/19 17:07 |
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第一のトリックは実行困難と思われる点もあるが、チケットに秘められた巧妙な仕掛けがさすが。
第二のトリックはH氏の人気作の先例とも言うべき非常に独創的なもので鮮やかな出来映え。 いま一つ盛り上がりに欠けるストーリーテリング、最終盤の真相解明にあたっての探偵の動きなど不満な点もあるが、単なるアリバイ崩しに終わらない本格魂は感じた |
No.3 | 8点 | 双頭の悪魔- 有栖川有栖 | 2012/01/12 20:13 |
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毎度のことながらトリックの意外性・衝撃度はない。
しかしフェアに散りばめられた多数の小さな伏線から組み上げられたロジックの精巧さ、緻密さには美しささえ覚える。 両岸で同時発生する事件を並行して叙述するスタイルと、試行錯誤を重ねながら展開される推理でストーリーに引き込んでいく。 瑕疵を指摘するとしたら、第三の殺人で犯人が犯した致命的なミステイクと強引過ぎる江神の推理だが、裏を返せばそれだけか。 本格ミステリの王道を行く傑作と評価 |
No.2 | 7点 | 孤島パズル- 有栖川有栖 | 2011/12/24 11:19 |
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散りばめられた伏線をロジカルに回収する本格ミステリの醍醐味が味わえる良作。
意外性・衝撃度に欠けるが読後の納得感は高い |
No.1 | 4点 | 月光ゲーム- 有栖川有栖 | 2011/12/21 20:06 |
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構造的には堅固なパズラーで著者の想いは伝わってくる。
しかし登場人物が多すぎるうえにキャラクターの書き分けが不徹底でストーリーに入り込めない。 火山爆発・連続殺人勃発の極限的シチュエーションなのに緊迫感が皆無でリアリティに欠ける。 犯人の動機が弱すぎて共感性が得られない。 ロジックの精緻さ以前に瑕疵が大きすぎた |