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take5さん
平均点: 6.61点 書評数: 391件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.271 6点 さよなら妖精- 米澤穂信 2024/01/27 10:19
青春小説であり
戦争小説である
このギャップが
本の力です。
ユーゴスラビア紛争下で
飛び交う砲弾と
弓道の高校生大会で
放たれる矢との
切ない対比です。

No.270 7点 雪は汚れていた- ジョルジュ・シムノン 2024/01/22 20:21
連合軍占領下のフランスで、
淫売屋を営む娼婦崩れの母を持つ
若者の無軌道な行動を描く。
彼は結局占領軍の調査部局に捕まる。
ある種強靭な彼は尋問を耐えてゆく。
占領軍は愛国主義者などの政治性を
犯行動機と疑ったが、
そこは本質ではない。
一旦は裏切った若い娘の感情を知る
クライマックス、
彼は従容として死に赴く。

戦争とは
様々な顔をしているものですね。

No.269 8点 凍てつく太陽- 葉真中顕 2024/01/14 18:24
blueでもそうでした。
作者が表現する
歴史に翻弄されながらも
生きていく登場人物が魅力的です。
太平洋戦争の時代、
室蘭での軍部と警察、
アイヌと内地と朝鮮から連れてこられた人々
混在する混沌が見事に書かれていて、
500ページ以上一気に読ませます。
5時間以上がかかりましたが満足!
凍てつく太陽
タイトルもいいし、
表紙の鳥たちも効いています。

No.268 7点 十戒- 夕木春央 2024/01/13 16:53
300ページに全く足らないから
あっという間に読めるタイパ作品。
3時間に全く至らないで読了。

もしも、、、
この作品が「方舟」の前に書かれていたら
「方舟」がシンプル過ぎると言われてしまう
そんな感じがします。
やはり前作の衝撃は
後の作品評価に影響しますね。

この作品では「そして誰もいなくなった」への
オマージュや
プロットの精巧さが感じられて好ましいのですが
爆弾という設定が
精巧さと合っていないかなあとも思います。
すみません私見です。

唯一衝撃的と言えるのが
ある登場人物の台詞
好きになって、期待して、がっかりした人
というくだり、
やはりこの作品は
「方舟」の後に書かれるべき作品という事です。
怖すぎる、、、

No.267 7点 死者が飲む水- 島田荘司 2024/01/08 21:09
この作品で江戸川乱歩賞三度目のノミネート
しかし無冠の帝王、受賞ならず、、、

南雲堂文庫353ページにある
「適度の怠惰と、そして保身のための計算とで、
日常の正義は、そして平和は、守られている。」
牛越刑事のこの台詞は、
自嘲や犯人へのリスペクトを感じるもので
わざと言わせる島荘らしさ。
私にはここがクライマックスです。

時刻表トリックの第二弾の方は、
、、、ちょっとやり過ぎでした。
しかし事件の背景は
島荘らしい社会派で
私には好ましかったです。

飢餓海峡じゃないですが
青函連絡船の転覆事件が
伏線となっているのも感慨深いです。

No.266 6点 マチルダは小さな大天才- ロアルド・ダール 2024/01/01 05:51
ロアルド・ダールは
大人も子どもも楽しめる作家ですね。
ある道徳性について論考された本の
参考文献として用いられていた児童文学ですが
大人への皮肉が身にしみる名作です。
マチルダの担任と校長の伏線回収だけ
ちょっとしたミステリー。


新年一人目の書評でした。
昨年だけでこのサイト
3000件も紹介されていました。
2024年 謹賀新年
今年も皆さんの紹介から
良書に出会える事を願います。

No.265 9点 同志少女よ、敵を撃て- 逢坂冬馬 2023/12/30 17:55
初めて満票を得たという
アガサ・クリスティ賞受賞作
独ソ戦を描いた戦争小説であり
広義のミステリーであり、
女性視点の社会派小説であり、、、
とにかく読み応え満載でした。
戦争の大義、
それでも生きる意味とは、
弾道学からロシアの生活まで
作者の綿密な取材力が光る大作。
作者はこれがデビュー作?本当に?
あり得ない筆力です。
読書中盤から私の頭の中に
ノーベル賞受賞作家の
「戦争は女の顔をしていない」
が浮かぶのですが、最後に、、、
いやもう冬休みに大作に出会えて良かった。

あとお二人で書評10人達成、
「飢餓海峡」で潰されてしまった
高評価に新しい血を送り込み計画
8か9か迷って9点にしました。
どなたか乗りませんか。

No.264 9点 この夏の星を見る- 辻村深月 2023/12/03 15:34
小説として10点
ミステリーとして4点
その他の要素の最頻値として9点

Surges がBGMで流れてくる。
『コロナ禍』などと
私のような大人が一括りにしたら
決して見えない世界がある十代の一年間。
辻村深月さんが好きです。
これまでの作品で
一番ミステリーから遠く
一番琴線に触れました。

No.263 7点 恩讐の鎮魂曲- 中山七里 2023/11/19 11:56
御子柴シリーズ第三弾
よかった点
緊急避難をめぐる伏線回収(因果応報)が
よく描かれています。
また、特養老人ホームをめぐる
今日的課題もよく描かれています。
難点
登場人物の背景をめぐる伏線回収が
too match過ぎて
カタルシスを通り越しています。
でもお休みの午前中に
二時間ちょっとで一気読みできた
リーダビリティは高く、
よい時間を過ごせました。

No.262 5点 復讐の協奏曲- 中山七里 2023/11/18 17:06
御子柴シリーズ
キャラ設定が特殊な事に加えて
被害者関係者と加害者がシンクロするという
かなり作り物の世界を読みます。
まあ小説ですから作り物の世界でも
よいのです。
最後の法廷のくだり、
ページの制約か?と思うほど
あっけなく終わりました。
情報屋の能力高っとか、
突っ込みどころ満載ですが
リーダビリティも高っです。

No.261 7点 翼がなくても- 中山七里 2023/11/12 14:21
こちらのサイトで皆様から
中山七里を教えていただき
御子柴という極めてキャラの立つ
主人公に親しみ始めた訳ですが、

その御子柴をサブにした番外編。
私、陸上に親しむ陸上小説好きで
そのような作品をいくつか
読みましたが、青春物でもなく
しかし狂気をはらむスポーツの世界は
一定のレベルで描かれております。

ご都合主義の極致という点も幾つかあります。
殺害後の処理とか、
何と言ってもデヴィッドガーターの下りとか。
でも繰り返しになりますが
全力で走る実感がシンクロする
私には、
200mの表現だけでよい小説でした。

No.260 8点 はるか、ブレーメン- 重松清 2023/11/04 14:56
人生の最後に見ると言われる走馬灯。
その走馬灯を改変する仕事があるという。
たどり着きたくてもたどり着けない
そんな存在をブレーメンの町になぞらえて
物語は進みます。
人間の記憶こそ最大のミステリー。
いつもは解き明かしたいと思う真実、
その真実という概念にも新たな光を当てる
名作でした。

No.259 7点 成瀬は天下を取りにいく- 宮島未奈 2023/10/22 21:55
これで感想文書くのもすごいが、
小学生の知人に薦められて読み終わり、
ふとこのサイトの検索に
『成瀬』と入れてみたら登録済み!?
いやこれミステリーなら何でもあり
と思いますが、
素敵な作品なのでまあいいや。
最終章の成瀬の人間っぷりが爽やかで
全ての小中高校生に推します。
自分を貫く事が苦しい昨今、
これはファンタジーかもしれないけれど、
君の何かを肯定してくれるはず。

そして世の中の私のような父は
成瀬の魅力に鑑みて
子にスマホを買わない接し方を
ありとバイアス気味に肯定されるのでした。

No.258 7点 宵待草夜情- 連城三紀彦 2023/10/16 13:03
1983年版の、
作者自身の後書きがとてもいいです。
作品5つの中で、
個人的には四番目『花虐の賦』が一番。
かぎゃくのふ、で合ってますか?
賦って税金とかだとしたら暗喩が
効いていますね。
勘違いだとしたら恥ずかしいですが。

No.257 7点 禁断- 今野敏 2023/10/14 18:46
すらすら読めます。
典型的なやくざが出てきたり、
警察の様子は警察小説の典型で、
横浜を舞台にテレビのドラマのよう。
ただ、
中国の要人とあれほど簡単に合流して
心通わせていくのはいくらなんでも
都合がよすぎるかと。
前半の不穏な空気感はよかったのに。

No.256 4点 『アリス・ミラー城』殺人事件- 北山猛邦 2023/10/01 14:41
すみません。
叙述トリックを楽しみたくて
借りたのですが
途中で寝ていました。
体調のせいでしょう。
こんな理由で評価されるなんて
ファンの方に失礼ですが、
物語や人物そのものの魅力が、、、
否体調のせいでしょう。

No.255 7点 闇に香る嘘- 下村敦史 2023/09/23 17:47
江戸川乱歩賞受賞
一人称の文体が効果的な作品。

学習の一環として点字を打った事があり、
トリックは想像がついたのですが、
確かめるまではしないまま読み進めました。
主人公が兄の存在に不信感を抱いて、
母がそれを知った際の反応の叙述、
そこで真実が朧気ながら見えます。
苦難の歴史の中で母は慈愛を育てる、
1つ前に読んだ作品の母子愛とは
異なる深さですね。

中国残留孤児問題に触れる
社会的事象を学ぶ意味でも
意味のある読書でした。
1つ前に読んだ作品の三割り増しで
時間がかかりました。よい意味で。

No.254 6点 聖母- 秋吉理香子 2023/09/23 14:19
叙述トリックもの260ページ
食後にサクッと90分読了、
あっという間に読めます。

毒を含むタイトル通り、
内容はどくどくしいです。
猟奇殺人、不妊治療、母子愛。

うまいのになぜか刺さらず、
うまいですよ。
でも隠れ蓑になる元祖猟奇者との接点が、
ご都合的で、そこだけが残念。

結論。
最後は好みですねそればっかりは
しょうがない。

No.253 7点 追憶の夜想曲- 中山七里 2023/09/19 19:57
みりんさん、
飢餓海峡ありがとうございました。
当方は逆に中山七里で
書評続けさせて頂きました。
飢餓海峡、
なぜか三日天下で残念でしたが、
社会派の名作なので
何方かまた読んで頂けたら幸いです。


さて、本題ですが、
読後感がひどく悪い!
そんな名作。
300ページしかないのに、
あれほど人の悪意を
入れ込みますかね。
そしてこれでもかと伏線の回収を
ぶっこみますかね。
軽妙なやり取りが素敵な
よくできた法廷ミステリーでいいのに。
御子柴の生い立ち回収まで、
一気に読ませてしまう筆力。
一章の頭が前作のおさらいということを
引き算すると、
ますますコスパのよすぎるページ数。
内容が息子とシェアできない
(したくない)のだけ残念。
こんなに波乱万丈なら、
御子柴の三作目はどうなってしまうのでしょう?

No.252 7点 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 2023/09/18 10:54
好きなタイプのミステリーでした。
法廷での大逆転。
キャラの立った主人公の生い立ちと
メインストーリーのリンク。
人が更正できるのなら、
その要因は何なのか。
少年犯罪を扱う社会派でもあり、
今後もこのシリーズで
しばらく楽しめそうです。
300ページ未満のこなれた文章も
大変好ましいです。

※主人公が弁護士として
やっちゃいけない運搬をしてるのも、
かつての教官のいう、
死ぬまで贖罪の労を惜しむな
ということを体現していて良しと。

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take5さん
ひとこと
古今東西ミステリーは沢山ありますが、
すばらしい古典に出会った時、
人間が描かれている作品に出会った時に、
ああ読んでよかったと思います。
そういう作品に一つでも出会えればと、
このページを覗...
好きな作家
決められません
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