海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

HORNETさん
平均点: 6.30点 書評数: 1069件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.16 7点 雪に撃つ- 佐々木譲 2021/05/15 19:16
 翌日から雪まつりを控える札幌。盗犯係の佐伯と新宮のコンビは、自働車窃盗事件の捜査に。機動捜査隊の津久井卓は、住宅街で起こった発砲事件の現場へ。一方、生活安全課の小島百合は家出少女が札幌に向かっているという電話を受け、動く。

 それぞれの管轄で動いている案件が、やがてつながりを見せ、一つに収束していくというのは本シリーズでもはやパターン化しているといってもよいが、そこに強引さは感じられず(それらに佐伯、小島、津久井が上手いこと関わるという点はあるが…まぁシリーズものだしそれは物語として当然)、相変わらず巧みな展開。ただ、3本の線が入れ代わり立ち代わり描かれるので、混乱しやすいというのはある。
 本シリーズの複線として、佐伯と小島の関係の進展もあるのだが、ラストにはこちらにも展開があり…
 やや複雑な本作ではあったが、シリーズ愛好者としては満足。

No.15 8点 真夏の雷管- 佐々木譲 2020/06/13 23:03
生活安全課の小島百合は、閉店セールをしている老舗模型店で精密な工具を万引きした男子小学生・水野大樹を補導した。しかし署で事情を聴取している間に少年に逃げられてしまう。一方、刑事課の佐伯宏一は園芸店から窃盗の通報を受けて駆け付けると、爆薬の材料にもなる化学肥料が盗まれていた。全く別の場所で起きた二つの事件は、やがて交錯し思わぬ方向へ―
 道警シリーズ第8弾。
 プロローグの内容から、その後の万引き事案と園芸店の盗難事件がどのようにつながっていくのかはだいたい予想できる。大樹を連れ去った元JR北海道社員・梶本の来歴からも、動機などもほぼ見通せる。それでも、いつものメンバーたちが躍動し、事件を解き明かしていく様はやっぱり面白い。
 「警察小説って、やっぱいいなぁ」「本シリーズは相変わらず面白い」と実感できた。

No.14 6点 憂いなき街- 佐々木譲 2016/09/03 20:27
 道警シリーズ第7弾。
 津久井は、当番明けの夜に立ち寄ったバー「ブラック・バード」でジャズピアニストの安西奈津美と出会う。彼女は「サッポロ・シティ・ジャズ」のバンドメンバーに参加するため札幌に来ていたのだが、そんな2人は惹かれ合う仲に。
 しかしそんな中、女性死体が見つかる殺人事件が起き、奈津美に嫌疑がかかる。奈津美の無実を信じて捜査を進める津久井だったが…
 道警シリーズもシリーズとして進み、登場人物に愛着もあるので、私としては無条件に楽しめる。今回もまた「津久井チーム」と、別の事件を追う「佐伯チーム」との「2本線で話は進められる。ただ、今回は明らかに物語の主は「津久井チーム」であり、2本の線が交わる感じはなかった。
 作者の北海道やジャズへの愛着が強く感じられ、何となくそれも好ましく感じるため、読後感もとてもよかった。

No.13 6点 犬の掟- 佐々木譲 2016/09/03 19:52
 所轄の違う2つの路線で話が進められていくのは、「道警シリーズ」で氏がよく使う手で、今回もそのパターン。慣れない人には読みづらいかもしれない(私は慣れているので大丈夫だった)
 余計な虚飾のないストーリー展開はやはり読み易い。かといって味気ないわけではなく、人間要素も描かれているのが氏のうまさ。何を読んでも平均以下ということはなく、安心して手がつけられる。
 真相は意外性は確かにあるが、一方で「もしや…」という怪しさもあった。ある意味フェア。後味は人によって悪い人もいるかもしれない。
 最後に、タイトルの趣旨がよく分からなかった。

No.12 6点 人質- 佐々木譲 2015/05/10 21:58
 冤罪で4年間刑務所暮らしを強いられた男、中島喜美夫が、札幌にある洒落たワイン・バーに居合わせた客を人質にとって立てこもり、自分が冤罪を着せられた当時の刑事部長の謝罪を求める。偶然(だんだん行き過ぎの感もしてきたが…)そこに居合わせた小島百合巡査。純粋な冤罪被害者の要求からの事件と思われたが、どうやら裏があるような―。
 複数の事件を巧妙に一本につなぐことも多い本シリーズの中で、この作品は基本的に2本線で解りやすい。しかもこの仕掛けの発想は秀逸だと思った。
(ネタバレ)
 とはいえ、相手が絶対に公にできないネタでの脅迫なら、やはりわざわざ衆目を集める方法をとるよりも、徹頭徹尾陰でやったほうがよいのでは…。考えられる一番の理由は、人質となった家族にも本当のこと(つまり脅迫相手の汚い部分)が解らずに済むということだが…。いくら暗号的な文句でやりとりするとはいえ、HPのような公の場でやり取りするのもあまりに安易な気がするが…

No.11 7点 密売人- 佐々木譲 2015/05/10 21:21
 釧路、函館、小樽の三か所でほぼ同じ日に起きた三つの不審死事件。身元をたどっていくと、3人には「道警のエスだった」という共通点があることが見えてきた。偶然だとは思えない。誰が、何のために、なぜこの日に―?
 「エス」がらみの、警察の暗部を描くのは氏のお得意。佐伯・新宮、津久井らがそれぞれに捜査を進める中で見えない糸がだんだんと明らかになっていくパターンも。その過程が面白い。
 タイトルから、てっきり麻薬犯罪のような話かと思っていたが、読み終えて本当の意味が分かった。なるほど。
 唯一、篠原学園の話は必要だったのか?違う側面から本筋に絡んでくるのかと思ってたのに…。

No.10 7点 巡査の休日- 佐々木譲 2015/05/10 20:56
以前、ストーカーに襲われて危機一髪のところを、小島百合巡査に助けられた村瀬香里。その香里のもとに「見つけたよ、気をつけな」という脅迫めいたメールが届く。以前のストーカー、鎌田は療養中の病院を脱走していた。鎌田の復讐か…?警戒を強め、香里の護衛にあたる道警。
 以前は風俗店に勤めていた香里も、事件後は店を辞め、今は「よさこいソーラン」の舞踊チームに所属し、演舞の中心的存在として活躍中。時は奇しくもその「よさこいソーラン祭り」の時期。演舞を休むわけにはいかない、という香里を護衛するため、小島百合巡査も演舞に参加することに…!
 よさこいソーラン祭りの時期の道警の多忙・混乱ぶり、その中で奮闘する警官たちの様子がよくわかり興味深い。本シリーズは全てそうだが、事件発覚から解決までの数日を一日一日描写するテンポのよさ、スピード感が〇で、非常に読みやすい。
 事件の真相はかなり前の方でわかってくる。ミステリを多く読んでいる人なら大抵気付くだろう(伏線の示し方がわかりやすすぎる)。であるが、やはり面白い。
 このシリーズは突出して評価が高いものにはならないが、基本水準が高い。ハズレと感じたものはない。

No.9 8点 代官山コールドケース- 佐々木譲 2013/11/11 20:13
 17年前に起きた代官山アパート女性殺害事件。当時被害者の恋人であった男が水死体で発見され、被疑者死亡で解決されたことになっていた。しかし、時を経て起きた強姦殺人で、この代官山事件の被害者の部屋に残っていたDNAと同じDNAが検出された。17年前の捜査は誤りだったのか?解決したとして処理されているこの事件を公的に再捜査することはできず、極秘指令として捜査を命ぜられる水戸部。当時の関係者に聞き込みを進めていくうちに、被害者の新たな人間関係が見えてくる―。
 関係者を順に聞き込み、そこから探り出した人間関係をしらみつぶしにあたっていく。新たに明らかになる事実と、再検証する証拠を照らし合わせて組み立てられていく推理。主人公水戸部と組むことになった女性捜査官朝香、親友の科捜研中島らの有能ぶりにも快哉。派手さはないが、地に足の着いた推理が進んでいく様子は、十分に読みごたえがあり、非常に佐々木譲らしい作品である。

No.8 8点 警官の条件- 佐々木譲 2011/12/03 22:14
 前作「警官の血」の3代目、安城和也を主人公としたシリーズ2作目。前作で、上司・加賀谷の暗部を告発する役目を務め、辞職に追い込んだ和也が、捜査一課の係長に抜擢され、薬物ルートの摘発に取り組むことに。しかし、大きく様変わりしてきた麻薬ルートに対応できず、威信が失墜しつつあった警視庁がした決断は、加賀谷の復帰。加賀谷は一課としのぎを削る五課につくことになり、先を越されまいとやっきになる和也だったが・・・
 ミステリというよりは警察小説。謎解きが主体ではないので、そういう意味での評価は高くないかも。しかし、和也と加賀谷の交錯する思い、衝撃(でもないかな?)の結末と、読み応えは十分。読後の満足感はかなり高かった。

No.7 7点 暴雪圏- 佐々木譲 2011/01/30 14:02
 「制服捜査」の駐在警官,川久保を主人公にした長編。積雪の中から発見された女性の死体,ヤクザの留守宅に押し入った強盗,出会い系サイトとで知り合った男性との不倫関係を清算したい主婦,社長の金を盗もうとする中年男性,義父のいたずらに耐えかねて家出した少女・・・十年来の猛吹雪となった道東を舞台に,複数のストーリーが並行して進み,やがて一つの場所につながっていく。それぞれのストーリが間断なく展開していくため,読んでいてまったく退屈しない。川久保巡査の誠実で勇気ある人柄も前作と変わらず,好感がもてる。一晩読み続けてしまった。おりしも,外は雪で,読書の舞台効果も満点だった(笑)。

No.6 7点 警官の紋章- 佐々木譲 2011/01/16 09:04
 道警S第3弾。洞爺湖サミット前,郡司事件で自殺した警官の息子警官が失踪。大臣警護に就いた小池巡査,当時の密輸事件を探る佐伯,警官捜索に就いた津久井,三者それぞれの動きが最後に一つにながっていきます。スピード感もあり,構成のうまさもあり,一気に読み進めてしまう魅力がありました。
 佐々木譲は,「笑う警官」以降の道警Sが一番面白いと思います。

No.5 6点 廃墟に乞う- 佐々木譲 2011/01/09 19:53
 直木賞受賞作品。精神療養の為休職中の仙道孝司という警官を主役にした短編連作。川久保巡査を主人公にした「制服捜査」に似た構成で,ある意味著者らしい作品です。

No.4 7点 制服捜査- 佐々木譲 2011/01/09 18:41
 駐在警官川久保巡査部長の活躍を描いた短編集。中央の警視庁や警察庁を舞台に立ち回る派手さはなく,地道で地味な物語ですが,だからこその味がありました。ミステリとしても質の高いものではないかと思います。

No.3 8点 笑う警官- 佐々木譲 2011/01/09 18:33
 このあとシリーズとなった北海道警を舞台にした警察小説。スリルとスピード感が持続し(最後に近づくにつれむしろ増し),一気に読ませてくれます。佐々木譲を読んでみようと思わせてくれた一冊でした。

No.2 7点 警官の血- 佐々木譲 2011/01/09 18:30
 ミステリとしての謎は,意外性も謎も中程度。警官の生き様が描かれていることをむしろ主として考えたほうがよい。そういう意味で三世代にわたる警官一家の生き様が,三者三様で面白いと思いました。個人的には第一部が一番好きです。

No.1 8点 警察庁から来た男- 佐々木譲 2011/01/09 18:25
 道警シリーズ第2弾。前回「うたった警官」津久井が,キャリア監察官とともに,外国人売春やぼったくりバーの見逃し事件から道警と暴力団との癒着をあぶりだします。キャリアの男が好漢で,面白かったです。佐々木譲の作品では,このシリーズが一番好きです。

キーワードから探す
HORNETさん
ひとこと
好きな作家
有栖川有栖,中山七里,今野敏,エラリイ・クイーン
採点傾向
平均点: 6.30点   採点数: 1069件
採点の多い作家(TOP10)
今野敏(48)
有栖川有栖(44)
中山七里(40)
東野圭吾(34)
エラリイ・クイーン(34)
米澤穂信(20)
アンソロジー(出版社編)(19)
島田荘司(18)
佐々木譲(16)
柚月裕子(16)